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農業の勉強

「ええ。それが国と民主主義を守る親衛隊の責務であります。」

親衛隊の教育内容は国家に忠誠を誓えというものであった。

隊員は国家への忠誠を第一に教わり、共和国の民主主義が如何に素晴らしいシステムかということを教え込まれた。

そして常に総督を守り、総督の政治姿勢に関わらず補佐するという姿勢が求められた。


勿論彼らは第一に民主主義を守るので、

前回のコミューンのような奴らには一切忠誠を誓わず、

民主的な総督を要求していた。

広樹は若干独裁的な気質はあったが、一応民衆の意見を良く聞いていた。

そのことをアピールする為に、今日も親衛隊員と言葉を交わすといった事情もあった。


「素晴らしい軍隊だ。

それはそうとして、このパン中々美味しいな。」

「どうも新鮮な小麦を使っているようですよ。」

広樹はパンをちぎって、中をじっと見る。

「んー…まだ9月の頭、7日なのにな。

まぁでもそれくらいか…。」

広樹はあまり農作業をやらなかったので、小麦の収穫時期を知らなかったのである。


「よし、農業の勉強をするか。」

「農業ですか、確かにいいかもしれませんね。」

彼はそう言いながら、スープを飲み干す。

「まぁなんにせよ、これからも頑張ってください。」

「おう。君もな。」

去っていく彼の姿を見て、広樹は満足げな表情をした。


「…これなら共和国の未来は安泰だ。」

広樹はそういうとパンを体にねじ込み、スープを飲み干す。

そして大きくなった頬を体につけ、そのまま皿を片付けて退室した。


広樹は案内板を見て書庫を探し、そして書庫へと歩いて行く。

書庫に行くまでの煉瓦造りの廊下で、

朝陽を浴びながら広樹は壁に掛かっている絵画を見て回った。

この時期の絵画は非常にルネサンス的なものが多く、

病院の壁にあるのも宗教的であるが、とても華美なものに変わっていた。


しかしあくまでこれはもう時代遅れの絵になっていた。

今は宗教に縛られない軍隊の活躍を描いた絵や、

一個のリンゴを描いた絵など多種多様な絵が生まれている。

これが今の共和国の文化であった。


絵を見ながら書庫へ行き、広樹は農業に関する本を探す。

何冊か本を見つけ、広樹は椅子に腰かけて本を読みだした。

書庫には大量の本があり、中には広樹の伝記のようなものもあった。

広樹はそれに極力目を合わせないようにして、農業の本を探していた。


農業の本には広樹が学生時代に習ったこともあったが、

本当に知らない知識も多く、ずっとその本を読みふけっていた。

逐一知らない知識は紙にメモをして、広樹は何時間も勉強して、

気付けば夕方になっていた。


「…ねぇ、何してるの…?」

引いた声を書庫に聞かせたジェネリアが広樹の隣に座る。

「あぁ、これか?農業の勉強をしようと思ってな。

農業に関しては初心者だからな…だから農民並みとは言わずとも、

ある程度の知識は入れておこうと思って。」

そういうと広樹は本を持ち上げる。


「でも時間がもう来ているみたいだな。

じゃあこれかりたら一緒に食堂に行こう。」

「うん。あ、持つわよ。」

「どうも。」

広樹は1冊彼女に渡し、2人で一緒に司書のところへ持っていった。


司書に本を渡した時に、広樹は膝から崩れ落ちた。

「…レーヌ?!レーヌ!」

彼女が広樹の肩を揺らす。

彼の瞼は、どんどんと下がっていってしまった。

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