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ガリア革命

ゲルマニア国を代表するものが一人もいなくなったため、広樹は独断で戦後処理を行った。

まずライン以西は共和国に割譲。

元バヴァリア王国はエスターライヒに割譲し、残った土地は神聖帝国へと返還された。

広樹はたった13年で、ユーロピアの覇者になりあがったのだ。


「さて、最後の仕事だ。

今年は議会も総督も同時に選挙が行われる。

この選挙、もちろん俺は介入するつもりはない。

だけど可能な限りこれを盛り上げよう。」

広樹は提案すると、和也が現状を説明した。


「えーと、今は保守党が49パーセント、自由党が23パーセント、労働同盟が20パーセントの支持を持っている。

残りは王党派とかだな。」

「…ちょっと待て。労働同盟がそこまでの支持を獲得しているのか?」

労働同盟とは、1104年に結成された組合主義という政治思想の政党である。

自由党内でも急進的自由主義者が過半数を占め、仮にこの二つが組めば保守党に勝てる可能性もあった。

勝利した共和国といえど、1年間続いた戦争で国内は疲弊していた。

国家の総力を挙げた総力戦で国民の不満は溜り、それを利用した労働同盟が支持を伸ばしていったのだ。


「…まずいな。社会主義が成功するわけが無い。

それを経済学的に証明したいが…」

広樹は爪を噛み、机を叩いた。


「ともかく共和国の結合を切り離すわけにはいかない。

社会主義者が勝てばブリトン島、神聖帝国、ラテニア共和国は離反するであろう。

オドラ、ダキアもわからん。

ガリアだって内部分裂を起こしかねない。

仮に労働同盟が勝ったとして、そのなかでもソレル主義、急進的自由主義、国家社会主義…

色々な派閥があるだろう。これは必ず大きな混乱が訪れるぞ…。」


広樹はかなり危惧し、なんとしても出来るだけ合法的なやり方で保守党を勝たせようとしていた。

法に触れるやり方では、間違いなく労働同盟が違法選挙であると騒ぎ出す。

そして最悪の場合革命、という事態になりかねない。

合法的でもその可能性は否定できないが…それでも違法なやり方を行うよりは安全であると踏んでいた。

広樹は応援演説などで何とか保守党を勝たせようとしていた。


10月12日。酷い嵐の日であった。

広樹はその日の朝刊で、選挙の成り行きを見ていた。


「支持率…全体的に労働同盟が優勢!?

支持率70パーセント!?まずいな、なんとしても保守党に勝ってもらわねば…。」

広樹が執務室でうろたえていると、そこに部下がやってきた。

「総督!自由党と労働同盟が合併!

コミューン党と名前を変えましたようです!」

広樹は持っていた筆を投げつける。

「コミューン…急進的自由主義の勝利か。」

頭を抱え、広樹は落ち着くために白湯を飲んだ。


嵐の中、ル・ソレイユの街を歩いていると広樹は演説をしている人間を見つけた。

彼の話の内容に聞き耳を立て、じっと猫のように潜んでいた。

「我々は世界の労働者を解放する使命がある!

まずは邪悪な全ての帝国、王国を破壊する!

ブリトン女王を吊るし、神聖帝国皇帝を焼き殺してスルタンの喉を掻き切る!

共和国の偉大な政体を更に加速させ、コミューンの集合体である我ら同盟が世界を変える!

まずは国内の産業を更に発展させ、国内の貧富の格差をなくすのだ。


国家が産業を管理し、自由な競争を阻害する。

安心したまえ!完全自治が達成させれば国家も消滅する!

我ら組合主義に勝利を!ガリア・コミューン万歳!」

彼がそう言うと、民衆は大歓声を挙げた。

嵐の、それも10年に1回くらいの酷い嵐なのにこれほどまでの人気を集めている。

広樹は作戦を変更し、ブリトン島において勝利することを目標とした。


11月、遂に投票の結果が出た。

コミューンが300議席中264席を確保。

保守党は僅か32議席を確保するのみであり、残りは王党が占めていた。

「…終わった。」

広樹はジェネリアのいる部屋でそう呟く。

「いったいどうしたの?

労働同盟が来たからって、私たちの暮らしが変わるわけではないでしょ?

この後もあなたはブリトン王国摂政なんだし。」


「それはそうだが…

お前とルイは先にブリトン島に行ってくれ。

恐らくアントンが守ってくれるだろう。」

広樹はそう言い残すと、総督選挙の結果を聞いた。


「…コミューン党ソレル派のソレル氏が勝利。

完全にこの国は労働同盟の物となりました。」

ソレル派というのは、組合主義の代表格であるコミューン党の極左主義者であった。

彼らこそ、王の追放を訴えている派閥である。

広樹は足から崩れ落ち、一刻も早くガリアを脱することを決した。

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