戦後処理
翌朝、広樹は300の兵を率いてルーテルの住まうベルナルド宮に向かった。
広樹は一先ずそこの近くの丘に陣地を築くと、辺りを見渡した。
辺りには領民の家や畑が点在しており、中央に近づくにつれその家の数は増していった。
近くに陣地がないことに気づいた広樹は、突撃を敢行した。
騎兵が中心となって館の前に行き、まず二つの門を抑えた。
広樹は気づかれぬように火を放ち、館を燃やした。
冬の乾燥のおかげだろうか、すぐに火が付き、一瞬にして燃えた。
しばらく仮眠をとることにし、守備隊をいくらか残し陣地に戻った。
広樹が目を覚ますと、あれほど大きかった館はもう跡形もなかった。
そこには土台があったと辛うじてわかるほどの焼け跡しかなかった。
広樹は兵の一人に尋ねる。
「中にいたものは?全員死んだのか?」
兵士は恐る恐る言う。
「えぇ、これで全員始末しました。
また、1人生き残りをとらえました。
彼女の証言によりますと、中にいたものはやはり全員なくなったようです。」
広樹は高笑いをして、剣を振り上げる。
「我々は蛆を殺した、それだけに過ぎない。
君たちは民衆の英雄として、語り継がれるであろう。」
大きな歓声が上がり、広樹はそこを後にした。
広樹は屋敷に戻りチャールズに成功を伝えた。
「敵は全員葬りました。
これで奴らの一族は滅びましたな。」
チャールズは「ご苦労。」と言い、広樹の肩を叩いた。
「それにしても、どうしようかしら。
次の宰相選出を行わなければいけないわね。」
ジェネリアが言う。
広樹は自身以外の人間が宰相になることを望んだ。
彼自身、あくまで戦争をしたかった。
そのためには、宰相となっては困る。
自由に戦場に出れなくなるからだ。
取り敢えず、来る講和会議は広樹が宰相代理として出席することになった。
11月30日、講和会議当日
広樹はチャールズ、ジェネリアと共に講和会議に出席した。
どうやらあの戦いで戦争を始めた宰相は暗殺され、代わりに騎兵隊隊長が出席した。
彼は名をカール・デゴールといった。
「さて、あなた方の講和条件を伝えていただきたい。」
広樹は彼を見つめてゆっくり語る。
「まず、休戦です。
そして、ノリマント地方の割譲と、ブリトン島への干渉禁止です。
また、あなた方の要求の撤回でございます。」
デゴールは広樹を睨みつけた。
「小国風情が、よくそのような要求を。
我々としては休戦と、要求の撤回を提示します。
干渉禁止は分かりました。条約が締結されたら北のセルディック王国への援助を停止します。
しかし、ノリマント地方の割譲は認めるわけにはいきませんな。
あそこは我らの王国の出発点とも言うべき地ですからな。」
デゴールは髭を触りながら言う。
広樹は、対案を提示した。
「では、カレー地域の割譲でどうでしょうか。
あそこは帝国の息がかかっております。
持っていても貴国の損となるだけでしょう。」
デゴールの体がピクリと動いた。
(やはり、な。)
広樹は更に攻撃する。
「実は神聖帝国からフランデルタ地方に要塞を築くとの情報を得ていましてね。
さて、言い方は悪いですが弱体化した貴軍にこの要塞と帝国10万とも呼ばれる精鋭を
突破できるでしょうかな。」
完全に図星だったようで、デゴールは頷いた。
「全くその通りでございますな。
では、こちらもその条件で応じると致しましょう。」
しばらく細かな内容をまとめ、両国は以下の内容で同意した。
1、二年間の不可侵
2、カレー地方の割譲と海軍の船の一部の引き渡し
3、王国のブリトン島への不干渉
4、帝国とエクセン伯の同盟禁止
5、王国の要求の撤回
これで話し合いはまとまり、デゴールは本国に戻った。
チャールズは広樹に尋ねる。
「同盟禁止は重すぎないか。
これが大きな足かせとなるのではないか?」
広樹は笑って言う。
「なぁに、あくまでエクセン伯の、ですよ。
簡単に言えば王となってしまえば何の問題もないわけです。」
「なるほどなぁ。」
チャールズは広樹に感心した。
「そうだ、君にカレーを与えようと思う。
君には世話になりっぱなしだな。」
「いいえ、伯爵がいなければ私がここまでの戦果を出すことはなかったです。
本当に、感謝しております。」
広樹がチャールズに頭を下げる。
チャールズは広樹に手を差し出した。
二人は握手をし、互いに頷きあった。
翌日、講和条約の締結が行われた。
ガリアの副宰相が手を震わせながら金色の印鑑を押す。
さぞ彼らにとって屈辱的だったろうとその場のブリトン人すべてが思った。
しかし、広樹はそこにいなかった。
広樹は荷物をまとめ、カレーに行く準備をしていた。
カレーは一度行ってみたかった場所である。
広樹は心を躍らせながら用意をした。
しばらくして、広樹はカレー行きの船に乗り込んだ。
ジェネリアやチャールズは広樹との別れを惜しみ、船場まで見送った。
多数の民衆も広樹を見送り、歓声を上げた。
チャールズが広樹の肩を叩きながら言う。
「では、達者でな。
君の能力がかの地でも十分に発揮されるよう祈っておくよ。」
「ありがとうございます。お二人とも、お元気で。」
広樹は船に乗り込み、手を振ろうとした。
しかし、広樹はよく見た顔を見つけた。
それは、エリスの顔だった。
「レーヌ、私もつれて行ってくれない!?」
エリスは息を切らしながら広樹に尋ねる。
広樹は怪訝な顔をして聞く。
「いいのか?ここから離れることになるんだぞ。」
しかし、エリスの覚悟は決まったようだった。
「ええ、もちろんよ。」
「わかった。こい。」
そういうと、広樹はエリスに手を差し出した。
エリスが船に乗り込むまで、気を利かせて停泊していてくれた船長に会釈する。
そして、帆が揚げられた。
広樹はチャールズたちが見えなくなるまで手を振り続けた。
風向きが良かったようで、広樹は思ったより早くカレーに着いた。
カレーはとても賑やかな港町のように見えた。
「美しい街だな、カレーは。
早くこの町の人々と話してみたいものだ。」
エリスも同調する。
「そうね。でも、ここの人々が新しい統治者に戸惑っているかもしれないわ。」
広樹はフッと笑う。
「そこをどうするかが、私の腕の見せ所だろう?」
「それもそうね。」
そんな話をしている間に、船は接岸した。
広樹は船から降り、地元の領主から挨拶を受けた。
その領主は古ぼけた帽子をかぶっており、老練な領主という感じだった。
「こんにちは。私はこの町の管理人、マリオンと申します。
さて、もう準備はできております。さぁ、屋敷へ。」
恭しく話すマリオンが、広樹はどうも信用ならなかった。
「そうか。悪いが、この町を散策させてはもらえないだろうか。
君とも話がしたい。そこのレストランにでも寄ろう。」
「承知いたしました。」
広樹たちは、近くのレストランに入った。
「いらっしゃいませー。あ、マリオン様。
それと、そちらの方は?」
マリオンが紹介するのを待つことなく、広樹は自分から話した。
「どうも。次の統治者、レーヌ・アルフレッドだ。
早速だが、腹ごしらえをしたくてね。」
店員は動揺し、広樹に対し怯えた様子で言う。
「そうでございますか,,,
一番良い席に案内いたします。」
「いや、いい。
あそこに座ってもいいかな?」
そういって、窓際の席を指さす。
店員が了承したので、広樹はその席に座った。
広樹はマリオンに話しかける。
「さて、君はどのような統治を望む?」
マリオンは帽子を置き広樹に言う。
「我らの意見が通る統治を望みます。
しかし、どのようにすればよいのか見当もつかず,,,
人々の権利と秩序、両立させることは難しいのです。」
(現代の知識から行くと、民主主義を実現させればよいのだな。
しかし、ある程度本国の考えを通さなければならない。
難しいものだ。今ならラージ総督の気持ちがわかるよ。)
広樹は少し悩んだが、ある程度の構想を伝えるべきだと思った。
「まぁ、いい考えがある。
ある程度制限すればいいんだよ。
この世界は貴族や金持ち、地主が偉そうに生きている。
なら、人々を平等にすることが、一番重要な権利ではないか?
あと、必要な権利はまだあるぞ。
人々の意見が通りやすいように表現の自由を保障しよう。
それと、生きることも権利だぞ。
しかも、人間らしく、だ。
そのための保障は我々が行わなければならない。
他にもあるが、また今度話し合おう。」
マリオンは頷いて聞いていた。
エリスも広樹に言う。
「あと、皆が自由に議論できる場が必要ね。」
広樹はエリスの知略に感激した。
この時代の人間が、既に議会制度という概念を持っていたことに驚嘆した。
しかし、よくよく考えれば古代ロマニアのころには議会制度もあった。
だから知っていて当然かもしれないと思ったが、それは違うと感じた。
宗教が支配する中世真っただ中に議会制というのはかなり目新しい思想だったのである。
なので、広樹はエリスに一定の期待を抱いた。
「そうだな。人々から選ばれた者が政治を決定するのは重要だよな。
ただ、すべての権限をそこに移譲するのはよいことではない。
しかも、ここはあくまで伯爵様の領地。好き勝手にはできない。」
三人は考え込んだ。
しばらくたったのち、広樹が口を開く。
「まぁ、都市や村ごとの自治権を認めるのが現実的ではあるな。
そこらへんは最高法規を決めて規定することにしよう。」
マリオンは頷き、手を組んで話し始めた。
「そこまで考慮していてくださり、大変恐縮です。
前の国王陛下は、国がすべてを管理すると言ってやみませんでしたから。」
広樹は彼らの境遇を知り、ガリア政府に対し軽蔑の念を持った。
「そのような権利を認めないから、彼は死んだのだ。」
広樹がそう冷たく言い放つと、料理が運ばれてきた。
それは、広樹の世界で見たことないようなものだった。
「これは何という料理だ?」
広樹は優しく聞いたつもりだったが、店員はとても慄いたようだった。
「これは、ギヨーム・パイという料理です。
彼がパ・リーヌ入城の時に食べたといわれている料理です。」
広樹はそれに目をやる。
見たところ、それはただのパイだった。
しかし、中までフォークを刺してみると、中には牛肉のワイン煮が入っていた。
広樹はそれを食べてみる。
パイのパリッとした生地と牛肉の柔らかさがよく合った。
そして、すぐにそれを平らげた。
「うまかったな。それでは、私は一足先に出るよ。」
マリオンは席を立ち、お辞儀をした。
「わかりました。お会計は私がしておきます。」
広樹はマリオンに礼を言うと、町に出て言った。
町の昼休みは終わったようで、人々は働きに出ていった。
広樹は魚屋に声をかける。
「少し、よろしいかな。
私は新しいこの地の領主、レーヌ・アルフレッドである。
君に聞きたい、前領主はどのような方だったのだ?」
魚屋の老人は淡々と話す。
「あぁ、あいつはとても嫌われていたな。
皆、帝国直属市のころの方が良かったと言っておる。
わしもその通りだと思う。あのころにはまだ自由があった。」
「というと?」
広樹が老人の顔を見る。
老人は、空を見上げて昔を懐かしむように言った。
「わしの若かった帝国自由市のころが懐かしいよ。
あの時、わしがガリアに寝返ろうなどと言わなければ,,,」
そういって、彼は目を下にやった。
「何があったのだ?ここはガリアの街だろう?」
すると、隣にいた買い物客らしき女性が話しかけてきた。
「知らないのかい?
ここは、昔は神聖帝国の自由市だったんだよ。
でも、前の陛下がいきなり直属市にしてしまったものだから、皆ガリアに鞍替えした。
始めはよかったのだけど、今の国王になってからひどくなったわ。
あなたが新しいお役人様かしら?よろしくね。」
広樹は彼女に礼を言った。
「そういうことなのか。どうもありがとう。
もちろん、君たちの自由を保障しようと思う。
私は人々を縛ることをよく思わない。今までの支配者と違って。」
そういうと、老人は広樹に話しかけた。
「自由というが、自由というのは何だ?
我々は何をしなければならないのだ?
政治家、支配者というのは口だけで何も動かない。
いいか、行動が大切なんだ。そう、爺様が言っていたしな。
私のような庶民が偉そうに言ってすまないが、これがこの街の想いだ。」
広樹は彼の考えに心を打たれた。
広樹は深く頷き、彼の目をしっかりと見た。
「もちろんです、どうも。」
そういうと、広樹は先ほどのレストランに戻っていった。
レストランの近くで、二人は待っていてくれていた。
「どうもありがとう、それでは、行こうか。」
「わかりました。」
そういうと、マリオンは広樹を城に案内した。
城までは10分くらいしかかからなかった。
話によると、ここの前城主は普通の邸宅ではなく城に住んでいたらしい。
この城は帝国の支配下にあった時から使われており、
実に作られてから200年くらいの年月が経っていた。
小高い山の上にあり、城からの眺めはとてもよさそうだった。
「ここがカレー城か。なかなか防御側が有利そうな地形だな。
まぁ、中に入ろう。」
そういうと、中には既にいくらか兵士がいた。
マリオンは説明する。
「彼らはこの町の義勇兵です。
新しい領主様の為に働きたいと申し出た者たちです。
これからレーヌ様の部隊となります。自由にお使いください。」
広樹はマリオンに問う。
「いくらの数がいるのか?」
マリオンは少し目をそらして言う。
「だいたい50くらいです。少なかったでしょうか?」
「いや、十分だ。」
そういうと、広樹は城の中に入っていった。
城内はかなり清潔にされており、居心地はかなり良かった。
広樹は執務室に入る。
そこには、ここのデータらしきものがすべてまとめられていた。
広樹はそれに目を通すが、それを見て驚く。
「なんだこの杜撰な文書は。
もう一度集計しなおさなければな。」
そういうと、広樹は残りの文書にも一通り目を通した。
ここの人口は概ね10000人程度であり、主要産業は農業であった。
また、良質な鉄鉱石も産出し、それなりに裕福な地域であると感じた。
広樹はこのデータを見てある一計を思い付いた。
「なぁ、マリオン。
ここに工場を誘致するのはどうだ?
もしくは工場を作ってみるとか。」
マリオンはため息をつく。
「そうは言いますが、今までの支配者が悉く失敗してきた事業ですよ。
あまり手を出さない方がよろしいかと,,,」
マリオンはそう心配した。
広樹は、今までの支配者が失敗してきた理由を聞いた。
マリオンは咳払いをして言った。
「実は、ですね。農家の反対が強かったのです。
工業に人手を取られ、農業に手を回せないと文句が来たのです。」
広樹はすぐにマリオンに話した。
「農家の反対、か。」
広樹は少し頭をひねり、目を閉じる。
そして、広樹は目を見開いて決断した。
「ガリアから労働者を呼ぶ。
幸い、ガリア国内では国家への反発が強まっている。
だから、この国に移住してもらうんだ。」
広樹はそう言って、椅子から立ち上がる。
窓際に立ち、外を眺めた。さらに続ける。
「そのために、私たちは自由を掲げる。
本国政府から了承をもらう必要があるが、金で解決する。
この国はかなり税収で潤っているそうだからな。
流石港町といったところか。
安心してくれ。私はこのチャンスを生かす。
我らの国と、この地の為に。」
マリオンは広樹のそばに駆け寄った。
「素晴らしい提案でございます、領主。
では、そのようにいたしましょう。」
広樹は笑みを浮かべ、背を伸ばす。
マリオンの方を見て、広樹はにこやかに語った。
「では、やるか。憲法の制定を。」
広樹はエリスを呼んだ。
「何よ、今部屋の支度をしていたんだけど。」
「まぁ座ってくれ。大事な話があるんだ。」
エリスはおとなしく座った。
広樹は、紙を広げて二人に話した。
「よいか。まず、議会を制定する。
この議会には、この地の人々が立候補して議員となる。
ここは国全体で35人の代表を決める。
まぁこいつの話はまた後だ。
中央政府は、私が務める。
ここが政治を行う。
しかし、私はあくまで議長としての就任だ。
中央政府の内部は、君たち村長、市長が集まる合議によって成立する。」
「難しいわね。」
「そう難しくはない。
この政府が議会に新しい法を提案して、過半数が賛成したら可決する。
しかし、この法はあくまで本国の規則と憲法に則る。
だから、憲法に違反していないか調べる機関が欲しい。
そこで、人々の揉め事も仲裁する機関を作る。
ここが憲法に違反していないか調べる機関も兼ねることとしようか。」
そこで、マリオンが提案した。
「では、互いに権力を抑制しあうようにいたしましょう。
そうなると、議会がどう影響を持つかですね。」
広樹はマリオンに話す。
「そうだな。議会は何か悪事を行った判決官に対する裁判をさせよう。
そして、中央政府は判決所に対し再議を行わせる権利を持とう。
これは判決官を入れ替えて、再度判決を行う。
一回目と二回目の判決が違ったら、三回目の判決を行う。
この最終決定は、覆すことはできない。
同じように人々の揉め事についてもそのようにしよう。」
こうして、彼らの話し合いは3日に及んだ。
最終的に、憲法は決定された。
これを村長や市長に賛成してもらい、憲法として正式に決定しようと思った。
そうして、広樹は首長会議を行うことにした。
首長会議の当日、広樹は議場の中央に立った。
前日、マリオンからアドバイスを受けた。
「領主様、この地域の村長たちは皆プライドが高いのです。
なので、相手に宥和的な態度で接してみてください。」
マリオンから受けたアドバイスを思い出し、広樹はゆっくり話し始めた。
「皆さま、お集まりいただきありがとうございます。
今回は、新憲法について話していきたいと思います。」
そうして、広樹は憲法を読み上げた。
「前文
我らカレー(これよりカレー区と称す)は、民衆のための政治を行い、
世界の永久の発展と平和のため、ここに存続する。
第1条の1 カレー区の政府
政府は、ブリトンから派遣された役人を議長とし、
その他首長から成立する会議を政府とする。
2 政府の役割
政府は、カレー区の政治を行う。
政治は、議長が司り、その他の首長は政策に対し言論する。
また、過半数が政策に反対した場合、議長はその政策を取りやめなければならない。
政府は、議会に対し解散を命令できる。
投票を行った10日後まで、その議会は存続する。
10日後には新しい議会に交代する。
また、判決官長を指名することができ、
その他判決官を伯爵の名で任命することができる。
3 専門省庁について
専門省庁は、必要に応じて法律と同じ手順で成立する。
初期省庁は以下である。
教育省
科学省
軍事省
財政省
国土省
衛生省
保安庁
尚、専門省庁の長は議長が選出し、議会の過半数の賛成によって辞めさせられる。
第2条 議会
政府議会とは別に、人民議会の設置を行う。
人民議会は、カレー区全体を選挙区として35人からなる。
この議会はカレー区内の法律案(以下町則)、予算案について話し合う。
過半数の賛成によってこの案は可決する。
また、政府に対し政府の解散要求を行うことができる。
そして、法を犯した判決官の判決を行うことができる。
第3条 判決所
判決所は町則、憲法に基づき全ての争いを解決する。
判決所は50人の判決官によってなりたち、彼らは高等教育を受けたもののみとする。
判決会は7人で構成される。
判決所では政府、議会に対し憲法違反忠告を行うことができ、
議会、政府はそれに従わなければならない。
ただ、この2つはそれに対し再議を求めることができる。
2回目の再議は25人の会合とし、これと一回目の判決が異なった場合、
3回目の会合を行う。
3回目は全ての判決官が参加し、この決定は覆せない。
また、判決官は人民の争いの解決も担当し、
これは3回とも7人の判決官が担当する。
第4条 教育
教育は国家繁栄の最大の近道であり、国家が取り組まなければならない事業である。
そのため、国家は村ごとに学校を作り基礎教育を行う。
基礎教育の内容は、毎年政府の直属の教育省が議会に提案し、行う。
また、基礎教育は7歳になる年の元旦から11歳になる年の大晦日までの4年間とし、必修科目として
英語、計算法、社会科、基礎軍事教練、フランス語基礎と2教科を行う。
中等教育所は、カレー区内に3つ設置し、
高等教育所はカレー市内に1つ設置する。
第5条 軍事
軍事力の増大は危険だが、常日頃から訓練された軍を持ち、国の安全を守る必要がある。
軍隊は軍事省の直轄とし、規模は常に変動する。
平時は200人、準戦時体制は1000人、完全戦時は1500人とする。
しかし、本国の軍隊は含まれず、現地人の軍隊の規模である。
この戦時体制は、軍事省が議長に提案し、その後政府会議を経て議会に通される。
議会で過半数の賛成を得た場合、発令される。
第6条 権利
全ての人民は、人として尊重される。
人々は平等であり、家柄、性、思想によって差別されない。
また、すべての人々は教育を受ける権利を持ち、義務を負う。
人々は税金を納めなければならず、この税は法律で定めることとする。
人々は判決所の決定なしに拘束されず、監禁されない。
人々は財産を勝手に奪われることはなく、また表現を規制されることはない。
しかし、この権利を悪用してはならず、常に公共の福祉の為にこれを行使する。
第7条 憲法
この憲法はこの国の最高法であり、守らなくてはならない。
しかし、人民の3/4の賛成でこの法は変更される。
他の法と矛盾がないかは、判決所が判断する。
第8条 地方自治
各村、市は各々が独立した組織である。
この組織は法の範囲内で、各々が議会を制定し、政府を設置する。
ただ、区職(省庁の職員、区議員、政府議会構成員)のものは自治議会、自治政府に参加することはできない。
また、国家から離脱することも許されない。
以上。何か意見がある人はいますか?」
広樹は周りを睨みつける。
周りは首長とはいえ、元は民衆だ。
彼らは何も言えず、この法が施行されることとなった。
「決まりのようですね。最初の選挙はこれより3か月後。
立候補者には馬車を貸し出しますので、立候補者は私のところに来るようお伝えください。」
そういうと、広樹は議場をさった。
憲法が町に発布され、1週間後。
早速最初の立候補者が現れた。
しかし、その男は広樹を驚かせることとなる。




