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第17話 聖女、神官の誕生日を祝う(枕の贈り物)

朝の聖堂。


いつもより早く目が覚めた。

珍しい。というか、奇跡。


「……ふぁぁ。まだ寝たいけど、今日はちょっと頑張る日。」


なぜなら――今日はユウヒの誕生日。


◇ ◇ ◇


きっかけは、数日前のことだった。

彼の同期神官たちが、私の前で何気なく言ったのだ。


「あいつ、誕生日でも仕事してるんだぜ」

「真面目すぎるにもほどがあるよな」


その一言で、私の中の“世話焼きモード”が起動した。


(……いつも癒してくれるから、たまには私が癒す番でしょ。)


◇ ◇ ◇


私は、薬草庫で材料を探した。

ラベンダー、カモミール、ミント。

どれもユウヒがよく使う香草。


それを小袋に詰め、綿を入れて――。


「ふふ……即席“ハーブ枕”の完成!」


自分で言うのもなんだけど、わりと上出来。

ぐうたらOLのくせに、こういう工作は妙に得意なのだ。


◇ ◇ ◇


夕方。


ユウヒが仕事を終えて戻ってきた。

いつもより疲れて見える。


「おかえり。」

「聖女さま……ただいま戻りました。」

「うん、お疲れさま。ちょっと座って。」

「はい?」


ソファに座らせて、私は彼の手に小包を渡した。


「……え?」

「誕生日、おめでとう。」

「……っ!」


ユウヒの目がまん丸になった。

頬がみるみる赤くなっていく。


「ぼ、僕の誕生日を……!? どうしてご存知で……」

「企業秘密。ていうか情報収集能力。」

「そんなスキルまで……!」

「異世界OLなめんな。」


思わず笑い合う。

その空気があたたかくて、心地いい。


◇ ◇ ◇


ユウヒがそっと包みを開けた。

ふんわりと香るハーブの匂い。


「これは……?」

「ハーブ枕。疲れが取れるって聞いたから。

 君、いつもがんばりすぎだからさ。」


ユウヒの唇が、小さく震えた。

「……嬉しいです。こんなに心のこもった贈り物、初めてです。」

「大げさだなぁ。」

「いえ、本当に。僕の人生で一番、温かい誕生日です。」


そう言って、彼は枕を胸に抱きしめた。


(ああ、ほんとに、子犬みたいだな……)


見てるだけで胸がきゅっとなる。


◇ ◇ ◇


「……聖女さま。」

「なに?」

「この枕、今日から使っても?」

「もちろん。むしろ使わなきゃ怒る。」

「では……試してみてもいいですか?」

「え、今!?」

「はい!」


そのままユウヒはベッドの端に腰を下ろし、

枕を抱えて横になった。


(ちょっ、えっ、まって、絵面が……なんか近くない!?)


「……どうです?」

「いや……どうっていうか、近いんだけど!?」

「寝心地は最高です。」

「それはよかったけど、距離がアウト!」


「……あの、聖女さま。」

「なに?」

「ありがとうございます。本当に、僕……幸せです。」


その声が、あまりにも穏やかで、

胸の奥がじんと温かくなった。


(あー、もう。なんでそんな顔するの。)


思わず、そっと彼の頭を撫でていた。


「……おめでとう、ユウヒくん。」

「……っ!」


彼は赤くなって、枕で顔を隠した。

「……これじゃ眠れません。」

「じゃあ寝かしつけてあげよっか。」

「そ、それは心臓が持ちませんっ!」


笑いながら、私はそっとカーテンを閉めた。

夜の光がふたりを包み、静かな空気だけが残る。


◇ ◇ ◇


その夜。


ユウヒは、枕を抱いたまま眠った。

そして夢の中で、彼は確かに見たのだという。


――自分の隣で、笑って眠る真由の姿を。


次回予告


第18話 「聖女、星空の屋上で“恋”を知る」

――お楽しみに!

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