表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/51

第12話 聖女、風邪をひく(おでこタッチ注意報)

朝。


目を覚ました瞬間、頭がずしんと重かった。

喉が痛い。鼻もつまってる。

(……あ、これ完全にやったやつ。)


「へくしっ!」


布団の中から小さくくしゃみ。

すると――


「聖女さま!?」

ドアが勢いよく開き、ユウヒが飛び込んできた。

寝癖も直ってないのに、顔はいつもより必死だ。


「ど、どうされました!?」

「風邪、っぽい。」

「ぽい!? 熱は!? 痛みは!?」

「だるい。あと寒い。あと寝たい。」

「それはいつもです!」


◇ ◇ ◇


「お体を拭かせていただきます!」

「いや、セルフでやる。」

「聖女さまは安静に!」

「私、風邪ひくたびにこんな大事になるの?」

「初風邪なので全力対応です!」


(……過保護すぎる。いや、ちょっと嬉しいけど。)


タオルを温め、お湯を運び、毛布を増やす。

ユウヒの動きに無駄がない。

でも、手つきがやけに優しくて、逆に心拍数が上がる。


「……そんなに心配しなくていいよ。すぐ治るから。」

「だめです。聖女さまの喉が枯れたら、世界の癒しが止まります。」

「喉ってそんな重要パーツだったの?」


◇ ◇ ◇


「体温を測りますね。」

「はいはい。」


彼が差し出したのは――体温計、ではなく手。


「……それ、どうやって使うの?」

「神官式の体温測定法です。」

「怪しい響きしかしないんだけど。」


彼は真剣な表情で言った。

「おでこ、失礼します。」


その瞬間。


額と額が、そっと触れた。


距離が、近い。

息が混ざる。

ユウヒの瞳が、思ったよりも深くて、真っ直ぐで。


「……熱いです。」

「……どっちが?」

「え?」

「私か、君か。」


ユウヒがびくっと顔を離した。

「ぼ、僕は平熱ですっ!」

「じゃあ私のせいかぁ……」


毛布に潜りながら、私は小さく笑った。

胸のあたりがぽかぽかして、風邪のせいじゃない気がした。


◇ ◇ ◇


数時間後。

寝たり起きたりを繰り返していると、枕元から小さな音がした。


「……聖女さま、寝ていますか?」

ユウヒの声。


薄目を開けると、彼がベッドの傍らに座り、

静かに祈りの言葉を口にしていた。


「この方の痛みが去り、安らかな眠りが訪れますように……」


手を組んで祈る姿が、あまりに真っすぐで、胸がぎゅっとした。

その手を、思わず掴んでしまう。


「……ユウヒくん。」

「っ!? 起きてらしたんですか!」

「今の……効いた気がする。」

「え?」

「心臓が、あったかくなった。」


一瞬、沈黙。

次の瞬間、ユウヒの頬が赤く染まった。


「そ、それは……熱が移ったのかもしれません!」

「ううん、これは別の熱。」

「……別の……?」

「たぶん、“恋”ってやつ。」


「っっ!?」


ユウヒが慌てて立ち上がる。

「ね、寝てくださいっ!」

「うん、寝る。夢の中でも君に看病されたいな。」

「それはもう熱の幻です!」


そう言いながらも、彼の手は最後まで私の手を離さなかった。


◇ ◇ ◇


夜。

熱は下がっていた。

けれど、胸の中の温かさは残っていた。


「……風邪、悪くなかったな。」

そう呟いて、私は再び目を閉じた。


――夢の中で、また額が触れた気がした。

今度は、ちゃんと“恋の熱”として。


次回予告


第13話 「聖女、お昼寝中に“添い寝事故”発生!?」

――お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ