第三話
俺こと聖剣フレソディアは、嘘つき霊媒師に引っこ抜かれた。
「で、下の岩を削れば良いのか?」
「あぁそうだよ。良いよなラッキー?」
このワードとかいうダサい名前の男と二人きりでは敵わない。ラッキーも連れて行くのだ。
「わかったっす。兄貴についていくっす」
瞬間、ワードは俺を振った。
ガリッ、と音がして、ラッキーが削れる。
「いってえ!テメー、俺で削りやがったな!?」
「別に良いだろう。お前レベルの剣であれば、欠けることもないだろうし」
俺レベル?俺ってそんなにすごいのか?
「兄貴〜、というよりワードさん、拾ってほしいっす〜」
「ああ」
ワードはラッキーを拾い上げる。
「ふむ……この石は、鞘の一部として加工してもらうというのはどうだろう?」
「鞘!?兄貴を収める鞘っすか!?」
「そうだ。フレソディアも、それなら一緒にいれて良いだろう」
「うーん……そうだな。案外気が効くじゃねえか」
こうして、岩とそれに刺さる剣という俺とラッキーの関係は、鞘とそれに収まる剣へと変わった。
***
俺たちは、ワードが拠点にしているという隣町へと移動した。その街の鍛冶屋さんの手によって、ラッキーは鞘になった。流石に素材が足りないため、他の材料とラッキーの組み合わせではあるが、落ち着きのあるデザインがなかなか良い。もちろん、俺に合わせて作ってあるのでピッタリはまる。
「兄貴ー!岩時代よりおさまり良いっすね!」
「おー、そうだな。快適だぜ!」
「良かったな」
俺らを腰にぶら下げたワードがそう呟く。
「ところでよ、今度はどこに向かってんだ?」
「宿だ。もうすっかり日が暮れたからな、休むぞ」
「ほーん」
宿か。そういえば転生してからというもの、ベッドを見ていない。夜は寝てはいたが、ただ意識がなくなるというだけで、どこかに横になったりする必要は、もはやなくなっていた。それよりラッキーの中のほうが居心地良いぜ。
「そうだ、宿には俺の仲間が待っている。見て驚くなよ」
「仲間?パーティーメンバーってやつか?なあ、美少女か?俺の物語のヒロインか?」
「は?」
すんげー冷たい目で見てくるんだが。悪かったな。
「ワードさん、驚くってどういう意味っすか?変な人なんすか?」
「そうだな、とにかく見た方がはやい」
その言葉と同時に、俺たちは宿に到着した。
***
宿は3階建てだった。ワードの泊まっている部屋は、2階の一番奥だった。鍵を開けて、扉を開く。すると、どこからか可愛らしい声がした。
「あ、おかえりなさい」
女子だ!俺は神経を研ぎ澄ませ、声の主を探す。見つけた。が。
「な、何ぃ!?!?」
「だから驚くなと言ったろう」
事前にそう言われていても、驚かざるをえなかった。なぜなら、部屋の中央には少女が浮いていたのだから。
少女はふわふわと浮いたまま近づいて来て、やがて俺と目が合う。(俺に目はないが、合った気がした。)
「あなたが隣街の魔剣ね。わたしはリィラ。幽霊だけど、よろしくね」
この世界には幽霊もいるのか。