1話 ある朝
「…痛っつ………」
うっすらと目を開け、痛みに顔をしかめながら、布団を除けベッドから身体を起こす。
そして首を撫でてボソッと呟く
「あぁ……寝違えた………」
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顔を洗い、服を着替え、歯を磨く
靴を履き、刀を持つ、外に出てストレッチをし、地面にゴールラインを引いて
深く息を吸う。
「今日は…5キロぐらい行くか」
呟き、走り出す、日々の日課のランニングだ。
初めは身体を慣らすのも兼ねてゆっくりと速度をあげる。少しずつ速度が上がるにつれ足の回る速度と呼吸のペースも上がっていく
整備された道から一気に森のダートコースへと突入する。木や石などの障害物が転がっている足場の悪い山道を速度を落とさずに次々と飛び越え走り抜け3m程の段差をそのまま飛び越え着地
同時に転がり受け身を取る。立ち上がり再び走り出す
ぐんぐんと速度を上げ森から草原へと抜ける
少しずつ大きくなる胸の痛みと息苦しさを無視して草原駆け抜ける
その目に見えるものはただひとつ、ゴールのみ。そしてゴールと決めたラインを最高速度のまま
通過し、盛大に倒れる
「あぁ……しんどぉ…」
そう言いつつ立ち上がろうとすると、ぬっと顔を覗きこまれる
少しの沈黙の後、顔を覗き込んで来た男に対し暁雄介は口を開いた。
「ジークさん、のいてくれない?立てないんだわ」
「おっと、悪りぃ悪りぃ、お疲れさん」
そう言い顔を退けると同時にタオルと水を渡してきた男、自らの師であるジーク・ヴァリアントだ
渡された水とタオルを受け取りながら立ち上がる
汗をふきつつ水を飲んでいると師の身体が目に入る
その引き締まった身体からは並々ならぬ鍛錬が、腕や首には幾多もの傷があり、本人曰く腕6本の化け物や獄炎を吐き散らす龍との戦闘でできた物だと言っていたが……正直信じてはいない
確かに頼りになる師ではあるが胡散臭い事もよく言うし、自分の事を世界を何度も救ってきた面々の1人だと言っている辺り…ただの痛いおっさんである
とそんな事を考えていると
「なになに、俺の事じっと見て…もしかして惚れちゃったか?」
からかってくる師に対し雄介は速攻で言い返す
「惚れねぇよ、男に惚れる趣味はねえ」
「我慢しなくてもいいんだぞ☆ほらお兄さんの懐に飛び込んでおいで!」
「……ちょっと黙れ」
手にもっていた刀の鞘でダル絡みしてくる師のたくましい身体…ではなくすねをしばく
同時に目の前の自信満々な顔が一気に青ざめていき、すねを押さえ無言で悶える
そして涙目でこっちを見て
「痛ってぇ!おまっ、痛てぇんだよ!真剣だったらえらい事になってたぞ!ていうか何ですね狙うんだよ!やるなら身体にしなさいよ!」
そう言ってすねを押さえ半泣きで言い返してくる情け無い師を尻目にその場を立ち去ろうとすると
後ろから声をかけられる
「おい雄介、飯食ったらいつもの場所に来いよ」
その言葉を聞いて足を止め振り返る
「急だね、手合わせすんの?ジークさん」
「久々にな、お前の日々の努力の確認だと思ってくれたらいい」
「了解」
そう一言返し、雄介はその場を後にするのだった
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読んで頂いてありがとうございます✨
こんな感じの物語を、ゆっくり描いていくつもりです
色々おかしな点もあると思いますが、そこは大目に見てもらえるとありがたいです(−_−;)