ボルディア包囲戦
「全将校を呼んでくれ。作戦会議を行う。」
広樹はそういって将軍たちに考えた作戦を伝えた。
「では今回の作戦を説明する。
至って単純明快な作戦だ。砲撃を一日行い、軍を突っ込ませる。
それだけで勝てる。後はドクトリン通りにやれ。」
広樹はそういうと陣から出て、配下の兵たちに演説を行った。
第1連隊の精強な兵たちは広樹が現れると敬礼をし、
そして声をそろえて「万歳」といった。
広樹も敬礼をし、その後、低い声で話し出した。
「諸君。コミューンはほぼ壊滅した。
この大陸から悪は去り、後に残るは地上の楽園、共和国だろう。
しかし君たちも理解している通り、この国の現状は悲惨だ。
経済も大きな痛手を負い、政府が国民を食わせているような状況だし、
ル・ソレイユの街や今眼下に広がるこの景色を見れば如何に内戦が恐ろしいかわかるだろう。」
その場にいる全員が唾をのみ、広樹の話に聞き入った。
「この国は廃墟から復活する力があると信じている。
例え俺が死んだ後でも、君たち若人が手を取り合って働けば、
きっとこの国は復活する。
その前に我らはこの国の寄生虫を取り除かねばならない。」
広樹は大きく息を吸い、そして溜めた息を一気に声に変えた。
「コミューンの死は近い!必ず我々が勝つのだ!」
広樹のこの声で、陣の盛り上がりは最大に達した。
兵たちは剣や鎧を使って思い思いの音を出し、歓喜を表現した。
翌朝、激しい砲撃が始まった。
5000発ほど用意した弾丸も、一日で消費してしまいそうな激しい砲撃だった。
恐ろしいほどに大きな音が響き、街の建物はどんどん崩れていった。
砲撃が進むたびに逃げてくる民衆が増え、昼には兵士まで逃げ出してきた。
「撃て!」広樹は主に教会や高台にある宮殿に向けて撃ち続けた。
こうすることで敵を心理的に疲弊させ、一気に攻め込みやすくしようと思ったのである。
梟の鳴き声が森に響く頃に、
広樹は第1連隊を集めて夜襲を行うことを伝えた。
「…つまり、今なら勝機があると判断したんだ。
敵の小手調べもかねて、俺たちだけで行ってみる。
運が良ければそのまま占領まで行けるかもしれない。
安心したまえ。補助騎兵大隊の援護もある。」
広樹は第1連隊の中隊長らの了承を得て、早速夜襲を行った。
500の騎兵が合流すると、広樹は早速街の一角に入った。
街と言ってもそこに街の形は残っておらず、ただ崩落した壁が残るのみだった。
この辺りは特に砲撃が激しかった区画なので、当然といえば当然であろう。
こうして無事に占領すると、次に敵陣を見つけることにした。
ここでも和也に協力してもらい、事前に上から偵察機で敵陣の位置は分かっていた。
彼によるとここから道をまっすぐ行ったところに陣があり、
そこに敵兵は寝泊まりしているそうだ。
寝袋の数から、彼はそう判断したのだろう。
ならばここを攻めるべきだと、
広樹は騎兵と歩兵を突撃させて敵を一網打尽にすることにした。
「ここが敵陣だ。慎重に行けよ。」
配下の兵たちは小さく頷き、敵の陣地に盗人のように入っていく。
遂に敵兵の寝床までやってきて、広樹は安堵の表情を見せた。
「よし、やれ。」
そういうと兵たちは次々に殺し始め、
広樹はたった1人で奥にある司令官の寝床らしき場所へ行った。
彼はすやすやと死んだように眠っており、絶好の機会だと広樹は短剣を出した。
そしてその剣を一思いに彼の首に突き刺し、彼を絶命させた。
彼の首から血が流れだし、彼の首がベッドから落ちる。
広樹は溜息をつき、彼の顔に彼が纏っていた毛布を掛けた。




