1話 運命は猫じゃらしのようで
「俺は犬派だ」
と断言した王子様の名前は犬飼創。
高校二年生の健全男子。
心が清らかなイケメンプリンス。
身長は百七十三センチですらっとしたスタイルがそそる。
彼の通学路に萬福寺があって、境内を通ると近道になるみたい。
ここには猫が住み着いていて地域の人が面倒を見ている。
五月晴れの下、のびのび日向ぼっこしている姿は実に愛くるしい。
ついでに、ジャージ姿に無精髭のオジサンも住み着いている?
オジサンと言っても、歳はまだ二十八。
でも歳上だし、無精髭を生やしているから私たちはオジサンと呼んでいる。
初めは否定していたけれど、今は受け入れている。
それはさておいて。
私は失礼ながら、例え有名人と言えど、よく知らないオジサンは危ないと警戒して距離を置いている。
けれど、創様はとてもお優しいので帰り道に構ってあげている。
「ソウくん。そんなに猫が嫌い?」
「別に嫌いってわけじゃない。猫も可愛いよ」
「なら、ねこバスケしよう?」
「ったく。やらないって」
オジサンが猫をかぶってお願いしても、創様はきっぱり断って苦笑する。
彼は何度もオジサンから繰り返しスカウト、や、アプローチを受けている。
猫じゃらしを揺らすように。
実はこの怪しいオジサン、大学を卒業して間もなく、あの2020東京オリンピックで3x3ねこバスケの日本代表に選ばれたヒーローなのだ。
結果は銅でも凄いったら凄い!
ちょーかっこいい!
拍手、ぱちぱちぱんち。
「そもそもオジサン、ねこアレルギーだろ。だから引退したんじゃなかったっけ」
「それを言われると辛いよ。うちの猫はアレルギーが出にくい種類のはずなんだ。それがどうしてだろうね。もちろん、ねこは何も悪くないよ。きっと僕が弱いんだ。それでも、空気清浄機を置いてあるのに本当におかしいよ。どうしてかな。お医者さんもそれは分からないって言うし、ずっと考えているんだけど」
「ストップ。ごめん。本当に悪かった。元気だして」
実はオジサン、ねこアレルギーをわずらっている。
なので、いつも距離を空けて猫を観察している。
残念なことに東京オリンピックの後、突然に発症してしまったのだ。
「ともかく何で俺に、しつこく、ねこバスケやらせようとするの?」
「何度も言ったろう。いい選手になれると一目見て感じたからさ!」
「わあ……うさんくせ」
「僕は本物の元日本代表だよ!プロ!信じて!」
「はいはい」
オジサンが猫に構うように、創様はオジサンに構ってあげている。
付かず離れず、ちょうどいい距離間で。
まるで人と猫の関係みたい。
「春ちゃんもそう思うよね?」
ただいまオジサンから突然に話を振られた春ちゃんとは私のこと。
自己紹介が遅れました。
春麗嵐、眼鏡をかけた地味な現役女子高生。
かっこいい王子様だい好き。
少女漫画のような青春に憧れている、けれど何もなく終わりを迎えようとしている……とほほ。
それはさておき、私は本気で創様をお慕いしております。
しかし創様ファン(ライバル)が多くいて、私みたいなノミが不用意に近付くとキャンキャン吠えられてしまう。
そこで私は、遠くから見守るようがんばって努めているのだ。
今は、階段から頭を小さく出してイケメンとイケオジの絡みをそっと見守っています。
はあ尊い。満たされる。
「ストーカーねこ」
「にゃ!?」
王子様が小市民を振り返り、可愛い丸い目を頑張って細くして威嚇する。
あなたが犬で私が猫?
それって素敵じゃない?
「いいかも……!」
「よくねーよ。お前のやってること、それストーカー行為だからな」
「私はストーカーじゃないですー。帰り道がたまたま同じ方向なだけですー」
「ほんとかよ」
「ほんとだもん。創様、私の通学路ご存知ですよね?」
「なんとなく。て、創様はよせっての」
「私にとって創様は創様です」
「ったく、どいつもこいつも」
「二人は仲良しさんだね」
オジサンがニヤニヤしながら、うう、からかうもんだから、私、ん、すぐ顔が赤くなっちゃう。
それを見られたくないので日傘にすっぽり隠れた。
創様は怒っているかな?それとも……。
「そんなのじゃねーよ」
ですよね。
創様はいつもツンツンしていてズバッと正直。
そこがまた魅力なんだけれど、何度もツンツンされると、いくら相手が創様でもムカッとくることだってある。
「ううー……!」
「はは、ほら。春ちゃんが、うなって威嚇しているよ。あんまり意地悪言わないであげて」
「ねこ」
「ふしゃあー!」
「へっ、そんな怒るなよ。俺たちクラスが違うし、ほんとに友達でも何でもないだろ」
「クラスが違ったら、お友達になれないんですか!」
「いや……そんなことないけど」
「まあ、でも、創様とお友達なんて恐れ多いので、こほん、私は身を引いて、つつしんで遠慮させてもらいます」
私は、推しの幸せを陰ながら見守ることが、リスペクトであり最大の愛情だと考えている。
それに、ファンのみんなに嫌われてボッチ生活が始まってしまうのを避けたい。
や、しかし創様が「お前は俺が守る」なんて言って、かばってくれるイベントもきゃあー!
「なおさら怒るなよ」
「それとこれとは別なの!」
これが私達の日常。
決して仲が悪いわけではないです。
とっても平凡、それでも私にとってはハッピーな登校日。
でも、それが猫の気まぐれのように、もうすぐ変わろうとしている予感がする。
気が早いけれど、夏休みのことを考えているからかな。
金平糖バス停前高校。
どうしてこうなったのか。
誰が名付けたのかは知らないけれど、それが俺の通っている普通の高校。
パティシエみたいな制服がちょっと人気みたい。
この町へ移り住む時に、家から近い、それだけで選んだ。
ところで、不思議と俺はモテるらしい。
毎朝、下駄箱を開くとラブレターが最低一通は入っている。
キリがないから、悪いとは思うけれど待ち合わせの場所に向かったことはない。
今のところそれで嫌われたりしていないし、これで良いのかもしれない。
が、ひとり面倒な女がいる。
「おはようございます……!」
「聞こえねーよ」
ささやくような鳴き声が聞こえた。
こそこそ後ろをついてくるのはストーカーねこ。
去年、入学して以来、ずっと付きまとわれている。
迷惑と思ったことは無いけれど、やっぱりちょっと、うっとうしい。
「おはよう」
クラスのみんなは一応小さく返事をくれるが、友達はほぼいない。
俺が恐いのか、俺に好意を向けてくれる女が恐いのか、あんまり会話してくれない。
目を合わせてくれないのも日常。
体育のペアは先生が基本。
ちょっと寂しいけれど、仕方ないと半ば諦めている。
構ってくれる猫がいるし、それで十分だ。
「こほん。なあ創。きみ、上級生に目を付けられているみたいだぜ」
俺の前に座る、レトロが逆にオシャレな瓶底眼鏡の明治太郎丸くんが突然そう忠告してくれた。
そんなこと今までに無かったので驚く。
「なんで?俺なにかした?」
「隣のクラスに春という女生徒がいるだろう。きみの後ろによくいる彼女だ」
何であいつが出てくる?
兄か姉がいるのか?
どちらにせよ嫌な予感がする。
「彼女に好意を寄せる先輩がいて、それでどうも、きみのことが気に食わないらしいね」
「なんだよそれ。何十年前の不良だよ」
「きみ、よもや不良ではないよね?」
「はあ?」
「ごめん」
「別にキレてないよ。まさか、みんなそう思ってる?」
「うむ」
「ええー……」
「いや、それほど本気ではないけれど」
「マジかあ」
思わず頭を抱える。
「なんで?俺そんなに近寄りがたいオーラ出てる?」
「朝は特に。不機嫌に見えるね」
「俺、朝に弱いんだ」
「ああー。ははは。なるほど、きみそれでか」
「ほんと不良じゃないからな」
「わかったわかった。覚えておこう。とにかく気を付けなよ」
「いや、俺あいつとは別に」
ここでチャイムが鳴った。
最悪だ。
なんで俺が先輩に目を付けられなきゃならねーんだよ。
こえーよ。
マジで最悪だ。
俺は、ゆううつな気持ちを抱えたまま昼を迎えることになった。
食事もノドを通らないとはまさに今のこと。
こうなったら仕方ない。
「春……」
隣のクラスをのぞいた瞬間、黄色い悲鳴がワッと沸き上がった。
女達からきゃーきゃー言われ、男達からは、にらまれる。
少し怖気づく。
「あ、あのさ」
俺が口を開いた途端に静かになった。
気まずい。恥ずい。
あいつを呼べない。
そこにいるのに声を掛けられない。
いいなあ、あいつ友達と飯食うんだ。
「ねえ。春のこと呼びに来たんじゃない?」
「は!?創様が私をご指名!?いやいやいやないないない!」
聞こえているぞ。
その通りなんだよ。頼む気付いてくれ。
「ほら絶対にそうだって」
「よして冬ちゃん!私いじめられたくない!」
「誰もいじめたりしないってば。だって、あんた恐がられてんのよ。カッターをしのばせたヤバいストーカーだって」
各々うなずいている。
あいつクラスのみんなと仲良いんだ。
「みんな聞いて!私は、そんなヤバい人じゃないよ!ほんと!ほんとに!帰り道が一緒なだけなの……あ」
それを聞いて教室がにぎやかになった。
みんなして俺と春を交互に見て盛り上がっている。
慌てふためく春は見ていて面白いが、ここに突っ立っているのも限界だ。
そろそろ勇気を出して……。
「みんなごめんなさい何にもないんですほんと信じてください!私は推しの幸せを陰ながら見守ることがリスペクトで最大の愛情だと常々考えておりまするゆえ!どうかこの通りご勘弁を!!」
何やってんだよ!
土下座とか初めて見たぞ!
「おい、よせ」
「創様!」
「……土下座なんてするな」
「や、でも」
「とにかく話があるんだ。来い」
つい教室に入って、勢いに任せて春の手を引いてしまった。
みんなは意外にも静かに俺たちのことを見送ってくれた。
ま、いなくなってから騒がしくなるんだろうな。
俺は春の手を引いたまま中庭まで来た。
そこに数人いた生徒たちは俺たちに気付くとコソコソ去っていった。
ここで遅れて、手の温もりに気付く。
初めて女と手を繋いだことが急に恥ずかしくなって、俺は払うように離した。
春はその手を大事そうに撫でて体をモジモジゆらす。
考えていることがいつも丸わかり。
「まさか告白ですか?やあん……そんなあ……私、みんなのこと裏切られないよう……」
「少女漫画の世界から戻ってこい。俺の話を聞いてくれ」
「何でしょうか?」
「春のせいで大変なことになった」
「んー?私のせい?それってストーカーの件ですか?」
「多分それ。お前のことを好きな先輩に目を付けられた」
「わっ!定番のイベントきたっ!」
「ワクワクしてんじゃねーよ!お前ほんと少女漫画すきだな」
「えへへ。人生の教科書です!」
「へっ、少女漫画みたいな人生なんてねーよ」
「まあ意地悪。ありますー」
「そんなことより」
「そんなことよりって……。まさか創様ビビっていらっしゃいます?」
「…………」
「実は臆病……これぞギャップ萌え!」
「だから喜ぶなって。とにかく、頼む。お前から何とか言ってくれ」
「は?むり」
「ん?え?」
「だって私がボコボコにされるじゃないですか。創様ともあろう御方が、か弱いレディを身代わりにするおつもりですか?」
「ちがっ!そんなつもりはない!けど」
「おいカワイイ後輩。一丁前に昼間っからイチャついんてんじゃねーぞコラァ!」
あれー?こんなゴリゴリの不良うちの学校にいたっけ?
この時代にパンチパーマとか絶対やばい人じゃん。
背でかっ。こっわ。マジで終わったかも。
この人が噂の先輩で間違いないだろうな。
「ボスと二人の取り巻き……設定通りだ!」
「設定とか言うな。静かにして下がってろ」
「お前さ。春ちゃんの何?彼氏?」
「いえ。彼氏でも友達でもないです」
俺がハッキリそう言うと春は残念そうに、うつむいた。
前に友達じゃないって言ったことを思い出させて、また傷付けたのかも知れない。
「じゃ何でここでイチャついてんのかな?」
「それは、だから、その」
「うっし。勝負しようぜ」
「え?勝負?」
「そう。春ちゃんを賭けて勝負だ」
「ちょっと、勝手に私を賭けないでください」
不良相手に反論するなんて、こいつ意外と度胸あるんだ。
それに比べて俺は……。
「ごめん春ちゃん。でも、こいつが弱くてダサい男だってのを見届けてもらうよ」
取り巻きの二人がケラケラと笑う。
テレビで再放送されている昔のドラマのワンシーンを再現したみたいだ。
こんなことって本当にあるんだ。
明日から入院生活かあ。あー辛い。
父さん母さん、迷惑かける。
度胸のない男でごめん。
「ねこバスケで勝負だ」
「え?ねこ?」
あっという間に肩を組まれて強引に連行された。
抵抗することが全くできない。
柑橘系の香水の匂いがする。
力の差は圧倒的だとこの時にもう思い知らされた。
ズルズルと引きずられるように誰もいない体育館までやって来た。
舞台上に置かれたバスケットの中、学校で飼育している野良猫が柔らかなタオルケットに包まれている。
この学校には普通のバスケ部しかない。
どこにでもいる猫が果たして急にボールに変わるなんてそんな非現実的なことがあるのだろうか、という疑問は一瞬で吹っ飛んだ。
「俺とタイマンだ。俺がディフェンスをやる。お前は一発シュートを決めればいい。簡単だろ?」
「分かりました」
投げ渡された猫は三毛猫。
両手で抱くように大事に受け止めた。
想像以上に毛がふっくらふわふわしている。
勝負以前に、ねこをボールのように扱っていいのか心配だ。
テレビで見たことはあるが猫は動物だ。
物じゃない。動く生き物。
温かく、呼吸をする小さな振動が伝わる。
丸くなっているとは言え、床に叩きつけたり投げるなんて、とても正気とは思えない。
「三毛猫は、ねこバスケに協力してくれる猫よりも小さい。それにバスケットボールよりも小さくて軽い。つまりハンデだよ」
不良らしい。
取り巻きがまた馬鹿にして笑う。
春は黙って見守っている。
丸くなった三毛猫の、水晶のようなキレイな瞳と目が合った。
俺の不安や心配に応えるように猫が一度鳴いた。
やるしかない。
ぽふん……ぽふんぽふん……。
「お前さ、バスケは体育でしかやったことないだろ。ドリブルが不安定だぜ」
「そもそも俺は犬派なんです」
「へえ。何でもいい。さっさとかかってこいや」
春は祈るように目を閉じて手を合わせている。
ダサいところは見られたくない。
俺は運動神経がいい方だ。
うまくかわせば勝てるかも知れない。
「残念だったな、カワイイ後輩」
あっという間だった。
望み叶わず、完敗。
かわそうとしたところ、壁のように行手をはばまれ簡単にカットされた。
弾かれた猫は床を転がると体を伸ばして立ち上がり、ぶるぶると頭から尾へかけて軽く全身を振るわせた。
ふと、こちらを振り返った目が合う。
まぶたは半ば落ち、ヒゲは垂れ下がり、なんとなくだが期待はずれだと失望しているように見えた。
「春ちゃん。君が可哀想だよ。こいつは確かにイケメンだけど、勝負に負けるダサい男。つまり見掛け倒しってやつだった」
「創様は……!」
「何も言うな!負けは負けだ」
「ほーん。ちったあ男らしいとこあんじゃねえか。ま、とにかく負けたんだからあんま春ちゃんに近付くんじゃねえぞ。いいな。約束を破ったらタダじゃおかねえからな。約束したぞ」
不良達は嫌な嘲笑を心にも残して体育館を後にした。
猫も興味をなくしてバスケットへ戻って行く。
横目で春を見る。
そんな顔をしないでくれ。
そんな目で俺を見ないでくれ。
そうだ。俺は弱い。
春や、みんなの期待とは反対にカッコ悪い男なんだ。
「悪かった」
背を向けたまま謝る。
拳の痛みで俺は自分の怒りに気付いた。
余計に顔を見せられない。
「創様は何も悪くないです」
「お前まで笑われたみたいで俺、悔しい。本当にごめん」
「私は大丈夫ですよ!ほら元気いっぱい!」
春はいま精いっぱい笑顔なんだろうな。
どんな言葉を返そうかと迷っていたところチャイムに助けられた。
それから俺たちは黙って教室に戻って、帰り道も会話はなく、静かに萬福寺へ立ち寄った。
春、ついてきてくれているかな?
1の3
「創くん、どうしたの?珍しく元気ないね」
オジサンは今日もいた。
真っ赤に花を染めたツツジとはまったくの反対で、紺色のジャージで着飾ったダメオジサン。
失礼だけれど、本当に元日本代表なのかつい疑ってしまうことがある。
こんなにも弱々しく見えるのは、猫アレルギーがよほどショックだったのだろうか。
確かに、俺がもし犬アレルギーになって、一緒に暮らしているゴールデンレトリーバーに触れられないと考えると胸が苦しくなる。
「創くん?どうしたの?何かあったの?」
「あ、いや。実は……」
俺は簡単に事情を話した。
オジサンは黙って相槌を打ち最後まで話を聞いてくれた。
タイミングとしては今しかない。
「お願いします!俺にねこバスケを教えてください!」
「創様!?」
と驚きの声を上げたのはオジサンだ。
春はいるのかどうか、まだ分からない。
「創様!土下座なんてよして!」
この声は春だ。
よかった、ついてきてくれていた。
「春、土下座ってのは謝る時にやるものじゃない。本気で頼み事をする時にやるものだ」
「そうなんですか?」
「いやいや春ちゃん。土下座ってのはそもそもしなくていいものだよ」
「オジサン!私からもお願いします!」
「春!?お前はやらなくていいんだよ!スカートが汚れるだろ!」
「私だって悔しいんです。だから、あなたにリベンジしてもらわなくちゃイヤです!」
突然、オジサンが一筋の涙を流した。
土下座する高校生二人と泣くオジサン。
見られている相手が猫でよかった。
「二人とも立って。そんなお願いの仕方なら僕は断るよ」
「え!なんでだよ」
「だって僕は、君のことをずっと誘ってきたじゃないか。ねこバスケしよう、て。君がやる気になったのなら、そりゃあ喜んで教えるさ」
「オジサン……ありがとう」
「あいてっ」
「何やってんだよ、春」
「えへへ。転んじゃいました」
「創くん。手を貸してあげなさい」
「は!?やだ!」
「そんな……今日のお昼は手を握ってくれたのに」
「あら~」
「二人そろって喜んでんじゃねーよ。ったく。ほら、大事な制服を汚すな」
「ん……。ありがとうございますぅ」
「いやあ青春ていいなあ」
「それよりオジサン、さっそくコーチしてくれ」
「ここでは難しいね。僕の家に行こう」
「それはちょっと……」
「あー……はは。そうだね、ごめん。君は真面目でいい子だ。今日は帰って、親に許可をもらってから明日あらためておいで」
ということで創様がねこバスケを教わることになりました。
ようやく夢に見た王子様との青春の幕開けに私、春麗嵐。
胸の高鳴りが止みません。