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接近

店に戻ると、そこにはエリスがいた。

「さっきはいきなり逃げてごめんね。」エリスが申し訳なさそうに言う。

広樹は「別にいいよ。」と言いながら手を差し伸べる。

エリスはその手を取り、にっこり笑った。

「さて、お二人とも用事は済んだかな?」ジェームスが聞く。

ジェームスは続けてこう言った。

「さて、エリスさん。君は一体どこの出身なんだい?」

「え?」エリスが動揺する。

(やっぱり、何か不都合な真実があるんだろう。)

そう思い、「本当のことを言ってくれ。」と言いかけたが、少し面倒なことになりそうなので、

とっさにその言葉を取り消した。

エリスは慌てた様子で話す。

「私はこの町の生まれです。ただ、ここからかなり外れたところにすんでいるので、あったことがないだけだと思います。」

「そうかい,,,苗字は?」

「ドールです。」エリスが前にあったときとは比べ物にならないほど真剣に答える。

しばらくの間の後、流石にそろそろまずいと感じ、「ジェームスさん、もういいでしょう。」

と広樹が止めに入った。

ジェームスは広樹を見ながらこう返す。「実はそうも言ってられないんだ。この子は赤い髪をしている。ここら辺を襲っている海賊集団の特徴と一致しているんだよ。」

いつになく真剣に答えるジェームスに、広樹は驚き、つい感情的になってしまった。

「でも、エリスは,,,エリスは違います!あんなに優しいのに、そんなことをするはずがない!」

「なぜそう言い切れるんだ!?君はこの町や海賊について何も知らないだろう!?」

ジェームスが怒った口調で言う。広樹は少し冷静になった。

(確かにエリスが海賊じゃないとも言い切れない。どうすれば,,,)

考えているうちに、今まで傍観していたメリーが口を開いた。

「あなた、もういいんじゃない?もう夜遅いのよ?」

窓を見てみると、すっかり日は沈んでいた。秋の日は釣瓶落としとはよく言ったものだ。

ここで、広樹はとある疑問が頭をよぎった。

「ジェームスさん、海賊にはどのような特徴があるのですか?」

ジェームスは少し眉間にしわを寄せた後、「確か,,,」と話し出した。

「赤い髪、黄色の瞳、褐色の肌。あとは,,,」

広樹はエリスのほうを見る。(確かに、全てに当てはまっているな,,,)

その時、メリーが声を震わせながら言う。

「確か、胸に星のマークがあったような気がするわ。確か緑で描かれていたわね。」

(それだ。)広樹は心の中でガッツポーズをした。

「なら、それを確かめれば彼女の疑いも晴れるでしょう。メリーさん、調べていただけませんか?」

しかし、ジェームスが「それはやめておいたほうがいい。」といった。

メリーも、何かに怯えた様子で首を縦に振らない。

「どうしてですか?」そう広樹が聞く。

ジェームスは広樹の耳元に行き、こうささやいた。

「実は、メリーは海賊に襲われた経験があってね,,,だからあの星を見ると怯えてしまうんだ。」

「そうなんですか,,,なら、メリーさんにやってもらうのはやめましょう。仮にエリスにマークがあったら、まずいですからね。」と言ったが、ここで広樹は少し疑問に思った。

(じゃあ、誰がやるんだ?近くから呼ぶのか?)

ジェームスに聞こうとしたが、先にジェームスが口を開いた。

「夜も遅いし、この近くには人がいないから、レーヌ、すまないがやってもらえないだろうか?」

広樹は顔を鬼灯のように赤らめながら、とっさにこう言った。

「ち,,,近くの人を呼べばいいんじゃないでしょうか?」

「しかし,,,」ジェームスが髭を撫でながら言う。

「ここら辺の人は、夜何かあったとしても、出てこないんだよ,,,」

(マジかよ,,,)ふと、広樹はエリスの方を見る。

エリスは顔を赤らめていた。(チャンスだ。)そう思い、エリスに声をかけた。

「エリスも嫌だろ?あったばっかの男に体を見られるとか,,,」

しかし、エリスの答えは予想外のものだった。

エリスは顔を赤らめたまま、「別に,,,いいよ。」といった。

(え、まさかこいつ痴女なの?マジで言ってる?)

混乱する広樹の腕をとって、エリスは近くの部屋に入った。

エリスは広樹を壁に押さえつけながら、高い声で言った。

「わ,,,私は痴女なんかじゃないから。そこだけは勘違いしないでよね。」

「あ、あぁ,,,」少し声を詰まらせながら言う。

広樹がそういうと、エリスは服を脱ぎだした。

確かに、そこには星のマークはなかった。しかし、そのあと興奮からか気絶してしまった

「だから言ったでしょ,,,あれ?レーヌ?!」エリスが必死に起こそうとするが、広樹はそのまま眠ってしまった。


広樹が目を覚ますと、そこにはジェームスとエリスの姿があった。

「よかった、やっと目を覚ました。もう大丈夫?」

「悪い、まだ少しめまいが,,,すみません、ジェームスさん。ご迷惑をおかけしました」

ジェームスはいつものように微笑みながら言った。「なあに、気にすることはないさ。それで、マークはあったのかい?」

「はい、ありませんでした。」

ジェームスは肩をなでおろし、エリスに声をかけた。

「エリスさん、疑ってすまなかった。今日はもう遅いから、泊っていきなさい。部屋は,,,レーヌの部屋でいいかな?」

(おいおい嘘だろ?)しかし、エリスは首を大きく縦に振った。

「わかった。じゃあ、私は寝かせてもらうね。お休み、二人とも。」

そういうと、ジェームスは部屋を出て行った。

「で,,,何か目的があるのか?」

エリスは少し言葉を詰まらせる。しかし、すぐに明るく口を開いた。

「さて、問題です。私二日後、とあるところに行きます。どこでしょうか?」

広樹は少し考えた後、エリスに質問した。

「ヒントをくれないか?流石にわからないんだ。」

そう聞くと、エリスは「どうしよっかな~。」といった。

数拍おいたあと、エリスが口を開いた。

「えーと、君と同じところかな?」

(同じ,,,はっ!!)広樹は答えを思い付いた。

(思い返せば、エリスは俺が軍に入るという話をされたとき『レーヌも』と言っていた。まさか,,,)

そう思い、エリスに恐る恐る聞いてみた。

「まさか,,,お前も軍に?」

エリスは笑顔で首を振った。

「正気か?やめといたほうが,,,」といったが、エリスは神妙な面立ちで話した。

「実はね,,,私、お父さんを戦争で亡くしているんだ。」

「そうなのか,,,」広樹はそう返すが、少し疑問を持った。

(待てよ?ならなぜ軍に志願したんだ?かたき討ちか?)

そう質問しようとしたが、エリスがそのまま話し始めた

「ならなんで戦争にいこうと思ったかって考えてるでしょ?それは秘密。だけど、いつか必ず言うから。」

そういうと、エリスは広樹の隣に寝そべった。

「それじゃあ、お休み。レーヌ。」

エリスは毛布を体にかけて、そのまま眠ってしまった。

(隣で女子が寝ているのに安心して寝られるかーーー!)と、広樹は床で寝ることにした。


夜中、広樹が目を覚ますと、ベッドの上には泣いているエリスの姿があった。

「ごめんね、お父さん,,,ごめんね,,,ごめんね,,,!」

そう言ってるエリスに、広樹は優しく頭を撫でてやった。

そして、もう一度眠ることにした。


翌朝、雨の音で目を覚ますと、そこにはもう起きて着替えをしているエリスの姿があった。

広樹はとっさに毛布をかぶろうとしたものの、エリスに気づかれてしまった。

エリスは顔を赤らめて、「ちょっと、何見てるの?!変態!」といい、広樹に服を投げつけた。

広樹はこぶしを握り締め、顔を赤くしながら「こんなところで着替えんじゃねーーー!」といった。

「,,,確かに、私が悪かったよ。じゃあ、レーヌは後ろ向いててね。」

そういうと、広樹は着替えを見たいと思いつつ、もし見たらいろいろまずいと思ったからおとなしく後ろを見た。

エリスが着替え終わると、エリスは深く頭を下げながら言った。

「さっきはごめん。私の注意力不足だったよ。」

広樹は「別に気にしてないよ。」とは言ったものの、顔はまだ赤いままだった。

広樹は手をたたいた。「それよりさ、今日図書館に行かない?まだ調べもの終わってないんだよね。」

そういうと、エリスは首を横に振った。

「行きたいけど,,,それはできない。」

「どうして?」広樹が聞く。

しかし、すぐに「何でもない。」と言った。

なぜなら、その答えをは明白だからだ。

(恐らく、見た目のことを気にしているんだろう。)

そう思い、広樹は追及をしないようにした。


そして、エリスが店を出て行くのを見送った後、広樹は仕事に取り掛かることにした。

広樹は今日、メリーと共に新製品の開発に着手することになった。

「悪いわねー。明日から長旅だっていうのに。」

「いえ、むしろ少しやりたかった仕事なので。」

そういうと、広樹はメリーの対面の椅子に腰かけた。

そして、商品の開発は進んだ。

「この町ってどんな職業の人が多いんですか?」

「そうねぇ,,,漁師が一番多いかしら。あと鉱夫だと思うわ。」

(となると、塩気が多いものがいいな。あと、手軽に食べられるものか,,,元の世界にあるもので、何かよさそうなもの,,,)腕を組み考えていたが、答えはすぐに思い付いた。

「そうだ、メリーさん。30本ほどソーセージを用意していただけませんか?」

この提案にメリーは一瞬戸惑う様子を見せたものの、すぐに厨房に行ってジェームスに用意するように頼んだ。

広樹はさらにいう。「トマトソースとパンも用意していただけませんか?パンは15個ほどお願いします。」

「パンはないわ。パン屋まで買いに行ってくれる?」そういうと、メリーは広樹にパンを買うためのお金とパン屋までの地図を渡した。

「ありがとうございます。では、行ってきます。」そういうと、広樹は急ぎ足でパン屋まで走った。

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