思いもよらない出会い
「なぜおまえがいるんだ,,,」
広樹は口を開けて動揺する。
目の前にいた人物は旧友の和也だ。
彼と広樹はまさに竹馬の友と言える間柄で、広樹がずっと一緒にいた友人だ。
しかし、彼はあっちの世界に置いてきたはず。
そんな思考を巡らせている間に、和也が広樹に話しかけた。
「久しぶりだな、広k,,,ゴファ!」
広樹は、和也を部屋の外に連れ出した。
和也の口を押さえたまま、広樹は言う。
「この世界では俺のことはレーヌと言え、わかったな。」
和也はびくびくしながら頷く。
広樹は肩を下ろしながら和也の口から手を引いた。
和也は広樹に聞く。
「でもよ、ひ,,,レーヌ。
ここはどこなんだ?俺はお前が行ったであろう樹の近くに行ったらここに来たんだが、、、」
広樹は眉間にしわを寄せる。
そして、広樹は腕を組んだ。
「俺もそうだ。どんな状況だった?
俺はよくわからなかったが、足音が聞こえたんだ。」
和也も頷く。
「俺もだ。ただ、女性というのはわかった。
暗くて顔が見えなかったが、間違いなく女性だな。」
広樹はしばらく考えた後、和也に話しかけた。
「まぁ、恐らくそいつが犯人なんだろうな。
あっちに帰ることが俺らの目標だ。
あと、情報共有はしておきたい。
俺が同じような境遇にいた人の話を聞くに、どうやらここは仮想世界のようだな。
まぁ、怪しいと思うし信用もしていない。
ただ、一つ分かることがある。
そいつらは間違いなく同じ世界から来た人たちだ。」
「そうか、まぁ、分かった。」
和也が首を左右に振る。
これは昔から和也がやる仕草で、意味は特にないそうだが疲れたときにやるそうだ。
広樹は和也の仕草を見て安心した。
「いつものお前で嬉しいよ。
じゃあ、お前は議員としてでなくて俺の部下として来ないか?
お前は確か経済学部だったか?
なら、お前に経済政策を手伝ってほしい。」
和也は得意げに笑う。
「学年一位様が俺を頼るとはな。
まぁ、いいさ。お前のためだ。やろう。」
「その呼び名で呼ぶな。
取り敢えず、俺の机の上にある文書を読んでおいてくれ。」
「わかった。部屋は隣か?」
そういって、和也は広樹の執務室を指さす。
「そうだ。後でミーティングをするから、よろしくな。」
そういうと、和也は頷いて広樹の部屋に入った。
広樹は少し笑う。
(俺があいつを頼る日が来るとはな。)
そう少し感傷に浸ってから、広樹はマリオンたちがいる部屋に戻った。
広樹はため息をつく。
エリスは、広樹に首をかしげながら話しかけた。
「あの人は誰?友達?」
広樹は首を回しながら言った。
「まぁ、そんなところだな。
あいつは経済に強いから、そのまま経済担当として雇った。」
そういうと、広樹はマリオンの方を見る。
「今日は来なかったな。
では、各々の部屋で休憩しよう。
だいたい10分後、俺の部屋に来てくれ。」
「了解しました。」
「わかったわ。」
二人は、先に部屋を出て行った。
広樹はふと壁の方を見る。
そこには、古びた本棚があった。
「なんだこれは、何々,,,」
広樹がその本を手に取ると、驚きのことが書かれていた。
広樹の顔に汗がつたる。
「なんだと,,,これが事実なら、俺は神の手で踊らされていたことになる。
そもそも、神というものが存在する世界なのか。
まぁ、ただの言い伝えかもしれないが,,,」
そこには、広樹と同じような境遇の人の話が載っていた。
同じようにこっちの世界に来て、町を救った人物。
神と接触し、その神の容姿も正確に書かれていた。
その神は女性で、金髪。青い瞳を持っていたと記されている。
しかし手助けをしてくれるわけでもなく、ただ接触しただけだそうだ。
広樹がこの本を読み進めているうちに、時間は立ったようだ。
和也が広樹を呼ぶ声がした。
それを聞いて我に返った広樹は走って部屋に戻った。
広樹は全員を集め、経済政策を話す。
「では、今から政策を発表する。
始めに、今の領地の経済について話すぞ。
前の戦争の影響で、この国の農地は荒らされ、回復できないような痛手を負った。
それが原因で、今の失業率はものすごく跳ね上がっている。
だから、雇用を安定させて消費、需要を回復させたい。
まず、大企業に対する支援だ。
今、この地域には二つの主要な工場がある。
一つはカレー造船所、もう一つはダンケルク金属だ。
二つともここの主要な工場だ。
次に、企業だな。
こちらはいろいろあるが、主なものは三つ。
カレー商館、ランス建築、リール農場だ。
この中から予算を見るに二つ、援助することができる。
和也、何かいい案はないか?」
和也は資料を見ながら言った。
「大企業に支援するか?
俺は反対だな。」
広樹が机に腕をついて聞き返す。
「となると?」
和也が首をかしげて言う。
「まず領民の生活の安定が優先じゃないか?
だって生活が安定したらその分消費が増えるだろ?
そうなればここらへん、特に商館なんか潤うんじゃないか?
だから今一番経営がうまくいってない造船所だけに援助すべきじゃないか?」
広樹は頷く。
「それもそうだ。」
そういって、また次の案を言った。
「次は、国内の失業率の回復だ。
さっき言った消費の話とも絡むな。
雇用を増やすため、公共事業を行う。
工場を建ててひとまず雇用をある程度回復させる。
工場の方が楽に運用できるし、何より農業より経済効果がある。
回復させたら、本国やガリア、さらには帝国から移民を呼ぶ。
どれくらいの数になるかわからないが、かなりの数になるだろう。
彼らには農業や工業をしてもらい、経済を一気に回復させる。
これについて意見があるものは?」
また和也が手を上げる。
「でもよ、旧来の農民層が怒らないか?
無理な工業化で失敗した例だってあるんだぞ。」
広樹は親指を上げる。
「それに関しては大丈夫だ。
旧来の保守的な農民は農業をしてもらって構わない。
工場の従業員の給料はかなり支給する予定だから、問題はない。
では、最後。銀行についてだ。
カレーには銀行がないらしいな。
銀行を作り、貨幣の価格や物価、企業への援助を統制させる。
そして、金貨、銀貨を廃止して銅を用いた通貨を使う。
ただ、この銅貨はあくまで金の代わりだ。
金と同等の価値を持っているが、銅をそのまま貨幣とはできない。
そこで、この銅に加工する。
そうして加工された銅に、初めて価値が生まれる。」
和也は賛成する。
「そうだな。実物の金を持つよりかは安全かもしれない。
ただ、交換比率はどうする?変動させるか?
あと、話からしたらそれを不換紙幣にするみたいだが、それでいいか?」
広樹は悩む。
疲れも出始めてきたようで、広樹の肩におもりがのしかかったようだった。
マリオンとエリスはというと、ずっとポカーンとしている。
1000年も後の世界の学問の話をしているのだから仕方ないと思い、二人に説明することにした。
「つまり、俺が言いたいのは銅をそのまま交換せず、あくまで国が信用して使っている通貨として
利用するということだ。
交換することはできないが、金貨や銀貨と同じような効果を持つんだ。
ただし、それを金や銀として交換することはできない。
あくまで価値を示すものとしての運用だ。」
二人へ10分ほど説明して、ようやく今までの話を理解してくれたようだった。
和也は広樹に言う。
「もう暗くなるぞ、広樹。
二人は帰らなくて大丈夫なのか?」
マリオンは立ち上がって言う。
「そうですね。私も家族が待っております。
それでは、また明日きます。」
そういって礼をするマリオンに、広樹は「ご苦労様。」と声をかける。
そして、エリスに言った。
「エリス、俺たちは最終的な話し合いをするから、先に夕飯を食べていてくれ。
しばらく話し合ってから、俺たちもいく。」
「わかったわ。頑張ってね。」
そういって、広樹の手を握ってから部屋を去った。
和也は広樹の方を見て言う。
「なぁ、その銀行はどうする?
誰が頭取になるんだ?」
広樹は和也を指さし、目を丸める。
「お前以外に誰がいるんだ?まぁそこはまた後だ。
次に、市場経済の推進についても話していこう。
この不景気から脱出したら、あとは市場の成り行きに任せる。
ただ、ケインズの理論には確か需要量と供給量をほぼ一致させれば景気変動が起きづらいとあったな。
それを実施してもらいたい。
今、あきらかに供給過多なのは資料の通りだ。
だから、しばらくは国民所得を増やしたい。
そのため、今は雇用に注力してほしい。
それが終われば、あとは任せる。」
和也は少し笑う。
「懐かしいな、この感覚。
一緒に向かい合って真面目な話とかしたな。」
そういって感傷に浸っている和也を見て、広樹は肩を回しながら言う。
「そうだな、じゃあ、これで終わりだ。
まだあるが、そこはマリオンがいるときに、な。
では、俺らも飯食いに行くか。」
和也は広樹と肩を組み、一緒に行く。
しばらく、二人は元の世界の思い出に浸った。
夕飯を食べ終え、広樹が和也とゆっくりしていたころ、マリオンが急の使いをよこしてきた。
「どうしたのだ?」
使者は広樹に伝える。
「伯爵様が、いらっしゃいました。」
広樹が持っていた本を落とす。
「どうなさいますか?」
広樹はすぐに我に返り、使者に伝えた。
「ここにお連れしてくれ。」
「了解しました。」
そういって、使者は去っていった。
和也が広樹に聞く。
「伯爵って、お前の上司か?
何をしに来たんだろうな?」
広樹がフッと笑う。
「説教かもな。まぁいいさ、うまいこと切り抜ける。」
しばらくたち、チャールズがやってきた。
広樹は応接間に案内すると、チャールズは広樹に言った。
「さて、そろそろ具体的な政策が出来てきた頃ではないかね?
聞かせてくれないか?」
「わかりました。エリス、資料を持ってきてくれ。」
エリスは、足早に部屋を出て行った。
広樹は説明する。
「今までに決まったのは、最高法規と経済政策についてです。
最高法規は自由を尊重しながらも、ある程度統治下としての秩序を取らせていただきます。
経済政策に関しては、大幅に改革をします。
失業率を減らし、雇用を回復します。
そして工業化の実現です。
こちらは、外国から移民を呼んで人口を増やします。
自由を宣伝し、ここへの移住者を増やします。」
広樹が語り終えたころ、エリスが書類を持ってくる。
「はいこれ、お久しぶりです。」
チャールズは、微笑みながらエリスに言う。
「あぁ、どうも。読ませてもらうよ。」
そういって、彼は報告書を読む。
広樹がワインをすする。
チャールズは、目を丸くして言った。
「ワイン、飲めたんだな。」
広樹は少し恥ずかしそうに笑う。
「はい、帝国に訪問した時に初めて飲みまして、
意外に飲めたので飲んでいる次第です。」
そういって、もう一度グラスに口を付けた。
チャールズは、にこやかに笑いながら言う。
「まぁ、いいんじゃあないか。
それと、今日の用事について話さないとな。」
チャールズが真剣な眼をしたため、広樹は少し背筋を伸ばす。
彼の面立ちはいつもの柔和な雰囲気と違い、覚悟を決めたようだった。
「俺はもう74になる。実はな、ジェネリアは俺の娘ではなく孫なんだ。」
広樹は驚愕する。
なぜなら、彼の見た目は74には見えないからだ。
隣にいる和也も、とても驚いていた。
チャールズは続ける。
「まぁ、そんなわけでもうあいつに国を任せたいわけだ。
ただ、宰相不在の状態で統治者が交代なんてのは無理だ。
そこで、だな。宰相選出会議を行う。
4か月後の4月5日、俺の屋敷にて行うからよろしく頼む。
後、明日か明後日にはもう来てほしい。君に重要な話がある。」
広樹は了解し、自室に戻った。
自室で広樹は宰相の選出について少し考えていた。
(宰相など、今やりたいやつがいるか?
前の宰相は殺された挙句、家までつぶされた。
そんなリスクを背負ってやるべきことではないだろう。
俺がなってもいい。
ただ、俺も自領を治めるのに精いっぱいだ。
取り敢えず様子見をしておくか。)
そう思って、広樹は一時国の経営をマリオンと和也に託すこととした。
翌朝、広樹がチャールズを見送った後に広樹はマリオンと和也を呼んで伝えた。
「すまないな、俺は今から一カ月くらいここを留守にするから、その間は任せた。
あと、何かあったら俺の机の二番目の引き出しを開けてくれ。」
「わかりました。領主様がいない間、このマリオンにお任せください。」
「任せろ。俺の手腕を見せてやるよ。」
そういう二人はとても頼もしかった。
二人の肩を叩くと、広樹は出発の準備をした。
夜になった。
広樹は、海の上で一日を終えようとしていた。
月明かりが甲板に出ている広樹を照らす。
そこに、一人の男がやってきた。
彼は広樹に話しかける。
「おまえがレーヌか?」
広樹は怪訝な眼をしながら答える。
「そうだ、あなたは?」
その男は、剣を抜きながら答えた。
「俺はリチャードだ。ある人の依頼でね。お前を殺しに来た。」
広樹も剣を抜き、二人はにらみ合った。
リチャードが先制を取る。
広樹は防戦一方で、なかなか手が出せなかった。
剣が月明かりを受けて光る。
しばらく打ち合った後、リチャードは言う。
「なかなかやるな。それでこそ、我らの敵。」
そういって、大きく剣をふるった。
広樹は息が上がって、もう体力はなかった。
広樹は支えきれず、肩に大きな傷をつけられた。
崩れ落ちる広樹に、彼は大きく剣を振り落とす。
広樹は、死を覚悟する。
しかし、相手も崩れ落ちた。
何事かと思い彼を見てみると、首に矢が刺さっていた。
矢を放った主がいると思われる方向を見ると、そこにはシメオンがいた。
「シメオン、ありがとう。」
広樹が手を差し出す。
シメオンは、それを無視してリチャードを打ち取った。
そして、胸のポケットからとある手帳を取り出した。
それを広樹に見せる。
「これはなんだ?シメオン。」
シメオンは、その手帳を胸にしまって答える。
「これは、ラテニア教の僧兵部隊の証だな。
奴らは恐らくお前を殺そうとしている。
試練というものを与えるために、な。」
広樹は、首をかしげる。
「おっと、言いすぎちまったな。
俺は戻る。医療所まで連れて行ってやるよ。」
そういって、シメオンは医療所まで広樹を連れて行った。
翌朝、ある程度怪我が良くなり広樹は下船した。
下船すると、ジェネリアが広樹を待っていてくれた。
「広樹、久しぶり。その怪我,,,」
ジェネリアは開口一番、広樹の腕の傷を見た。
広樹は少し恥ずかしそうに言う。
「船上で、ラテニア教徒に襲われたようです。
私の怪我は大したことはありません。ご自身の今後について心配された方がよろしいかと。」
ジェネリアはそう言われて、頬を膨らませて言った。
「あなたの怪我もかなり心配だわ。
まぁいいわ。さぁ、屋敷へ行きましょう。お父様もいらっしゃるから。」
広樹は彼女の手に引かれ、屋敷に向かった。
屋敷に着くころには、既に昼間となっていた。
広樹は早速食堂に案内される。
席に着いた後、チャールズが広樹に言った。
「お疲れ。早速だが、今後の政策について話し合う。
カレー総督の君を呼んだ理由は分かるな?」
広樹が少しうつむく。
「,,,おそらく、宰相の選出において我々にとって有利な派閥を選出させたい、と。」
チャールズが真剣な面立ちで言う。
「その通り。そして、我々の支持する候補は、二人。
君と、ホーストン一族のヘンリク・ホーストンだ。
君は言うまでもない。
ホーストンは、まだ若年ながら功績を残した男だ。
ただ、民衆の支持はあまり強くない。
若年過ぎてあまり知名度がないのだろうな。
宰相選出会議は、市民代表5人、農民代表10人、貴族代表10人、統治者票3票で構成される。
俺の予測だと、ホーストンは市民から3票、農民からは4票だと考えている。
貴族票は、残念ながらほとんど対立候補のミドル・クレシアに行くだろう。
仮にあったとしても2票くらいか。
しかも、分裂してしまえば意味がない。
だから、俺としては貴族票を無視して君にすべて任せるのもありだと思う。
君なら、市民票や農民票を集めやすいだろうからな。
メルシア一門の奴らより、人気はある。
ただ、貴族票はほぼないだろうな。
君が良く知っているアントンの一門くらいだろう。
比較してみると、君の票が多い。
だから、王室の勅撰候補者は君にしたいのだ。
仮に君が宰相となったとしたら、君は領地を失う。
さて、どうする?」
広樹は自身が宰相候補となるなど思いもしなかった。
ただし、彼は今回は辞退しようと決める。
ようやく得られた領地を、失うわけにはいかなかったからだ。
「すみません。私は、カレーの地を治めたいので辞退させていただきます。
なので、ホーストン殿の宰相選出のお手伝いをさせていただきます。」
チャールズは頷いた。
ジェネリアが言う。
「そうだ、ホーストンは後少しで来るらしいわ。
昼食の用意はできているから、そこで話しましょう。」
そういって、広樹たちは少し待機した。
まもなく、ホーストンがやってきた。
彼はとても長身で、イケメンだった。
そこに対する広樹は167センチという低身長で、顔もそこまでである。
ホーストンは広樹に対してとても親切に応じた。
「こんにちは、レーヌさん。
あなたの噂は聞いています。では、よろしくお願いします。」
そういって、握手を申し出る。
広樹は、それを快諾した。
そして、和やかな雰囲気で食事が始まった。
チャールズがホーストンに聞く。
「さて、勅撰候補者は君となった。
そして君を当選させるためにレーヌ君が支援してくれるそうだ。
後の交渉は二人でやってくれ。」
広樹が心の中で笑う。
(さて、ここから俺が独裁的な権力を握るために暗躍させてもらうぞ。
俺が目指すのは、共和国の成立と共和制の名のもとに世界帝国を作る。
しかし、共和国は先進的すぎる思想であるため、実現は難しい。
そう、『先進的』すぎるのだ。
ならば、人民を遅れた中世から近代へと昇華させる。
そのために、独裁は不可欠だ。
俺が倒されることによって、もしくは自分から体制を破壊することによって共和国を成し遂げられる。
ただ、それでも不十分だ。だから、ジェネリアを立憲君主として王にさせる。
そうしたら、俺はこの世界から解放されるだろう。)
しかし、チャールズもチャールズで思惑があった。
(絶対的な体制を築き、ジェネリアに少しでもいい遺産を残す。
そのためにレーヌ、君を犠牲にさせてもらう。
君を扱い、すべての貴族を服従させる。
そうして、俺は気楽にこの座を離れられる。)
これだけではない。なんとホーストンも思惑があった。
(さて、宰相になったらこのおいぼれを殺すか。
そして、ジェネリアと結婚する。
そしたら、俺の子を王とする。
ジェネリアが何か言ってきたら殺せばいい。
とにかく、俺が権力を握ってブリトンを制圧する。
レーヌとかいう小男は、いずれ粛清すればよい。)
この三人の思惑が露呈してぶつかるとき、それはブリトンのさらなる混乱を意味する。
そして、この国、この島、この世界の運命は一人の女性が握ることとなった。
今この瞬間、この国の分裂は決定的なものとなった。
広樹率いる革命派か、チャールズ率いる絶対王政か、ホーストンの貴族政治か。
それとも、他の思想か。
いずれにせよ、この国は内戦に陥るだろう。
そういう意味でも、次の宰相会議は全ての人間にとって重要なものとなるだろう。
さて、この前戦争がどうたら言った気がしますが、もう少しお待ちください。
この会議が終わったら、多分起きます。戦争。
ですので、もう少しお待ちを。




