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天国

「…ここは?」

広樹は目を覚ます。

目を開けると、そこは今までの戦場ではなかった。

生き物たちが幸せそうに過ごす、一つの森であった。


広樹は手掛かりのないままに進み、森を探索した。

歩いていると、足に何か硬いものが当たった感触がしたのでそれを拾い上げた。


硬いものの正体は石で、

その石板を掘り起こすと日本語でこんなことが書かれていた。

”英雄の墓”

広樹は気味が悪くなり、辺りを見渡した。


木々がうねり、それが人型に変化した。

その人型から離れると、そこからいろいろな人間が生まれてきた。


「お前は…オズワルドに…黒十字の奴らもか。

それにゲオルグ…教皇も。」

広樹は冷静に彼らを見つめる。


「久しぶりだな、広樹。

聞いたぜ。お前の目的の為に俺たちは殺されたんだってな。

1000年後に世界大戦が起きようが、俺の知ったこっちゃない。

全て、あのお方から聞いたよ。」

教皇が広樹にそう言い、とびかかる。


広樹は持っていた剣で彼を振り払い、周りの者を見る。

「あなたは騙されているの。あの女に。」

そう黒十字の女の方が言う。

広樹は彼女がそう言うと、剣を振り下ろして彼女の方を見た。

「お前のような誘拐犯より、誰かわからぬ女の方が信用できる。

…して、女とは誰だ?」


「それは…きゃあ!」

彼女は、名前を出そうと声を発したが、

地面から生えてきたうねりをあげている黒い触手に捕まり、

彼女は地下深くへと引きずり込まれていった。


「…なるほどな。」

広樹は彼女が言っていたあの女の正体がわかった。

この世界に介入できる人間。そう。フリージアだ。

あの女が俺たちを騙しているというのは全然考えられることだった。


「そういうことか。

お前らは俺があいつに騙されていると。

でも、世界大戦がどうこう言ったのはお前だろ?」

そう言って黒十字の男の方を見る。


「あぁ、そうだな。

世界大戦がはじまるとお前に教えたのはこの俺だ。

確かに救ってほしいのだが…そうじゃない。

俺とあいつでは、目的がまるで違う。」

「…目的?」

広樹は彼を睨み、再度聞き返した。


「あぁ、そうだ。

これ以上言うと俺もあいつと一緒の運命を辿ることになる。

だからこっからは自分で考えてくれ。」

「…お前…」

広樹は彼の脇腹を見る。


彼の脇腹には、無数の棘が刺さっていた。

その棘は、徐々に胸の方へと目指して動いて行った。


「ほらな。もう言うなってお達しが来てる。

だからもう…頑張ってくれ。お前が最後の希望だ。」

彼がそういった瞬間、棘が彼の体を貫いた。


彼の断末魔が森に響き、広樹は思わず耳をふさぐ。

そのまま土に倒れ、彼は絶命した。

「…お前との約束、きっと果たして見せる。

では俺はそろそろ消えるとしよう。」

広樹は来た道を引き返し、現世へと戻ることにした。


「…はっ!?」

広樹が目覚めたときには、柔らかい羽毛の上であった。

「お気づきになられましたか。ここはドルベーの陣地です。

敵軍は追い払いました。ご安心を。」

そう言って兵士は水を持ってくる。

広樹はその水を飲みながら、夢で見た内容を整理することにした。


(取り敢えず、フリージアはなんか企んでる。

それは決まってるのだが…何をたくらんでいるかわからない。

あいつの計画を探るのが俺の今後の目標だろうな。)

広樹は落ち着きながら、今までの思考を整理した。


「敵軍は消滅し、艦船もほとんど沈めたので、

ここから上陸してくることはないでしょう。

しかし問題は大陸側です。」

「…そんなことはわかっている。

第1軍、第2軍とブリトン軍以外を全て神聖帝国へ送れ。

ライン川であいつらを抑え、大陸における勝利をもぎ取るぞ。」

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