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悩み

俺、日本人の母とアメリカ人の父のハーフ・狼谷孝彦かみや たかひこには成績優秀でスポーツ万能な双子の兄・雅人まさとがいる。

俺と兄は顔こそ酷似しているが性格、体格などはまるで違う。

兄:父親譲りの陽気・剽軽者、大食漢、195cm/220kgの筋肉の主張が激しいダイナマイトマッチョボディ

俺:日本人然とした体型、陰気、サブカルチャー好き努力してやっと兄貴と同じ学力、人と話すと大抵どもる。

コミュ症でインキャな俺にはこの兄との大きな悩みの種があるのだ。

「おはよう、タカぁ〜!」

「……ぅおっ!」

まず手始めに朝っぱらから雅人の巨体が俺にのしかかる。

「おっ、起きた♪」

「……マサ!それやめろって言ったよね!ただでさえ身体デカいんだからのしかかんなよ、圧死させる気⁈」

俺の激昂も焼け石に水、またも懲りずに「そんな冷たいこと言うなよ〜、スキンシップだろ?」と手を回してくる。

「そうだけどさぁ……重い……」

俺には彼が悪ふざけでやってることではないこと、生粋の愛からくるカントリー・スキンシップだということは重々分かってるから強く言えない…でもその愛は日本人の脳みそ持ってる俺には糖分過多なのだ。ガチでカロリー換算できるんなら俺はとっくにカビ○ンみたくなってるに違いなかった。

それでも俺はぶつくさ言いながらも兄が傷つかないように彼の岩みたいな腕で叩かれている背中の痛みを堪えるしかなかった。

朝食

「おはよう!My little sweeties.……」

と父が俺たちの頬にキスをする。

配膳されてる料理を見ると半分はフライドチキンとポテトとトーストとちょっとしたサラダ、もう半分は白飯一膳に焼鮭、味噌汁。

前者は父と兄、後者は母と俺の食事である。

父は、所謂アメリカン・ファットで縦にも横にもデカい。その上五十路にも関わらず若者のように食いまくる。青年期はアメフトのラガーマンだったらしいがこれが今の兄の食事の際のルーツになっている。

一方、俺と母がそんな膨大な肉を食べれるはずもなく和食で済ませている。つまり我が家の朝食は日米に完全に分断されていることになる……作り分けてくれている母には敬服の思いだ。

「母さんの料理はいつ食っても美味いなぁ……!」

「当たり前だろ?オレの選んだエンジェルなんだからな!……はぐっ!」

余計だか、父は普段会話してて不便がないほど日本語が流暢だ。……日本のアニメからそんなに学べるもんなのか?それと胃と同じで語学の吸収量も凄まじいのか……学校のARTの先生と課外で話すときの方が英語の率が高いのに……多分頑張ったんだな。

「まぁたマッチョとデブがなんか言ってるよ……」

「まぁ、いいじゃない、パパは自分の稼いだ沢山のお金でたくさん食べてるんだから。雅人に関してはパパみたいな身体にならなければ全然いいし、イケメンな双子の身体が私の料理で育ってくれるなら本望よ。」

「……」

今伴侶に対して毒吐いてたけど……

父も母も家族大好きでそれぞれ努力次第で年収億は下らない優良企業で働いてくれているので多少の散財は屁でもないし、心配して備蓄してるからそれなりの金はある。……極端に言うと、パンがないならお菓子を食べればいいじゃない系の家である。そのおかげで、兄の筋肉と父の腹はぐんぐん成長している。

当事者である2人に幸福にも母の声は聞こえないらしく呑気に「「おかわり!」」と口を揃えていた。

それから4人は別れてそれぞれの【仕事】へと向かっていった。

「おはよう、みんなぁ!」

「マサ……煩い……」

兄が鶴の一声?をかけると男女問わず数人が兄の周りを取り囲んだ。

ある者は差し入れ、ある者は講師の誘い、またある者は遊びの約束……

まるでアイドルにでも群がっているかのようなこの状況の中俺は匍匐前進で地を這って抜け出す。

女子からすれば端正な顔立ちの男らしい漢、男子からすればギャグマシーン……その上学年上位ときたら妬みもせずにみんなが憧れるのも当然だった。

「はぁ……」

「孝彦、今日も大変だな。全く羨ましい兄弟だぜ……」

「なんだ塩仲、他人事だからって……」

軽く息切れを起こす俺の肩を摩り声をかけたのは塩仲光輝。ちょくちょく相談に乗ってくれてるまあまあいい奴だ。

「聞けよ、女子たちガチで30分前から入り待ちしてたんだぜ……クッキーがなんやらか持ってさ。凝りねぇよなぁ、こんな近くに【伴侶】がいるってのに。」

「伴侶ってなんだよ!……気持ち悪い。俺もアイツのこと嫌いじゃないけどそう言うのじゃねぇから!」

「……んだよ、妬いてんのか?お前だって色々貢いでもらってんじゃねぇか。……ジョーダンだよジョーダンw」

彼が言うように、俺も非モテというわけでもなかったけど揉みくちゃになるほどじゃない。……それに、スキンシップに手を焼いてるくらいなのに嫉妬なんて……本当塩仲は過大化しすぎなんだよ。

日中もマサのスキンシップと構ってコールは健在だった。背中バンバン、頭わしゃわしゃ、『ノート見して』……俺はその全てで折れていた。

しかも、こんなことも。

「……いでっ⁈」

後ろから何かが飛んできたのだ。掌のものを見るとボタンだった。後ろを見るとはだけたシャツのまま申し訳なさそうに項垂れるマサがいた。

「マサぁぁぁ!」

「本っとにごめん!……怪我してねぇか?」

「お前またか!それXXLだよな⁈……この筋肉デブ!」

「……ごめん……」

マサは筋繊維が腫れる体質らしくムキムキではあるもののぱっと見は重度肥満のそれだった……まるで寸胴鍋みたいな。

そのせいでいくらサイズを変えてもパツパツでボタンをぶっ飛ばす。それが目がけるのは大抵番号順の1つ前の俺の後頭部。……俺はその度にキレていた。

昼休み。流石に午前中は言いすぎたかと思って誤りに席に行くと見るなりわかりやすくしょげた。

あのなぁ……こっちだって謝りに来たのにそんな深刻そうにすんなよ……

「あの……さっきは筋肉デブなんて言って悪かったよ。あれば事故だもんな……それなのに、俺…怒鳴ってばっかで……ごめん……」

「許して……くれるのか……?」

「うん……一緒にメシ食おうぜ。」

それを聴くとSEが勝手に流れそうになるくらいに急に顔色が明るくなった。

「食う!」

(可愛いな……マサの癖に……)

放課後、マサはバスケ部の部活のなので帰宅部の俺はさっさと帰宅した。

「ただいま……」

「どうしたの?いつも以上に浮かない顔して……」

そこには、こんな時間にいるわけもない母がいた。

「かっ、母さん⁈……仕事は?」

「無理言って返してもらっちゃった!……孝彦が悩んでるの助けてあげたくて。」

「別に悩みなんて、……!」

突如学校でのことが蘇る。

「実は……また性懲りもなくボタンのことで喧嘩しちゃって俺がブチギレたんだ。……仲直りはしたけど……スキンシップのことも普段のことも、愛が重くて嫌になっちゃう、ストレスなんだよね……マサのこと嫌いじゃないのに怒っちゃう自分が最低だなって思ってた。」

無意識のうちに俺は泣き崩れていた。

「そっかそっか……孝彦は優しいもんね。……雅人が傷つかないようにずっと独りで抱え込んでてまた爆発したんだよね……よく頑張った!」

そう言って抱き寄せた……

ある程度収まった後、母にリビングに呼び出された。

「ねぇ……孝彦は雅人嫌い?」

「嫌いじゃない……好きだよ、ちゃんと……」

「じゃあなんで怒ったの?」

「スキンシップがウザい。……俺、じゃれつくの苦手だから。乗り気じゃない時にやられるとムカつく。

「実はね、ママもパパと出会った時は孝彦と全く同じだった。ラブコールが濃くて無理だったの。……きっと孝彦は私に、雅人はパパに似たんだなぁって今日も思った。」

「じゃあなんで付き合えたの……?」

「バカになったの。」

「え?」

「色々考えるのやめた。『重い……どうしよう』とか『どうやって諦めてもらおう』とか考えてると疲れて辛く当たってしまう。そうじゃない?」

「うん。」

「好きだけど、じゃなくて好きって気持ち自体を念頭に置いたら2人の暴食もどうでも良くなってきたの。だから、追っ払い方を考えるんじゃなくて孝彦風に言うと「マサに付き合ってやっても減るもんじゃないしな」って最初に思ってから決めてみたら?むしろ乗ってやるんだから俺の気を楽にさせろよぐらいで臨むの。」

なんか急に合点がいってしまった。視点を変えろではなく上から目線で捉えるという言い方がすんなり入ってきた。

「あの人達は構ってくれたらなんでもいい人だからなんかくれって言ったらたんまりくれるかもよ〜」

「気楽に構えろってことね。」

「そういうこと。」

「ありがとう、母さん。……それでもう一個相談なんだけど……」

すごく気になったので、塩仲に言われたことを聞いてみた。すると……

「いいこと言う子じゃないの〜!なっちゃいなさいよ、そのぐらいイチャイチャした方が麻痺してきて楽しくなってくると思う!」

「はぁ⁈」

……母も、大抵は普通の女性だが時たま頭のネジが外れて斜め上の提案をする不思議ちゃんであったことを今更思い出した。

でも、ぶっ飛んでみようかな……もう十分【自分】は頑張ったし。


「たでーまぁ……」

18時頃マサが帰ってきた。

「お、タカ!お出迎えか?……ありがとな!」

「あの……さ、今日からは勉強に支障出ないぐらいなら一緒に遊んだり、スキンシップしてやってもいいよ……?……ていうか、そうしてくださいっ!」

俺は柄にもなく家族に対して初めて照れて吃ってしまった。

「えっ、マジ⁈これ夢じゃないよね?嬉しすぎるっ!……っ⁈

俺は多幸感で浮き足立っているマサの不意をついて抱きついた、いつもの俺なら全くしないことだ。

「タカ…何しっ……」

「何って、ずっとこうして欲しかったんだろ?わかりやすい筋肉デブめ……」

「タカぁ〜!それだよ、それずっと待ってたんだよ俺ぇ〜!」

立て続けに夢が叶いすぎたのか、今度はマサが泣き崩れた。

「おいおい……泣くほど嬉しいのかよ、マサ?」

「ゔん、ずっげぇゔれじい……!」

「……てか、いい加減泣き止めよ、うっせぇなぁ!」


「おやおやハニー、タカがいきなりポジティブになったねぇ……何か吹き込んだ?」

「ナイショ♪」

これからは今まで煙たがってた分いっぱいマサを甘やかしてやろうと思った。塩仲の言ったことが現実になりそうで戦慄も同時にしたが……

まぁ、何はともあれ俺達はこれを機にさらに絆と団欒を深めていくだろうことは容易に確信できた。


……今までちゃんと言えなかったけど、家族として誰よりも愛してるよ、雅人!……



狼谷孝彦

身長170cm

体重63kg

趣味ネットサーフィン・作曲・昼寝

好物ソーセージ(皮付き)

イメージCV下野紘

都内の私立高校に通う日米のハーフ、双子の兄・雅人がいる。

普段から雅人の重い愛からくる怒涛のスキンシップ連打に耐えているが嫌っているわけではない。

学校では兄と共に学業トップに君臨していてファンもいるが、兄よりは下火である。

家族から度々繰り出される突飛な発言にキレのあるツッコミを返しているが静かに過ごしたい彼からしたらいい迷惑である。

性格は「合法ニート」と揶揄されるほどの怠け性で、義務が終わったらすぐ自室に引きこもってネットにかじりつきながら趣味をするのがストレス解消になるのだそう。口下手でツンデレなところもあり、初対面でなくとも自分の本心を伝えることにはとてつもなく不器用だが他人を第一に考えている。言わないだけで最近はブラコン気味。

狼谷雅人

身長195cm

体重220kg

趣味ゲーム・食べ歩き・漫画製作・孝彦と遊ぶ

好物ジャンクフード・とにかくボリューミーでハイカロリーなもの

イメージCV中村悠一

孝彦の双子の兄、家族大好きだが重度のブラコン。

いつも孝彦と触れ合いたくて色々試すものの避けられ気味だったが、最近は孝彦の態度が軟化したのでチャンスだと思っている。

二度見するほどのアメリカンな巨体と巨大な筋肉がトレードマークで男女問わずファンがいて揉みくちゃになるほど。

しかし、鍛えすぎた筋肉の弊害はあるようで、見てくれ自体は重度肥満の巨漢そのもの(孝彦曰く筋肉デブ)で太すぎて触らないと筋肉だとはわからない。その為いくら工夫しても下っ腹が見えて下もパツパツである。少し力むとボタンが飛ぶ。

性格はアメリカンの血が濃いのかフレンドリーでコメディアン気質。大抵のことは笑って流す寛大さも持ち合わせる。

巨漢故・バスケ部で身体も酷使するので食事の量も尋常ではなく常に食欲と葛藤している。(本人曰く許されたら10分間隔で何か口にしてるはずらしい)さらにアメリカ人の父も相当な巨漢のため感化は尚のことである。

実はこの突然変異は高校からで、以前は孝彦の方が大きく見えるほど華奢だった。

中1の後半〜卒業までは陰湿ないじめの影響で卑屈で怠惰な性格が染みつき部屋から出ずに勉強しているか暴食しているかの二択で、ただの巨漢だったが孝彦に繰り返し説得され、求められていることに感涙した彼は弟のためだけに高校から復帰しようと(食事制限は無理なので)筋トレ・プロテイン漬けを開始し、現在の彼に至る。身体が大きくなり自分じゃなくなる感覚が癖になり中学までの自分を「殺した」と豪語できるまでに変貌を遂げた。

しかし、根付いた惰性と古傷はあるのか、家では基本的孝彦と同じようにぐうたらしている。

小さい頃から絵が好きだった彼は最近になって漫画家として密かに活動を始めて、孝彦が愛読している日常系漫画は高い人気を誇っているために印税諸々含めて狼谷家の高額の年収の一部になっている。……彼は所謂全ての才を与えられたマルチタスクなのだ。


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