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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

今日から学校と仕事、始まります。②莞

とにかく、行きたくない

作者: 孤独

「あー、やっちまったようだな……」


他人のミスにニヤニヤしている木下も、今回ばかりは少し同情した顔で新人さんを慰める。

配達のミス……(?)ではあるが、まぁ、異常な反応をされた後。


「やべぇだろ。あいつの家」

「あ、はい」


そんな理由で、女性の声で配達員を代えろだの、ゴミだの、役立たずだの、死ねだの。

一体そこまでやるミスってなんなんだ?


「不在票を入れただけであんな反応するんすか?」

「ぶっちゃけ、他の会社使ってくれよな。まー、他の会社はあの客の荷物は引き受けねぇらしいけど」


いや、ホントね。そんなんでね。1時間半以上も電話をされるのは、よほど暇なんだろう。


「クレーマーの登竜門だな。でも、上位クラス」


超知りたくない。

知りたくはないが、長年。その家とやり取りをしている者達は知っているのだ。

だからこそ、他の会社を使ってくれか……。


「今後、気をつければいいよ。あの客は電話では怒るけど、対面で会ったときはまったく怒らないし。出禁されてる木下さんを行かせても、反応しないからね」

「ただマウントをとりてぇだけなんだよ。あの客はな。だよなー、さね

「ええ。家族揃って、そーみたいですからね」


めんどくせー客の事をだべり出すと、不満が一気に溢れてくるものだ。

実際、全員。よくクレームを挙げられるため、ここにいる全員が誰もその家に行きたくない。仕事で行かなきゃいけないのを、向こうにも伝えたいぐらいだ。

っていうか、言っている奴もいる。


「お、例の客のクレームは終わった?」

「くだらねぇことでよく喋る奴だよな。あのババア」


木下と実、新人さんが喋っているところに。同じ仕事をする、山口と矢木も合流してきた。

全員が全員。意味不明過ぎる理由で、クレームを受けているのだから愚痴が弾む。

新人さんは興味本位でその客のご家庭をみんなに聞いてみた。詳しいことは誰も知らないが、大まかな推理はみんなできているらしい。


「3人家族だよな。いつも荷物を頼んでるのは息子。電話しやがるのは母親だ」

「妻じゃねぇよな?もう1人は、母親の父親……」

「親父、娘、孫の3人家族だ。これは間違いねぇよ」


別に本人から聞いているわけではないが、荷物を渡す際に出てくる人物からそーいう話しになる。

8割は娘さん、1割は親父さん、もう1割が……不在になるのだ。

その理由はひとまずおいておき、


「荷物の大半が、ドルオタグッズである事と、アニメのキャラクターグッズばっかりだもんな」

「しかも、男が視るもんばっか。AK○とか乃木○とか。アニメはレール○○とか○○○とか、間違いなく、娘が頼んでるわけじゃねぇーよ。孫名義だしな」

「3,4割は○○してると思うよ。そーいうイケないとは言わないけど、ロクでもないよね」


みんなが嫌がっているのは、その娘さんと孫。親父は意外にも普通……というより、我関せずか。


「まず、やべぇなーって思うのさ。娘が一日中、ずーっと家にいるんだぜ」

「買い物をたまにしてるくらいだよな。スーパーから帰ってきた時、偶然会った時ある」

「あいつは○○○○○○○○○○○をしているのは、確定。ついでに孫もそう。周囲の隣人もそう言ってるし、生活見たらモロバレだけどな」

「うわー、やっぱりやっちゃってますか。じゃなきゃ、ありえねぇよなー」


矢木、凄く嫌な思いがあるから言ってはいけない事を平然と言っていた。そして、みんなもそうだよなって同意をしている。ホントに同じ人達が可哀想だ。その上で木下は


「俺思うにね、親父の年金も使ってるよ。あの2人」

「えー?そこまでするぅ?」

「あんだけ毎日、当たり前のように荷物が届くんだぜ。金持ちならともかく、貧乏そうな家に住んでるんだぜ。隣人トラブルも多いんだぞ。身内でやっててもおかしくねぇよ」


いやいやいや、そこまでしないでしょ。……という声がまったく挙がらないのは、考えられるって事。

そして、年金の話しが出たところで。さねも火の玉ストレートを投げてしまう。


「私。親父さんがタクシーを持ってるの知ってる。別のところに止めてるのだけど」

「えーーー」

「毎日じゃないけど、タクシーが止まってる頻度はそんなに高くないね。今も働いてるはずだよ」

「じゃあ、やっぱり親父は働いているんだな。たまにしか会わないからそうだと思ってたんだ」

「見た目、80代だぞ!あの親父!働いている事に怒りはしねぇけど……」

「娘さん、たぶん50ぐらいでしょ?孫はいくつ?」

「20?でも、10年以上前からこんな事やってるから、30は超えてても辻褄合うよねー」


情報を出し合って、改めて


「「「「やべぇー家だよな~~……」」」」


なんなんだあの家は……。そういう答えしか出て来ないのだが。そこでさらに山口と矢木は証言する。


「夜そこ通るとヤバイよね。たまに男の声が……あれ、孫でしょ?めっちゃ怒ってるよね」

「そう!孫!なんで孫が一番ヤバイかって分かるか?」

「だいたい分かるけど、矢木が言えよ」

「あいつも家にずーっといるんだよ。でも、なんで!娘がいつも出てくるか分かる?」

「え?……孫に会った事ある奴なんて、まったくいないだろ」

「孫はいつも家にいるんだよ!玄関の靴を見てみ!娘も親父も履かないような、綺麗な靴が一足いつも並べられてる。不在の時、電気のメーターを見てみろ。娘が出てきた時と使用具合はほぼ同じだ。で、たまたまなんだけど。玄関先からトイレ見えるじゃん。そいつがトイレから出てきたタイミングで荷物を渡せた時あったのよ。髪や体が汚れてるわ、体つきも痩せてるわ、目なんか正気がねぇもん。孫の方が親父より不健康って感じ。そんで俺に孫を見られた娘さんが必死こいてドア閉めるんだぜ。荷物を受け取らず」


…………。


「孫をとにかくね。人に見せたくないのよ」

「確かに電話するのは、娘さんだけなんだよな」

「孫の荷物なのに、ちょっと汚れてるだけですぐクレームを入れるのは娘だもんな。その場で謝罪して渡した時、特に何も言わないのに。そのあとで電話で言ってくるの不思議だよな」

「あの家って隣の家とあんまり作りが大差ねぇらしいのよ。孫はおそらく、部屋に引き篭もってる。俺達からじゃ見えないところの部屋にな」

「ホントにやべぇよな~~。なんなんだありゃ?」


感じ悪いのがモロに出てくる。

そんな話しが盛り上がったところで……


「で、この不在で持ち戻った荷物。誰が謝罪込みで配達しにいく?」

「俺は絶対に行かない!」

「俺も行かない!!」

「行くわけねぇだろうが!!」

「では、くじ引きで決めましょう!!」


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