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ライオンと鷲の戦い

最初の仕事は、ル・ソレイユの実態を調査することだった。

まずは手始めに郊外の地形から調べ始めた。

東は湿地帯となっており、その他は全て森に囲まれていた。

都市の道路は放射状に延びており、あちこちに行けるようになっている。

北に延びる道路から時計回りに第1道路、第2道路…第11道路と名付けられていた。

そして中央に流れるセーニョ川はガリアの中央の西の方からノリマント地方の方へ流れている。

水源のデジョンは鉄道の途中駅となる予定の場所で西部の方にも鉄道の恩恵を与えられることに広樹は気づいた。

こうして広樹はデジョンとル・ソレイユ、そしてノリマント地方を結ぶ水運ルートを整えることにした。


そしてル・ソレイユの中心から少し西に離れたところに宮殿があり、広樹たちはそこに住んでいた。

官庁はおおよそ宮殿の周りに点在するような形になり、親衛隊本部は唯一南の方にあった。

省庁の建物も決まった後は本格的な戦争の準備を行うことになった。


火薬の工場はカレーにあったものをノリマント地方に移し、また新たにブリトン島にも作った。

そうして火薬の供給源が絶たれることが無くなり、火薬の供給がかなり安定化することが見込まれた。

カレーだと侵攻を受けた際に破壊されたり敵に利用されたりという危険があったためである。

鉄道の計画は既に蒸気機関車も客車も貨車も出来上がっており、客車1個、貨車3個、機関車1個で編成される混合列車が3本、貨車と機関車のみの5両編成の貨物列車が1本就役する予定であった。

路線もあと少しでマルセイエーズにまでたどり着くといった具合であり、広樹はデジョンとカレーの間で試運転をさせて自身もそれに乗った。

「共和国の皆さん、我々は遂にこの偉大な計画を完成させることができるところまで来ました。

この鉄道計画は私の悲願の夢であり、共和国の結束を強めるための計画であると思っています。

鉄道を使って共和国は更に発展し、自由な取引を推し進めることができるでしょう。

では、試乗される皆さん。アミアンまでのおよそ2時間の旅をお楽しみください。」

そういって広樹は客車に乗り込んだ。


10時21分。列車が走り出した。

走り出した謎の大きな籠に乗客は驚いていた。

沿線には鉄道を一目見ようと色々な人が押しかけてこちらに手を振っていた。

広樹たちは彼らに手を振り返しながら、鉄道での旅を楽しんでいた。

「こんなに早く楽に走れるものができるなんてすごいわねぇ。

クリス、本当にこの時代の人なの?」

そうジェネリアに和也は聞かれた。

「まぁものづくりが得意なので…

たまたま思い付いたことをしただけですよ。」

そう彼は言い訳をする。

「でもこんな凄いものよく思い付いたな。

頭の中を見てみたいものだ。」

「まぁな。」

そう話しながら列車に乗り、広樹たちは12時にはアミアンに着いた。


アミアンでは民衆の共和国国歌による歓迎を受けた。

「総督万歳!」の声が響き渡り、広樹の事業の成功を世に知らしめた。

そして広樹は言う。

「私がこの事業を推し進めたのですが、これを作ったのは私でなく労働者とこのクリスです。

彼らがいなければこの事業は成功しなかったでしょう。

全ての労働者に賞賛を!クリスに賞賛を!」

そう高らかに宣言すると更に駅が沸き上がった。

こうして広樹は計画の大成功をひしひしと実感した。


広樹はその日のうちにカレーに帰り、夜通しで作戦計画を立てた。

「まず初動で落としてほしい都市は三つある。

デ・ハーグ、ケルニア、そしてストラスだ。

ここは戦略上重要だ。ライン川に近く、水運の重要地域になるだろう。

そうして占領したら次はブランデ・ルブルクとヴィーンへ向かおう。

ここは今の皇帝一族の支配領域にもあたるから重要地域であることは間違いない。

そして占領を終えたら残った都市を落としていく。

ブリトン軍は中部に配置し、共和国の三軍は北部に配置する。

第一軍はデ・ハーグからブランデ・ルブルクを目指し第二軍、第三軍はケルニアからブランデ・ルブルク。

ブリトン軍は全てストラスからヴィーンへ向かう。

我々はブランデ・ルブルクで新しく作戦を立ててブリトン軍はヴィーンで新しく立案を行え。

そしてプラグという都市で第三軍とブリトン軍の一部を合流させる。

これで敵を壊滅させよう。

カステリアの方面はカタルニアから侵入しそこからドアが開くように山脈を突破、そして後は数で押してしまえ。

以上。これが最終的な計画となる。

物資の運搬体制が整い次第、恐らく6月24日に神聖帝国へ侵攻する!」

「「了解しました!」」

そういって各師団や各軍の司令官は一斉に軍の準備を始めた。


「じゃあ、しばらくこの宮殿ともおさらばだな。

マティルダ、アントン。どっちが早く敵の首都を落とせるか勝負だ。」

「お、やりますか?」

「あぁ。でも負けないようにな。目的は勝つことなんだから。」

「そうですね。じゃあ、レーヌ様。ご武運を。」

「お前も頑張れよ、アントン。」

そういって二人はお互いを励ましあう。

その後宮殿の人間は全て戦地へと赴いた。


「総督、南からの侵攻の可能性はないのでしょうか?」

そう第三軍司令官のジャンヌが聞く。

「敵は恐らくアルフォス山脈を越えることはできない。

出来たとしても突破は不可能だと考えているが…新しく徴兵した第七軍の第一師団を与えよう。

その他はまだ用意できていないが、用意出来次第すぐにそちらに送ろう。

後でジョルシュに伝えてくれ。」

「了解しました。」

こうして広樹たちの軍隊は準備が完了した。


広樹はまず初動をどうするかを考えていた。

彼は北部のデ・ハーグの部隊を統括しており、リール要塞に本陣を構えていた。

まずは目の前のブリュヘルにつながる大通りを確保し、そのまま前進しブリュヘルを確保。

そうして親衛隊と歩兵をダンケルクに戻し、敵はここに来るだろうからそこの後ろをついて撃滅してからデ・ハーグにまで行くという算段だった。

広樹はブリュヘルに行ってから戻すより先に親衛隊と第二歩兵師団を移動させた方がいいと判断し、彼らに移動の命令を出した。


こうして移動を命令してから3時間ほどたった時、突然神聖帝国側から砲弾が放たれた。

6月22日の未明のことだった。

広樹は驚き、敵の侵攻に備えるように防御陣地を築いた。

築いている最中に広樹は攻撃中止の命令をカステリア方面軍に送る。

そして移動中の親衛隊と第二歩兵師団にカレーまで退却するように命じた後敵部隊の侵攻を待った。


敵が侵攻してこないことに不安を抱いていたが、とうとう敵軍がダンケルクで目撃されたとの情報が入ってきた。

広樹は敵の目的はカレーだと気づくと、自身は急いでダンケルクに足を進めた。

ダンケルクは既に占領された後らしく、住民によればもうカレーに出発したとのことだった。

既にカレーのフィリップ区では激しい戦闘が起こっていると聞き、急いで救出に向かうことにした。

敵軍は総数で30000らしく、広樹の軍の二倍はあったがそれでも広樹は怯えずに進んだ。

そして二時間後、とうとうカレーを包囲している敵軍が見えた。

敵軍は救援に驚いたが、直ぐにこちら側に兵を仕向けてきた。

こうして広樹は戦闘を始めた。

敵軍は予想よりも少なく、広樹はいつもの作戦を用いた。

まず中央に支援騎兵部隊を動かし、その他を歩兵師団で固めた。

敵軍が攻撃する前に砲撃を行い、敵の隊列が崩れたときに全軍で攻撃をした。

攻撃を見てカレーの軍も反撃を行い、三時間後には戦車部隊がこちらに突破してきた。

こうして敵を分断した後は容赦なく敵を殺し、フィリップ区に残った総勢9000を殲滅した。


残った兵たちは南下してアルドルまで行進したが、補給が途絶えたため彼らは一切身動きが取れなかったようだった。

そこに広樹は容赦なく攻撃を行い11000人の敵を倒した。

広樹の軍の犠牲は4000ほどで、広樹は一度カレーで人員補充を行った。

補充を行っている時、広樹は思わぬ報告を聞いた。

「敵をカンブレー近郊で補足いたしました!

およそ10000ほどかと。」

「誠か!あいつらの目的はアミアンかル・ソレイユだ!急いでいくぞ!」

そういってまだ1000人ほど足りない中、急いでル・ソレイユまで引き返した。


同時刻、ケルニアで…


「陛下、一部が突破に成功し敵首都まで迫っております。

あと一日もすれば到着するでしょう。」

「でも、こちらにも軍がもう迫っている。

これでは先にこちらが落とされるのでは?」

そうデゴールに質問する。

「ご安心を。数ではこちらが勝っております。」

「そうか。なら大丈夫だ。」

そう安心し、彼は食事をとった。


「急げ!我々の首都はすぐそこだ!」

そう命令して広樹は急いでル・ソレイユに軍を進める。

休まず進撃したおかげか、一日ほどで近くの街に着いた。

敵軍は今ボーベにいるらしく、あそこからなら補給的な事を考えてもここに着くのは一日後だと予想していた。

対して広樹の軍はもうル・ソレイユに到着寸前であり、戦う準備もできていた。

そうして30分後、ル・ソレイユに着いた。

既に第二軍は勝利し、我々のカレーでの戦いは国内に広まっていた。

そのためこの戦いでも難なく勝てるだろうと人々は思っていた。

しかしここから地獄の防衛戦が始まるとは、誰も予想していなかったのである…

世界を巻き込んだ戦争、始まります。

このパートでかなり行くかもしれない…

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