軍隊
朝食を軽く食べ、広樹は復興省で事務作業をしていた。
と言っても復興省はほぼほぼ機能しておらず、他の省庁のまとめ役としての仕事もすべて総督府が担当していたので、補助係として存在していた。
なので復興省の解体も本格的に議論されており、
今日も作業が終わったら解体に関する会議を行うことになっている。
しかし事務作業は疲れるものだ。
大量の書類をまとめて、それをほぼ暗記しなければならないからだ。
「ふぅ…疲れたな。」
だがこの男は少し笑顔であった。
書類には主に地方から寄せられた報告が書かれており、
それをまとめるのが復興省の作業であったのだが、
工業力は内戦前の水準を取り戻し、
農地も回復率は80パーセントに昇るなど、経済復興が凄まじいからである。
それに伴い同盟国からの輸入はかなり落ち込み、
逆に共和国の工業製品、特に鉄鋼の輸出は凄まじい量になっている。
神聖帝国やラテニア共和国の鉱山を共和国のブルジョワたちが買い、
『自由貿易』の名の下安値で鉄をどんどん売りまくっているのだ。
共和国には外国進出した企業に税金をかけていたし、
それでいて共和国内より高く税をかけていた。
少し高い税金をかけていても海外進出する企業が多い理由は、
人件費が共和国に比べて安いという事情があるからだ。
だから積極的に外国進出を行う企業も多く、現に共和国の5大財閥のうち、
2つは神聖帝国内の産業の30パーセントを支配していたし、
ラテニア共和国に至っては工業シェアの大半が共和国系企業であった。
広樹はユーロピアの経済を共和国が支配し、
そのまま統合へ進むという当初の計画を実行することにした。
経済支配の重要性を広樹は深く理解しており、
実際にそれが原因で過去いろんな国と揉めていたのをよく知っていた。
しかし軍事力で抑えてしまえば、
誰も反対できないというのもよく知っていた。
だから軍事力の増強と経済力の増強を今から行い、
世界を相手にしても勝てる軍隊を築き上げる必要があると思っていた。
広樹はそんなことを考えながら宮殿に戻り、
会議室で閣僚たちを集めて会議を行った。
「お集まりいただきありがとう。
今日の議題は軍事力の増強についてだ。
共和国は第1軍、第2軍、第3軍、第4軍、第10軍、第13軍の
6軍、およそ9万人を保有しており、
これだけでは最強の軍とは言えない。
なので内戦前…いいや。
ゲルマニア戦争以前の23万の兵力に戻そう。」
広樹は会議の最初でこう宣言すると、閣僚たちに意見を求めた。
「流石に23万は不可能でしょう…
共和国軍のこれ以上の拡大は金銭的に圧迫されます。」
マリオンが反対意見を述べる。
内戦後の新政府組織において、新しく閣僚が割り当てられており、
マリオンは財務大臣として新たに就任した。
和也は教育、科学大臣になり、
エリスは外務大臣となり、
ハルトは保安大臣となった。
新しく保守党の議員から国土大臣のレイと、
衛生大臣のフランソワが就任した。
そして広樹は軍事大臣と総督を兼ね、
共和国の軍事政策をここに表しているようだった。
「では23万人の兵を養うのはほぼ不可能と。
幾らまでなら対応可能か?」
広樹はマリオンに質問する。
彼は慌てて筆で筆算を始め、広樹に結果を伝えた。
「15万なら対応可能なので…数にして9軍ですね。
戦車師団も使うなら8軍でしょうか。」




