絶望と希望
「急げ、あと少しだぞ!」
広樹は馬を走らせて言う。
思い出の地、ドルベーの空は黒くどよんでいた。
ここで広樹はジェネリアを救うと決意を固め、さらにスピードを上げた。
ドルベーの異質な建物。
そんなものはすぐに発見できた。
広樹はここに降り立った時の森に足を踏み入れてすぐに教会があった。
そこの周りを広樹は探索していたその時、背後から物音がした。
背筋に汗がつたる。
嫌な予感を信じて後ろを向いてみると、なんとフリージアがいたのだ。
「フリージア!?お前…!」
「やぁ。何年ぶりかな。
よくこの森に帰ってきてくれたね。
君はここにいるべきではない。帰ろう。今すぐに。」
広樹は彼女の冷たい声を聞いてハッとする。
「お前…俺をあっちの世界に返そうとする理由は?
ただ単にお前らにとって都合が悪くなったのか?
お前らの望みは知らないが、俺が歴史を変えてしまうのにビビったんじゃねーのか!?」
そう広樹はフリージアに剣を向けて圧をかける。
「はぁー…」
彼女はため息をつく。
そんな彼女に広樹はイラっとした。
「なんだ、何が違う!?」
「いいかい?君が知っている歴史は…
全て書き換えられたものなんだよ。
ノリマント・コンクエストも、第二次世界大戦っていうのも。
この時空の変化は全てそこにいる黒十字信者が起こした。
そもそもこの世界には何もない。
今という時空のみしか存在しないし、正しい歴史というのは誰も知らない。
君という存在ですらこの今という時空の中に組み込まれているに過ぎない。
…簡潔に言おう、この世界はあの黒十字共に操られている。」
「でも、お前…世界を滅ぼすって。」
「確かに言ったさ。
でも厳密にいえば少し違う。
世界、っていうのは黒十字に操られたこの世界のことだよ。
数少ない天才というのも事実を知っている人間のことさ。
さて、どうだい?黒十字は君の大切な人を奪った。
そんな奴らより私の方が明らかに正しいとは思わないかい?」
広樹は確かにそうだと思った。
そう思って剣を下げる広樹にフリージアは笑って言う。
「そういえば、あの暗号、解けたんだね。
まぁでも『始まりの森で』って難しくなかった?」
「暗号…?」
広樹は昔のことを思い出す。
「おや、覚えてなかったかい?
まぁいずれにせよ、もう一度パソコンを見ておくといいさ。」
広樹は完全に剣を収める。
その様子を見てフリージアは満足げに言った。
「お、敵対する気はなくなったかい?
じゃあ、私はそろそろ帰るわ。後は頑張ってね、広樹。」
そういうと広樹の目の前が光に包まれる。
眩しさで目を抑えてから目を開けると彼女はいなくなっていた。
教会を包囲して砲撃を加え、広樹は突入作戦を敢行した。
ドアを勢いよく蹴破り、剣を持った兵士が全体を調べつくした。
やはりといえばいいのか、裏に階段がありそこに入っていった。
薄気味悪いくらい階段を抜けた先に、礼拝施設のようなものがあった。
その真ん中には十字架に縛り付けられたジェネリアがいて、
赤い服に身を包んだ人間が周りをまわっていた。
「貴様ら、覚悟しろ!」
そういって広樹は兵士に突撃を命じる。
兵たちは勇猛果敢に敵と戦った。
しかしそれ以上に驚いたのは敵の武器が広樹の時代でも見たことのない武器だったことである。
敵は謎の銃のような武器を装備してこちらに撃ってきた。
広樹は盾で守りながら彼らを捕縛するように命令した。
「恐れず進め!私が先兵となる!」
そういって広樹は盾を持ち敵へと突撃していった。
「俺たちも負けてられない!行くぞ!」
親衛隊長の掛け声で親衛隊員が敵を殴って縛っていった。
数の暴力で敵を全員捕まえ、名前を名乗らせていった。
「オズワルド、ABC議長です。
黒十字の導きに従ってきました。」
ABCの関係者は全てここで捕まった。
そしてさらに名前を名乗らせ、名前を名乗らないものの覆面を剝いでいった。
10年前にあった2人を含め、全部で12人が捕まった。
そして最後の1人を広樹は問い詰める。
「おい、お前、名前は?」
そう顔を彼の顔に近づけて聞いたが、彼は首を振るばかりだった。
「…わかった。」
そういうと広樹は彼の覆面を剥ごうと手を伸ばした。
その手を彼は掴む。
その彼が手を掴んだのに焦って、親衛隊員は胸のあたりを剣で引き裂いた。
「おい、何しているんだ!」
そう隊員に怒ったが広樹は焦らず怪我の具合を確かめるために胸を見た。
そこには何も書かれておらず、ただ褐色の胸が存在した。
その胸を見て広樹は口をぽかんと開ける。
別の親衛隊員が覆面を取ると、広樹は手を震わせた。




