俺のパーティメンバー、俺以外SSSランクスキル持ちだった件〜勇者なのに追放されそう〜
俺、レイルが勇者として旅をし始めてもう半年になる。魔王を倒せと王から言われ、俺は仲間を集めて旅に出た。
そんな俺には立派な仲間ができた。
「なぁレイル。次の街行ったらパフパフしてきてもいいか? いいよな?」
そんな風に訊いてくるこの男はライドウ。戦士として俺のパーティにいる優秀な男だ。
いつもチャラチャラしてて頼りなさそうに見えるが、いざとなったらやる男だ。初めての仲間で話しやすい奴だし俺の一番の仲間だ。
そんなライドウのスキルは『オールシールド』と呼ばれるSSSランクスキルだ。
この世界の人間は皆スキルを持つ。そのスキルにも格付けがあって、D〜Aまでとされている。だがそれより上が実際にはある。それがS,SS,SSSスキルの3つだ。これはとてつもない才能と言われている。1人で一国を落とせる力だとも。
事実、ライドウのオールシールドはとんでもないものだ。何せ能力は、『相手から受けた味方のダメージを全て自分が肩代わりする』というものだ。つまりライドウが倒れない限り俺たちは無傷で戦えるということになる。
加えてライドウはそこしれぬ体力と耐久力を持っているため、ちょっとのダメージなどものともしない。
「ライドウ殿、お主この前の街でも娼館に行ってたではないか」
そうライドウに言ったのはメルン。錬金術師の女だ。彼女は冒険に必要な様々な道具を作り出してくれる万能だ。 ちなみにエルフ族。
メルンのスキルはSSSランクスキル、『オールフュージョン』。これは素材と完成イメージさえあれば工程などを全て無視して完成品を作ることができるというとんでもスキルだ。
言ってしまえば彼女がいれば伝説の武器だろうが最高級ポーションだろうがなんでも作れる。
「うるせぇよメルン。どうせお前だって興味あるんだろ?」
「わ、私はそのようなものに興味はない」
「興味あるのバレバレじゃねえか、ひゃはは。なぁソフィアちゃんもそう思うよな?」
「私に気持ち悪い話をしないでください!」
ライドウに話を振られたのがソフィア。賢者の女の子だ。彼女は主に攻撃魔法と防御魔法の担当だ。
彼女のSSSランクスキルは『オールマジック』。これは全ての魔法が習得できるという神をも恐れぬスキルである。
事実、彼女は既に現存するほとんどの魔法を覚えている。この前覚えた古代魔法は威力が強すぎて山が1つ消し飛んだ。
「冷たいねぇソフィアちゃん」
「勇者様もライドウさんに何か言ってください!」
「な、何かって言われてもライドウがエロいのは前からだし……」
「だよなー! 流石レイルは俺のことわかってるぜ」
「全く、レイル殿も少し怒っていただかないと……」
メルンがプンスカ怒っている。
そんなこと言われても俺がみんなに怒るほど実力ないしな……。
そう、俺のスキルはランクA『勇者』というものだ。勇者はまぁそこそこの身体能力と魔法能力が手に入る。あとはまぁ魔族に強い耐性を持つ聖属性か。これでも充分強いはずなのだが、なにぶん俺以外はみんなSSS。
見たとおりパーティで俺だけランクがAなのだ。最初にライドウと出会った時は驚いたものだった。まさかこの世にSSSランクが実在してたなんて、と。
ライドウは威張ることなく俺とパーティを組んでくれた。俺はその時こいつがいれば魔王討伐もきっと叶うと確信した。
予想外だったのはその後も錬金術師、賢者とSSSランクスキル持ちが2人も加入したことだ。こんな事は歴史上でも類を見ない。
だって勇者がパーティで一番弱いんだぜ? そんなのありえなくないか?
「む……? ソフィア殿、感知魔法をお願いしたい」
「魔物ですか? わかりました。『サーチ』!」
俺が考え事をしていると、何かを感じたらしいメルンがソフィアに指示を出していた。
「来てますね! 魔物です! 後ろから来ます!」
ソフィアが言った途端、後ろから巨大な蛇の魔物が現れた。
そして一瞬のうちにそいつは紫色の液体を辺り一面に吐き出した。
「任せろぉ! 『オールシールド』!」
ライドウがすぐさまスキルを発動した。すると俺たちに液体はかかるものの何も起きる事はなく、ライドウの装備から白い煙が出て、彼の肌も紫色に変色していた。
「毒性のある液体か。耐性のあるライドウ殿でもこの速さの侵食、強いな。『オールフュージョン』」
メルンは何か薬品を懐から取り出し、特製の釜に入れた。すると一瞬で蓋が揺れ始め、蓋を取り外すと、中には瓶に液体が入ったものができていた。
それをライドウに投げて渡す。
「ライドウ殿、解毒薬だ!」
「助かったぜぇ!」
ライドウがそれを飲むと、紫色に変色した肌は徐々に回復していった。
そしてライドウが時間を稼いでいる間に、賢者のソフィアは詠唱をしていた。
「――それ故に陽はまた登る! みなさん、準備が出来ました!」
「よっしゃあかませえ!」
「『デスファイア』!」
ソフィアの放った黒い炎は大蛇を包み、焼き尽くそうとしていた。
だがなかなか奴は息絶えない。
「よし、レイル!」
「勇者殿!」
「勇者様!」
パーティメンバーが口を揃えて俺の名を呼ぶ。俺は剣を携え。走って動けぬ魔物の頭を切り裂いた。
「ぐ、ぐおおおおおおお!」
魔物は断末魔をあげて息絶えた。
そう、俺の聖属性攻撃は魔物にはよく効く。さっきみたいに体力がかなりある魔物でも、弱っている時に俺が攻撃すると、だいたい死ぬ。
けどそれは弱っている時であり、普通はこんなに楽に倒せない。
「いやぁ、急に魔物が現れてびっくりしたなぁ」
「本当、よく気づきましたねメルンさん」
「これでも私はエルフだからね。耳がいい」
「それにしてもソフィアちゃんの攻撃は相変わらずえげつないなぁ。なぁレイルもそう思うだろ?」
ライドウが俺にそう尋ねてきた。だけど俺は素直に返せなかった。
「どうしたレイル。つーかお前今日口数少なねぇ? もしかして男の子の日かぁ?」
「下品だぞライドウ殿!」
「そう怒んなよメルン。んでどうしたんだよレイル」
ライドウが少し心配して聞いてきてるのがわかる。だから俺は今まで言わなかった事を言うことにした。
「あのさ、このパーティ………俺いらなくね?」
言ってしまった。みんなぽかんとした顔をしている。
やっぱりみんな呆れるよな。こういうの本人が言いだすのが一番白けるし。
と思ってるとライドウが急に笑い始めた。
「だーはっはっは! 何言ってんだレイル、相変わらず面白えなお前。ひひひ」
「わ、笑い事じゃないんだよライドウ。だってそうだろ? さっきの戦闘だって俺何も役立ってないんだぞ!?」
「はっはっは、なんだよそんなことかよ」
「そ、そんなことってなんだよ! 俺はいつも怖かったんだ。いつか俺このパーティお払い箱になるんじゃないかって。追放されるんじゃないかってさ。だって俺いらねーじゃん!」
「どこのパーティに勇者を追放する奴がいるというのだ」
メルンも呆れた顔で俺を見ているが俺は必死だ。
「じ、じゃあ俺の必要価値ってなんだよ! お前らで全部足りるじゃん!」
「なんだよ必要価値って。そもそも間違ってるぜレイル。お前が俺にじゃない。俺がお前について行ってるんだ。クビにされるなら俺の方だろ?」
「そ、そういう事じゃなくて、理由をだな――」
「俺がお前についていきてえからじゃダメなのか?」
「ラ、ライドウ……」
珍しく真剣なライドウの目。俺は思わず泣きそうになってしまった。
「そうだぞ勇者殿。私もあなたに惹かれ、パーティに入ったのだ。そんなあなたをなぜ追放する理由があろうか?」
「メルンも……」
「そうですよっ。そもそも私は勇者様を好き――じゃなくて、尊敬してパーティに入ったんですから、何も心配なんていらないですよっ!」
「ソフィア……」
感激で涙が溢れてくるのを必死で手で拭う。するとライドウが俺の頭に手を乗せてきた。
「そういう事だ、相棒。俺たちはみんなお前に救われて付いてきてる。お前がいなきゃ俺たちはダメなんだよ、わかったか?」
「う、うん……」
「ったく、勇者なんだから泣き虫は治せよなぁ」
呆れた声でライドウがそう言った。
俺が勘違いしていた。やっぱりみんなは俺の大切な仲間、友達だ。そんな奴らを一瞬でも疑った俺が馬鹿だったんだ。
これからは、俺も自信を持って旅を続けよう!
―――
――
―
別の日、俺たちは再び魔物に襲われていた。
「『ライトニング』!」
ソフィアの電撃が魔物に突き刺さる。
「ソフィア殿、マジックポーションだ! 魔力の回復を!」
「ありがとうございます!」
「よそ見すんな! いやまぁよそ見してても俺が食らうからいいんだけどよ!」
敵の攻撃をライドウが防いでいる。
「な、なぁみんな、俺のやる事ないか?」
俺がそう聞くと、少し間が置いて、一斉に答えが返ってくる。
「「「待機で」」」
なるほど待機かぁ。ふむふむなるほどなぁ。
「やっぱり俺、いらなくね?」
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