第42話 聖女、恋人バレる!?――“神殿騒然!祝福と大混乱”
朝。
いつものようにこたつでお茶を飲んでいた真由とユウヒ。
外は雪。
中は天国。
「ねぇユウヒくん、今日の予定は?」
「午前は祈祷、午後は会議……あ、あと――」
「あと?」
「神殿長から“お話があります”との伝言が……」
「……え、それ完全にやばいやつじゃん。」
「僕も、そう思います。」
◇ ◇ ◇
神殿長――セレニア聖堂を統べる初老の神官、
温厚で知られているが、“信仰”に関しては絶対主義者。
真由とユウヒが謁見室に入ると、
部屋の空気がピンと張りつめていた。
「……聖女殿。」
「は、はいっ。」
「“こたつ教”の布教活動と“果実の奇跡”までは良かった。」
「はい。」
「だが――最近、“聖女が恋に落ちた”との噂が流れておる。」
「……」
「どういうことか、説明してもらえるかな?」
沈黙。
真由はちらりとユウヒを見る。
ユウヒは眉を下げ、でもその瞳は真っ直ぐだった。
「……事実です。」
謁見室の空気が、一瞬で凍りつく。
「なっ……!? おぬし、何を――!」
「真由さんを、心からお慕いしています。」
「ユウヒくん!?」
(ちょ、ここで正直に言っちゃう!?)
神殿長の眉が跳ね上がった。
「神に仕える身が、“恋”などと――!」
「――神は愛です。」
静かに、真由が口を開いた。
「愛も信仰も、あったかい気持ちから生まれるものでしょう?
だったら、恋だって立派な信仰の一部だと思います。」
神殿長が言葉を失う。
「私は、世界を救う聖女なんかじゃない。
でも――彼と一緒なら、誰かを癒せると思うんです。」
その声は穏やかで、けれど強かった。
沈黙ののち、神殿長はため息をついた。
「……まったく、君という人は……」
「す、すみません!」
「ふむ。では、こうしよう。」
神殿長は軽く頬をゆるめた。
「聖女と神官の恋など、確かに例はない。
だが、“信仰の形”がひとつとは限らぬ。」
「……!」
「公にすれば騒ぎになる。
だが、神はきっと微笑んでおられるだろう。
――つまり、条件付きで認めよう。」
◇ ◇ ◇
神殿の外。
ふたりは深々と頭を下げたあと、廊下に出た。
「……な、なんとか許されたね……」
「はい……でも、“条件付き”って気になりますね。」
「条件って?」
――その時。
廊下の奥から、信徒たちの声が響いた。
「見て! 聖女さまが恋をされたんだって!」
「尊い……っ! これぞ“神の愛”の具現化!」
「恋愛成就の加護が始まったって噂よ!」
……すでに神殿は祭りだった。
「条件:隠す努力をする」
「……うん、無理だったね。」
「はい……無理でしたね。」
◇ ◇ ◇
午後。
聖女堂の前には、
「聖女の恋を祝福する祈り会」なるものが自然発生していた。
花束、恋愛守り、こたつ型奉納品。
「えぇ……なにこれ……」
「“聖女恋愛祈願週間”だそうです。」
「早っ! 組織力すごっ!」
「さすが信徒たちですね。愛の伝播が早い……!」
ユウヒが小声で笑った。
真由も呆れ半分、でも嬉しそうに微笑む。
「……ねぇ、ユウヒくん。」
「はい。」
「私たちの恋、もう隠せないね。」
「もとより、隠すつもりなどありません。」
「……やっぱり、君は正直者だね。」
真由が笑って彼の肩に頭を寄せる。
その瞬間――聖堂の鐘が鳴った。
「――神は、愛に微笑む!」
信徒たちの歓声が、雪空に響いた。
◇ ◇ ◇
夜。
こたつの中。
「……今日、一日で世界の見方変わったなぁ。」
「はい。神殿全体が“恋人モード”でしたね。」
「でも、悪くないよ。」
「え?」
「君を好きになって、みんなが幸せになるなら、
それも、聖女の仕事って気がする。」
「……真由さん。」
「だからこれからも、いっぱい甘やかしてね?」
「……はい。神に誓って。」
こたつのぬくもりの中、
二人の指が絡み合う。
外の雪が静かに降り続く夜、
神殿には“愛の奇跡”が灯っていた。
次回予告
第43話 「聖女、恋の奇跡を起こす――“祈りよりもキスの方が効く!?”」
――お楽しみに!




