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エリオットに恋をしてepisode1  作者: クロコリコ
9/22

真夏の海のビキニパンツ


たった一泊の合宿だが、両部活動の親睦は深まり、大いに青春を満喫し、充実した時間を過ごしていた。


帰りの時間になり、最下位チームの荷物ピストン輸送が始まる。


さすがに全員の荷物は日が暮れるということで、個人的な荷物はそれぞれお願いすることになり、


ヒデの提案で調理器具やステージ機材、テントなど全員で使ったものを、重たいものは男子がリヤカーで引っ張って持ち上げるということになった。


ヨシキ「見上げると、まじで吐きそうになる坂っすね」


荷物の積み上げですでに汗だくのヨシキ。


ヒデ「ちょっと待て……リヤカーを借りたのはいいが……この急斜面をブレーキもついてないリアカーで上がっていくなんて、まったく休まずに一気に駆け上がらないと危ないんじゃないか……?」


ヨシキ「時間かかっても、それぞれ手で持って行きます?」


ヒデ「……俺が引っ張るから、みんなで後ろから押してくれ。」


ヨシキ「部長大丈夫っすか?」


ヒデ「よし、一気に駆け上がって一気に終わらすぞ!」


早く終わらせようとしたのがまずかった。


思いの外、リヤカーは重く、足場が砂で滑る。


さらに斜面を登りかかった瞬間、ズッシリと重くノロノロとなんとか登れる程度。


このまま行っていたら体力が持たない。


引き返そうかと言いかけたその瞬間、ヒデの目に赤いモノが飛び込んできた。


なんだ、あれは……?


赤色の……


ビキニのパンツ……?!


えっ……昨日赤色のビキニを着てたのは……


えっえっ?!あの子か!!!落としちゃったの?

なんなの?拾ってあげないと……!


今朝も着てたよね、ないと困っちゃうよな〜……そうだよ、拾って本人に確認しないと!!


ズルッ!!


ヒデがパンツに気を取られた瞬間、足を砂に取られ、バランスを崩しリヤカーは坂の1番下までずり落ちてしまった。


ヨシキ「部長!!すいません!!大丈夫っスか!!」


ヨシキ達はずり落ちるリヤカーを必死で止めようとしていたが、一度落ちる方向に傾いてしまったリヤカーは、男子4人の力でも止めることができなかった。


ヒデは先頭で引っ張っていたため、そのまま一緒にひきずられ、全身傷だらけだった。


ヒデ「大丈夫、きっと擦り傷だけ……だと思ったが足やったかな……」


ヨシキ「すいません!本当にすいません!」


ヒデ「いや、なんていうか俺もよそ見してたし……」


ヨシキ「えっ?」


ヒデ「いやいやなんでもない、大丈夫だ。」


チップ「大丈夫かー?!」


坂の上で様子を見ていた、全員が心配して降ってくる。


チップさんとサクラ先生は血相を変えて飛んできた。


ヒデ「大丈夫ですよ。擦り傷だけです。」


チップ「すまん、安全の確認もせず、こんなことさせてしまって!俺の責任だ!」


サクラ「怪我の手当てしましょ、合宿所にヒデくんは私ときて!」


フウカがヒデの落としたタオルを拾い、付き添う姿勢を見せる。


サクラ「フウカちゃんも、じゃあ一緒に来てちょうだい。」


ハナ「チップさん、リヤカーを勝手に借りてきたのはヒデですし、バランスを崩して滑り落ちたのはチップさんのせいじゃないです。」


取り乱しているチップにハナが声をかける。


荷物が全て車に積み込まれる頃には、ヒデは手当てが終わり、念のため足を診てもらうため、チップさんの車で病院へ向かった。


擦り傷のみでレントゲンも異常なし。

帰りの車でもチップは沈んでいる。


チップ「足は大丈夫ってことだが、何かあればすぐまた病院行けよ?治療費は俺に請求しろ。」


ヒデ「大丈夫ですって、俺の不注意でしたから……。」


チップ「すまん……。」


ヒデ「気にしすぎです……あ……じゃあ、彼女ができた暁には特製ディナー貸切でお願いします。」


チップ「おぅ、任せとけ。さっき親御さんには電話で挨拶したが今家に居るなら直接ご挨拶させてもらってもいいか?」


ヒデ「親、今出張でいないんで、俺しかいないんです。送ってもらってありがとうございました。お疲れ様です。」


足はちょっと捻った感じがしていたが、痛くもなかったし、カービングターンの動きをしてみても、問題なさそうだった。


ヒデ「ほら、ね?大丈夫。」


チップ「じゃあな。いつでも飯食いに来いよ。」


チップさんは心配性だ……。


赤いオープンカーは帰って行く。


……。


フフッ……。


みんなには迷惑をかけたかもしれないが、俺にはまだやるべきミッションがある。


スポーツバッグからビニール袋を取り出し、砂に塗れた赤いビキニパンツをそっと取り出す。


これを早速洗って返してあげねば!


ドキドキしながら砂をはたく。


ちょっとニヤニヤしながら両手パンツの両サイドを持って広げてみた。


この顔は誰にも見せられない。


ん?


女物にしてはサイズがちょっと大きいような……。


真ん中ってこんなに膨らんでる?まるで男……。


……。


……。


……。


ヒデはペッと床にパンツを捨てた。


水着のタグにはしっかりとハナ部長のフルネームが刻まれていたのだった。

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