驚き
「お前か、苺の匂いの正体は。」
龍が、立っていました。
リアの何倍もの体は、透き通った水晶の鱗でおおわれています。
リアは震えながらも、なんとか苺ジャムの瓶を出します。
「これ………どうぞ」
リアが瓶を差し出すと、龍は器用に前足を使って蓋を開けます。
そして苺ジャムを食べた瞬間、龍は驚きました。
同じ味だ
それは、昔のこと。
龍はある国から、生贄を捧げられていました。
その中に、苺ジャムを持った少女がいました。
それを食べてから苺好きになった龍は、まだその味を覚えています。
このジャムは、その時の味でした。
「これは誰が作ったのだ」
「おばあちゃんと、私です」
「おばあちゃんの所に案内しろ」
龍はそう言ってリアを前足でつかみ、上に乗せます。
そのままばさりと翼を広げ、空へと羽ばたきました。
リアが一生懸命に歩いた道をひとっ飛びして、おばあちゃんの家に着きました。
「おばあちゃん!」
家の中に入ると、おばあちゃんがベッドに横たわっていました。
「今すぐ薬を作るから、待っててね」
リアは薬草を煎じて、おばあちゃんのもとに持ってゆきます。
薬を飲んだおばあちゃんは、すぐに血色が良くなりました。
良かった…と、泣きじゃくるリア。
間もなくおばあちゃんは目を覚まし、リアの背中をさすってくれました。
「ありがとうね、リア。本当にありがとうね」
その目には、光るものがありました。
その時、白髪の、おそろしく顔の整った男性が入ってきました。
「やっと見つけた、メイア」
おばあちゃんを見てほほえんだ男性。
おばあちゃんの顔に衝撃が走ります。
「もしかして、あのときの龍なのかい?」
龍が探していたのは、おばあちゃんでした。
そしておばあちゃんも、龍を探していました。
それぞれの探しものが見つかり、龍とおばあちゃん、そしてリアは幸せに暮らしました。
いつまでも、ずっと。
これで終わると思ったら大間違い。