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大戦争の始まり

「ガリア軍10000が海峡を渡りこちらにやってきているとの報告が来ました!

これは明らかなる敵対行為です。海軍の出動命令を!」

今、伯領は危機に陥っていた。

ガリア軍が攻めてきたのだ。

チャールズは深く刻まれたしわをさらに深めていった。

「,,,わかった。海軍、陸軍に警戒態勢を引くように言ってくれ。

それと、敵戦力の確認をしたい。}

「敵は60000を超える兵を動員し攻めてきています。

騎馬兵は少なく見積もって5000程度でしょう。」

「うちはどれだけ動かせても20000程度,,,

厳しい戦いになるだろうが、戦い抜くぞ。」

「「了解いたしました。」」

その場の全員がチャールズの考えに同意した。

同じころ、部屋に戻った広樹は計画を立てていた。

(まずは、海峡の防衛をすることが優先だな。

海峡を渡ってくる兵士を殺し、厭戦感情を高める。

そうすれば、自然と戦争が終わるだろう。

そのためには、徹底抗戦する努力が必要だ。

となると、国民の協力が不可欠だな。

よし、プロパガンダ工作をしよう。)

広樹はこのことを早速チャールズに提案した。

「と、いうわけなのですが。どうでしょうか?」

「なるほど,,,」

チャールズは書類を見て、深くうなずいた。

「君の言うとおりだ。

なら、一度国民をどこかに集めたいな。

しかし、場所がない。」

広樹は、人差し指を立てて顎を乗せた。

そして、思い付いたことを言った。

「地元の族長や名士だけ集めて、その人に勅書を彼らの地元で読んでもらいましょう。

そうすれば、内容は伝わるはずです。」

チャールズは、指をカチンと鳴らして広樹を指さして言った。

「それいいな。採用。」

そういうと、チャールズは立ち上がって広樹の肩に手を置いた。

「君には期待しているよ。」

そういうと、チャールズは部屋から出た。


数日後、広樹は大勢の貴族や族長の前で演説をした。

広樹にとって大勢の前で演説するのは初めてだった。

広樹の手がぶるぶると震える。

彼はそれを隠そうと必死に手を抑えて深呼吸をした。

そのあと、演説を始めた。

「皆さん、我々は窮地に陥っています。

先日、ガリアの大軍が押し寄せました。

これは明確な敵対行為です。

我々はこの挑戦を受けて立ちます。

我々の誇りを破壊しようとするガリアを、完膚なきまで叩きのめすのです。

そのためには皆さんの協力が欠かせません。

貴族、農民、労働者、兵士、商人,,,国内すべての人間が

手を取り合い、団結して我らの伯爵に勝利を!」

広樹の演説は大成功だった。

会場は拍手喝采で、集まった人の顔は皆勇気に満ち溢れていた。

そして、そのあとチャールズのスピーチが始まった。

「我々はなぜ戦うのか。

名誉のためか?地位を守るためか?

否!我々は正義の為に侵略軍共と戦う!

我々は海で戦う。我々は陸で戦う。

ガリアの奴らが講和を申し出るまで戦う。

例え私の命が果てようと、最後まで戦う!」

演説終了後、会場は最高の盛り上がりを見せた。

演説は大成功だとその場にいた誰もが思った。


広樹は、海岸要塞が突破されることはないとみていた。

このことは伯爵を含めてすべての指揮官の共通認識だった。

二日後、広樹はジェネリアが配属されている戦場に観戦しに行った。

(この戦場は西側はだだっ広い丘となっていて、東側は森になっている。

その狭間に城塞の本丸があるのか。

東に港が存在しているということは、ここは突破されにくそうだな。)

広樹はそう確信した。

ただ、使者からチャールズがここに居ろと言ったと伝えられたので

その指示に従うことにした。


広樹が丘の上から海を見渡していると、奥から船が近づいているのが見えた。

(旗は我々の軍の旗ではない。間違いない。

ガリアだ。)

そう確信すると、広樹はジェネリアのもとへ急いだ。


ジェネリアは、どうやらこの情報をもう聞いているようだった。

沿岸の壁にはもう弓兵たちがおり、戦闘態勢に入っていた。

広樹はホッとしたものの、目の前に大軍が迫っていることに気づいた。

(これはまずいかもしれない。

港を奪われる前に、森でゲリラを募った方がいいな。)

広樹はそう確信し、森の中にある村に走っていった。

森の中の村へ行くと、広樹は張り紙を町の掲示板に張った。

「村を守るもの 募集

日没ごろ、ここに集え。」

この紙を張り終えた後、広樹はジェネリアのもとへ行った。

「すみません。剣と弓矢を少しお借りしてもよろしいでしょうか?

近くの町で兵を募ってきたのです。」

ジェネリアは近くの人物と話した後、首を縦に振った。

「いいぞ。ただ、剣200、弓30。それと矢が5000までな。」

「承知いたしました。」

そういうと、広樹は部屋から出た。

窓から外を眺めると、暗くなった空と徐々に近づいてくるガリア軍の姿があった。

広樹は唇をかみしめながら、町へ走った。


町ではすでに150人ほどの若者が集まっていた。

広樹はこの若者らの前に立ち、即興の演説をした。

「諸君、お集りありがとう。

私はこの町を守りたいものの一人だ。

私たちはここで名を残すことになるだろう。

誇り高い抵抗軍として!

私たちの任務は上陸したガリア軍を一人残らず殲滅し、

我らの土地に足を踏み入れさせないことである!

我々はこの森で英雄となろうではないか!」

広樹が演説を終えて、町の外へ出ると更に人がついてきた。

この全員分の物資はあるのだろうかと思いながら、広樹は笑顔で武器庫へ行った。


武器庫で武器をそろえたとき、人数を確認したところ

200人を超える人数がいた。

広樹はまず、この部隊を二つに分けようとした。

しかし、なかなか司令官が決まらなかった。

この場に広樹以外に作戦立案など行える人物はいなかった。

広樹が半ば諦めかけていたところ、森の奥からとある人物がやってきた。

その人物は、昔広樹と共闘したアントンだった。

「レーヌさん。お久しぶりです。

おや、そちらの方々は?」

広樹は驚く気持ちを隠しながら返事をした。

「お久しぶりです。彼らは私と共に戦う同志です。

これから我々は港を防衛します。そこで、あなたの力が必要なのです。

協力していただけたら、と思うのですが。お願いできませんか?」

広樹が問うと、アントンはにっこり笑って答えた。

「わかりました。しかと私の力を見届けてください。」

そういうと、彼は広樹の隣に立ち、軍を100に分けた。

「あなたの方が多い方が都合がいいでしょう。

では、どうするのです?」

広樹は数秒考えて言った。

「恐らく、港に直接上陸するとは考えにくいでしょう。

森の中に伏兵がいる可能性を考慮しているはずです。

ならば、間違いなく相手は西の丘に上陸するでしょう。

その場合、補給を行うため港を確保しようとするはずです。

だから、我々を上回る兵力、そうですね。

10000で来ると考えましょう。

その数で来るなら、我々はジェネリア様が戦っている間に森に防御陣地を築きます。

その間に、アントンさんはジェネリア様の救援へ駆けつけてください。

ただ、森に入る敵を倒すだけでいいです。それ以上は必要ありません。

そして、北側だけを守ってください。南は何とかします。

そして、ジェネリア様の軍がもし敗れたら我々の出番です。

アントンさんも南へ来てください。

そこからはまた説明しますが、徐々に後退しながら時間を稼ぎます。」

「わかりました。こちらは4000もいませんからね。

必ず、成功させましょう。」

アントンは広樹に手を差し出した。

広樹もそれにこたえ、固い握手をした。


明け方、広樹たちの軍は深い眠りから強引に起こされた。

「水を飲め!装備を着ろ!」

広樹の大声が響き渡り、その場の全員が起きた。

彼はその後、近くの町に走った。

町との距離は案外離れておらず、3分ほどで着いた。

町長らしき人を起こし、大きな声で話した。

「よく聞いてください。今からすべての食料や物資を持って町から逃げてください。

町民全員に伝えてください。そして、この森の町全てにも。」

町長は何を言っているのかわからないような顔をしたが、

どうやら納得したようで広樹の指示通りに動いた。

広樹が走って戻っている最中、アントンの一行と出会った。

「お疲れ様です。今から行くのですか?」

アントンは広樹の目をじっと見て頷いた。

「えぇ。もう戦いが始まったようです。

では。行ってまいります。」

「ご武運を。」

広樹はアントンが出発した後、敬礼をした。

彼の戦士としての覚悟に感服したのである。

広樹は彼の雄姿を見送った後、陣地を構築することにした。


既に、木の上に櫓を作ったり、池をせき止めたりなどある程度の準備はできていた。

広樹はこれらを共に構築しながら、今後の戦いについての計画を練っていた。

(敵を壊滅させた後、本来ならガリア本土に行くべきだが,,,

それまでの余裕は残っているのだろうか。講和を早い段階で進言すべきだな。)

広樹の目標が定まると、陣地構築が粗方終わっていた。

櫓に登り空を見上げると、既に太陽が昇っていた。

彼らの能力を感心するのもつかの間、広樹は連絡を受けた。

「ご報告します。

我らエクセン軍は、3500から2000まで数を減らし城へ敗走しました。

ガリア軍は、大体6000くらいで城を包囲してます。」

広樹はニヤリと笑うと、使者に伝えた。

「了解した。城から出ないように伝えてくれ。

私の指示で突破をしてほしいと。」

しかし、使者は首を横に振った。

「しかし、我々の中では既に森から突破するとの意見が主流になっていますが。」

そうすると、広樹は筆を用意し手紙をかいて使者に持たせた。

「これを、ジェネリア様に渡してくれ。」

「わかりました。」

そういうと、彼は城に戻っていった。

「ガリアどもめ。どうやら引っかかってくれたようだな。」


数時間後、ガリア軍本営


「確認が取れました。森には敵軍がいました。」

「そうか。で、他の収穫は?」

さっきの使者が広樹が書いた紙を手渡す。


1、ジェネリア様は森から避難されるのがよろしいかと。

海なら安全ですが、ガリアに察知された場合が怖いです。

だから、森が良い選択かと。

2、多数の守備隊を城に残しておいた方がよろしいでしょう。

少数で決戦し、城を放棄するよりかよいと思われます。


「いかがいたしますか、陛下?」

「陛下」は突然高笑いをしていった。

「馬鹿め!貴重な情報を漏らしてくれるとはな!

よし、一部部隊は海に戻り城を完全包囲せよ!

その他の部隊で全軍で城に攻勢をかけよ!

今日は朕の娘がここにおる。だから負けるわけにはいかぬ。

いざ、エクセン人どもを滅ぼすのだ!」


広樹は、使者が去ったあとすぐに城に使者を送った。

「何もせず、お待ちください。ただ、防衛戦闘はしてください。

それと、仮にさっき書状が来ていたとしても無視をしてください。

理由はおいおい説明します。」

広樹は使者を送った後、日没くらいに遠くからガリア軍が迫ってきていることを確認した。

(大体1000くらいだな。あれくらいなら蹴散らせる。)

広樹はそう確信し、全員に戦闘準備を呼びかけた。


広樹は大攻勢が明日になると予測し、兵たちを休ませた。

彼自身は月を見ながら物思いにふけっていた。

広樹が大きなため息をつくと、アントンがやってきた。

アントンは広樹の肩に手を置き、

広樹がアントンの方を見ると深く頷いて見せた。

広樹の顔が綻び、笑みが生まれた。

二人は肩を叩きあい、明日に向けての士気を高めた。


明け方、霧がかかる中ガリア軍が全面攻勢に出た。

広樹は兵を起こし配置につかせ、森の中で決戦をした。

ガリア軍は森を中央から突破し、広樹の軍の一部を城に追いやろうとした。

しかし、ここは霧の中だ。

彼らは森の中ではぐれてしまった。

これが運の尽きだった。

森の中ではぐれた彼らは、広樹たちに各個撃破されていた。

「おい、味方はどこだ?」ガリア軍兵士が叫ぶ。

広樹は、その声がした方を振り向いた。

ガリア兵が5人いたため、弓を使い容赦なく殺していった。

他も同様の戦果を挙げ、確認できただけでも400の敵を殺した。

まずいと思った敵の本隊が援軍として向かうも、彼らも包囲されてしまった。

広樹は北部の味方を集め、敵の本隊の背後に回った。

そして、霧が晴れた。

霧が晴れると広樹は後方から集中攻撃を行った。

広樹らの攻撃に、敵はなす術もなく崩壊していった。

10時くらいだろうか。気づけば敵は全て殲滅され、残ったのは広樹ら150人だけだった。

広樹はこの勢いで城の森側にいる敵を攻撃した。

突然の攻撃に城への攻撃で疲弊していた敵軍は、ずるずると後退していった。

ちょうどここで、城側からも反攻を開始した。

敵は総崩れとなり、とうとう上陸してきた海岸まで追い詰められた。

あれだけの多数を誇ったガリア軍も、気づけば200もいなかった。

広樹は敵の総大将に向かって叫ぶ。

「我々をなめてかかったこと、あの世で後悔しな!」

ジェネリアも同様に叫ぶ。

「我々の底力を見ただろう。死ね!」

そういうと、ジェネリアは剣を前に突き出し、全軍を突撃させた。

敵は一瞬のうちに滅び、ここにガリアの兵は全て殲滅された。


広樹とアントンが敵の司令部を探索していると、資料が出てきた。

司令部はほぼ原形をとどめていなかったが、

テーブルと椅子などの家具や書類が散乱していた。

「なんだこれ。何々,,,結構すごいですよ。」

広樹が聞く。「何がですか?」

「実は、この部隊は10000を超える部隊だったみたいです。

しかも、敵の国王や王女も参加していたようですね。

まぁ、相手の計画だと火を用いて森を焼いて港を奪う予定だったみたいですが、

霧でできなかったのでしょう。」

広樹は頷いて言った。「ということは、敵の国王は死んだと断定した方がよさそうですね。

これで、彼らも交渉の席に着くでしょう。」

広樹は安堵した。しかし、広樹はそれより驚くものを見た。

エリスが、ガリアの本陣にいたのである。

彼女は、地面に横たわっていた。

土まみれで、初めはエリスだと認識出来なかった。

「エリス?どうしてここに!?」

広樹がエリスに駆け寄ると、エリスはかすれた声で広樹に話した。

「あ,,,,,,広,,,,,,樹。

怖かった,,,,,,よかった,,,,,,。」

広樹は泣いてエリスを抱きしめた。

その感触を感じ、広樹はエリスが生きていることを実感した。

「何も、話さなくていい。

おかえり,,,,,,」

それが広樹に言える精一杯だった。

アントンは、水とパンを二人の近くのテーブルに置いた後、

静かに陣地から立ち去った。


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