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神に仕えるもの

「教皇様には感謝してもしきれないですよ。

私の計画にはまって美術品を移動させて砲撃を彼らが行えるようにしたのですから。

全て計画通りだったんですよ。」

ユダがそういって立ちすくむ教皇に剣を向ける。

他の枢機卿は怯えて前に出てこようとすらしなかった。


広樹はもう得るものはないと思った。

「よし、お前ら。全員殺せ。」

兵士たちは枢機卿たちに剣を向ける。

「お待ちください!私はあなた様へ忠誠を誓います!

どうか生かしてください!」

そうユダが言ったが、広樹は兵士に更に念を押した。

「いいか。全員だぞ。」

そう吐き捨てるように言うと広樹は教皇庁から出た。


教皇庁から出てきた広樹は空を見上げ、手を伸ばした。

陽は既に落ち、暗い夜が始まっていた。

広樹は崩れ落ちた教皇庁の壁の破片を拾い、

兵士たちに地下室の安全確認をするように命令した。


地下室は安全なようで広樹は地下室に入り、色々な美術品を見て回った。

案外広く広樹は驚いていたが、その中でも一つ、広樹の目を引くものがあった。

それは何メートルもあるタペストリーである。


そこには神の姿や世界の成り立ちのようなものが書かれており、

更には様々な予言が書かれていた。


その予言曰く、神が降り立った5000年後に世界が滅びるという。

この宗教ができたのは今から1100年くらい前、

しかし神はそれよりずっと前に降り立ったとされている。

世界が滅びる、というのを第三次世界大戦だと仮定すれば神が降り立ったのは紀元前2969年。

アレクサ第一王朝と同じくらいの年のことである。


[彼女は人々に告げた。

『この世界の救いは、あなた方が最も憎み、そして私が最も愛する存在である』と。

彼女がそう告げて海に身投げした2670年後、神の生まれ変わり自称する者、

メシアが生まれた。

彼は神の教えを捻じ曲げたとして当時は十字架に磔にされ、そして殺された。

しかし彼の教えは今、正統性を持っている。]


この事が正しいとすれば、メシアとフリージアは別である。

メシアとフリージアは一体で布教を行ったのはフリージアであると

広樹は捉えていたのだが、違うと実感した。


こうして様々な文献に目を通し、たくさんの情報を得た。

しかしどれも有益な情報ではなく、広樹は舌打ちをした。

「仕方ない、全ての美術品を持ち帰り、ル・ソレイユの博物館に寄贈してくれ。」

それだけ命令して広樹は地下室を出てきた。


「全く、ラテニアを攻撃して奪ったものはこれだけか。

そうだ。私が直々に教皇庁の改革の声明を出すとしよう。

十字軍を恐れていたノラミア帝国との更なる友好が望める。」

広樹は教皇庁の改革を思い付き、ラテニアにて文書を書いた。


内容は教皇庁の中立化と政治的行動、声明の禁止などを盛り込み、

教皇庁という機関を無害にした。

これで教会勢力は大幅に弱体化することが見込まれるであろう。

そう思った広樹は早速世界に向けてこれを発表した。


ラテニアから戻り、ベニートと会談を行うとそのままル・ソレイユに帰還した。

統一という国民の悲願を成し遂げた広樹は各地で賞賛を受け、

ベニートより人気が高まった。

広樹はこの動きを利用してラテニアを統一しようと試みていた。


「ただいま。ジェネリア。」

広樹は彼の所の部屋に行って声をかける。

彼女の容姿は初めて会った時から全く変わっていないことに気づいた。

対照的に広樹は少し体が老け始め、白髪も少しずつ見えてきたのである。

広樹はこの違いに少し驚いてはいたが、そこまで気にすることもない、と

彼女と話し始めた。


広樹が遠征に言っている間の話を尋ねると、

政治はほとんど和也が代理に行ってくれているらしく広樹は安心していた。

「そうか。あいつならうまくやれるだろう。

俺じゃなくて和也がもう政治をやればいいと思うんだ。」

自嘲する広樹を見てジェネリアは励ますように広樹に言う。

「まぁ代理だし、あなたの方が政治に向いているのは確かよ。

私たちの支えもあるし。

そういえばルシタニアが遠征が終わったら来てほしいと言っていたわね。

早いとこ行っておいた方がいいわよ。」

「そうだな。今から行ってくるよ。」

そういうと広樹は海軍省まで走っていった。


「お久しぶりです、総督。

海軍計画が完成したのでご報告を。

今までの艦隊を更に整備し、砲艦でエンジン付きのものを戦艦。

砲艦で風力だより、または人力で動かすものをそのまま砲艦。

そして小型船はそのままにしました。

艦隊を5つほど編成し、第一から第四までは外海、第五は母なる海を守る勢力です。

一艦隊につき戦艦5隻、砲艦50隻、小型船150隻を配備しています。

余りを予備艦隊として各地に散らばせておきました。

母港はカレー、ノリマント、ボルディア、ブルタニア、マルセイエーズです。」

報告書を見ながら彼の話を聞き、海軍の整備がほぼ終了したことに広樹は感動した。

「よくやった。それでいいと思うぞ。」

そう広樹は言い残し、陸軍省へと向かった。

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