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第30話 聖女、ただいま“ベッド”へ(安らぎリスタート)

「……はぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~」


あまりに幸せそうなため息が、

聖堂の奥の部屋に響いた。


「帰ってきた、私のベッド……!」


真由はシーツに顔を埋め、

両手を広げてごろごろ転がる。


(神託の地でもっと立派な寝台あったけど、

 やっぱり自分の布団がいちばんだよね……!)


「おかえりなさいませ、真由さん。」


ドアの向こうから、ユウヒの声。

彼が入ってくると、両手に温かいハーブティーのカップを持っていた。


「はい。眠る前にこれをどうぞ。」

「ありがと~……でも、これって完全に寝かせる気満々じゃない?」

「もちろんです。あなたの“お休み”が世界の安らぎですから。」

「……なんか名言っぽいこと言ってるけど、要するに寝ろってことだよね?」

「はい。」


真由は枕に顔を押し付けて笑った。


◇ ◇ ◇


ユウヒがカップを手渡すと、

真由は一口飲んで、ほっと息を吐く。


「うん……やっぱり、君の淹れるお茶がいちばん落ち着く。」

「そう言ってもらえると光栄です。」

「……ねえ、私ほんとに戻ってきたんだね。」


ユウヒは一瞬だけ黙り、

それから、優しく微笑んだ。


「はい。何度も夢かと思いましたけど……

 あなたの寝息を聞いた時、やっと信じられました。」


「寝息で実感するなぁ。」

「真由さんの眠りは、僕にとって祝福の証ですから。」


「……またそんな甘いこと言って。」

「本当のことです。」


彼の言葉に、胸がじんわりと温かくなった。


◇ ◇ ◇


「ねえユウヒくん。」

「はい。」

「こうして帰ってきて、やっぱり思うの。

 私、世界のためじゃなくて、君の隣で笑いたいんだって。」


ユウヒの瞳が少しだけ潤む。

でもすぐに、いつもの柔らかい笑みを浮かべた。


「それなら、世界はもう十分救われていますね。」

「え?」

「あなたが笑っている。それが“安らぎ”そのものです。」


(ああもう、こういうこと言うのズルいんだよ……)


顔を枕に埋めたまま、真由は小さく呟いた。


「……ありがと。」

「こちらこそ、帰ってきてくださってありがとうございます。」


沈黙。

でも、静かな夜の中で、

その沈黙がいちばん心地よかった。


◇ ◇ ◇


やがて、ユウヒが立ち上がろうとしたとき――。


「ねえ。」

「はい?」

「今夜は、そばにいてもいい?」


一瞬、ユウヒの動きが止まった。


「……えっと、それは……」

「怖い夢見そうだから。……だめ?」


目を逸らしながら言う真由に、

ユウヒはふっと笑って頷いた。


「では、椅子で失礼します。」

「……ベッドの端なら空いてるよ?」

「っ!」


耳まで真っ赤になるユウヒ。

(からかうの、やめられないなぁ……)


結局、彼はいつものようにベッドの横に座り、

真由の手を握っていた。


「おやすみなさい、真由さん。」

「うん。おやすみ、ユウヒくん。」


そのまま、まぶたが落ちていく。


手のぬくもりが、

夢の中まで続いている気がした。


◇ ◇ ◇


その夜、神殿の外では静かに風が吹いた。

まるで、ふたりの安らぎを祝福するように。


次回予告


第31話 「聖女、街へおでかけ――“恋人ごっこ”はじめます」

――お楽しみに!

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