幕間 神魔裁判所にて
――神魔裁判所内一室。
いくつもの激しい怒号と落ち着いた声音が、そこに混ざっていた。
「二年! 二年もだぞ! たかが脱走者に何を手こずっている!」
「そうだ! この無能めが!」
「ここで死をもって償え!」
顔を怒りで歪ませる神々。その矛先は一切動じる事のない一人の天使だった。
「どうか気をお静めください」
「誰のせいだと思っとる!」
「我々は尽力しております。もうしばらくお時間のほどをいただけますでしょうか」
「貴様ッ、いつもそればかりではないか! クソの役にも立たん雑兵共が! だから私は天界に来る前の脱走者を殺せと言っとるではないか!」
神が言う案は、天界に来る前、つまり第一の生を全うしている彼らを殺す。元を絶ってしまえばいいというものだ。天使はすぐに反論をする。
「その段階では彼らは罪を犯していません。天界から逃げた、という罪を背負う者を捕まえなければならないのです」
「ぐ……ヌゥ……」
「それに」
天使はもう一言付け足した。
「男はいいですが……女は少々難しいかと」
「……それもそうだな」
神は気もそぞろといった様子で落ち着きを取り戻していく。
「お任せください。計画は順調に進んでおります。必ず捕らえてみせましょう」
「……ふん」
では、と天使は神へ頭を下げた。
その口元に卑しい笑みを引き連れて。