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興味が湧いた

 彼女の右目は、神々しく輝く。


 だが、その眼はまるで獣の目。


 少なくとも、人間の眼とはかけ離れたモノ。


 そんな瞳は吸い込まれそうなほど美しくて、ノアの紺青の髪も相まって真夜中に輝く満月のようにも見える。


 そんなことを考えながら、ユリアスは見入るように彼女の右目を眺めていた。


「? ユリアス、どうした…」


 ノアのお腹から、絞り出すような虫の声が聞こえた。


 その音で正気に戻ったユリアスは、少しだけ頬を桃色に染める。


 そんな顔を隠すように、ノアに背を向け目の前にあったゴブリンの頭へと駆け寄った。


「は、速くゴブリンの耳を回収してノアも帰ろう。もう遅いし、お腹空いてるんでしょ?」


 ユリアスは手慣れたようにゴブリンの右耳を切り取り、他の死体からも回収していく。


 幸い、ユリアスのゴブリン討伐の依頼はまだ3日の猶予があるので、急いで達成しなくてもいいのだ。


 取り敢えずここは魔物の買い取り部分を回収し、宿か家で夜を越してから来るのがいい。


 それは誰でもする判断だろう。


 夜中になると、昼間と比べ魔物は活発になり危ないのだ。


(……もう少し、この子と話してみたい)


色恋の話で気になるというわけではなくて……ただ、このノアという不思議な少女に興味が湧いたのだ。


 この少女にはわからないことが沢山ある。


 こんなに心惹かれるのは、ユリアスにとっては初めての経験だった。


 ただユリアスは色恋でトラウマを持っており、そんなこととは関係の無い生活を送っていたのだ。


 ユリアスはゴブリンの右耳を回収し終わり、ゴブリンの体を切り開き始めた。


 魔物から取れる魔力が宿った石、魔石を取り出すためだ。


「ユリアスまだー?」


 お腹を両手で押さえながら、ノアが早く行こうよと急かしてくる。


(そういえばノアはなんでスライムを倒せなかったんだろ?)


 スライムの核は丸い球状で、突き刺さないと壊せない。なのにノアは、突くのではなく()()()としていたのだ。


 あの時は剣筋が視えないことに注意がいって気にしていかなったのだが、今更考えてみればおかしな話だ。


 スライムの核は斬っても壊れずに刃が通り抜けてしまう。


 彼女の攻撃は確実にスライムを斬っている。


 しかし、スライムは突かないと核を破壊することができない。


 学者の中でも研究がされているらしいが、最弱魔物ということもあり優先度が低い。


 なので、スライムはわからないことが多いのだ。


(常識で子供でも知ってることだし、知らないとは考えづらいけど……)


 自分の中でぐるぐると考えたが、ユリアスは結論が出ず後で訊いてみることにしたのだった。


 ユリアスはゴブリンのものを入れたものとは別の袋を取り出し、スライムが消えた場所に落ちている魔石を拾い上げその袋へと入れた。


 そしてその袋をノアへと差し出す。


「はい、ノアの分。ゴブリンの耳4個」


「え? いらないよ」


「は?」


 ノアの信じられない言葉に、ユリアスは思わず気の抜けた声が出てしまった。


「だって依頼で倒した魔物じゃないし、何に使うの? そうだ、欲しいならユリアスにあげよっか!」


 名案とばかりに顔を輝かせるノアに、ユリアスは呆然としてしまう。


「いや何に使うのって…お金になるんだよ? そんな簡単にあげる人なんていないと思うけど」


「ある程度はフェルに貰ったし、お金には困ってないんだよね」


「フェル?」


 ユリアスの言葉に頷くと、ノアは先程の笑みは消え真剣な顔つきとなる。


「わたしの育ての親で、少し前にいなくなったの。どこにいるのか…知らない?」


「……ごめん、知らない」


「そっか、ならいいよ。あとこのゴブリンの耳、いらないからあげる。お腹空いたし早く帰ろう」


 ユリアスが暗い表情で返事をすると、ノアはさっきまでのような明るい雰囲気に戻った。


 最終的にゴブリンの耳を受け取ってくれず、彼女は鼻歌混じりで帰路に着いていた。


(さすがにこのまま貰うことはできないし、どうしようか。換金してから渡せば受け取ってくれるかな。というか、今日は本当に疲れた)


 いつも通りに依頼を受けて魔物を探していた。


 そしたらスライムと戦うノアに会った。


 しかもノアは美少女だし一緒にいるだけで緊張しちゃうのに…いきなりゴブリン4体を同時に瞬殺した。


(今日だけで色々あったな……)


 そんなことを考えながら、ユリアスはノアに駆け寄る。


「食べるなら妖精の泉亭がオススメだよ。あそこの女将さんがつくる料理は絶品なんだ」


「ならユリアスも一緒に行こうよ! 美味しいんでしょ?」


 ノアのキラキラと輝く笑顔を前に、「今日は疲れたからいけない」なんて言えるはずもなくユリアスは頷く。


「ね? 早く行こう」


 先を行く彼女はこちらに振り返る。


 その際、彼女の髪と門の光が重なりキラキラと輝いて見えた。


 しかし、更に輝く彼女の笑顔を見て、疲れたユリアスは思ったのだった。


(まぁいっか)と。

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