冒険者の日常2
おしおき
12
いつになって訪れない痛みに疑問を感じて目を開け振り返ると男が振りかぶった体勢のまま誰かに後ろか
ら取り押さえられそして振りかぶった腕を後ろに捻り上げると「おいお前が相手にしていたのは俺だよな
関係ない町の住人に手え出してただで済むと思っているのか?」と仁が男に声を掛けそのまま地面に叩き
付ける痛みにうめく男を押さえつけながら残りの男たちに目を向けると「この町で仕事をしたけりゃすれ
ばいいだが今のようにこの町の住人ならびに俺の友人に悪さをするようなら容赦しないギルドからも言わ
れてる悪さをするやつを見つけたら狩れと意味は言わなくてもわかるよな」と男達に申し渡し開放するそ
の場はこれで収まったかに見えたのだが・・・
数日後ファルカの町周辺部
ここは仁がこの世界に来て最初に到着した場所である今日はここでウルの鍛錬をするとギルドには申告し
ておいた一応はだがそれだけで終わるとは思っていなかったなぜならば昨日から下手くそな尾行者がいる
のに気づいたからであるつまり誘い出すことにしたのである大勢で後からついてくる馬鹿の顔を見てやろ
うとあっさりと姿を隠すと先日のワンハンドレッドとその仲間と思しき男たちが合せて20名程が現れる
そして「あいつ消えやがった探せこの近くにきっといるはずだ俺達に恥を掻かせた野郎目に物見せてや
る」とワンハンドレッドの中で一番体躯の大きい男がいきり立つ
「報酬は約束どうり貰えるんだよなハンベル・バーガーさんよやばい橋渡るんだ」と仲間の男がさっきの
男に尋ねると「ああ報酬は必ず払うことが済んだらなまったくこんな辺境の町でくすぶってる奴にうちの
ノリカラ・ベントールが恥を掻かされるなんてあっちゃならいんだ」と怒鳴り声を上げる笑い出すのを必
死にこらえながら男たちの後ろに現ると仁は「俺に何かようかい庶民のランチメニューさんよ」と言うと
意味がわからないハンベルは首をかしげながら「なんだそりゃ?」と問い返すと「いやね俺の故郷じゃ庶
民ランチメニューの定番がハンバーガーとノリカラ弁当なんだ、だから庶民のランチメニューいっそのこ
とパーティー名ランチボックス変えたらどうだだめかお前らじゃまずくて猫またぎだな」とそこまで言っ
たところでハンバーガーが激高して「完全になめているよなお前、たった一人で20人の相手がたやすく
できると思うなよ」と怒鳴るが仁は男達に冷たい視線を向けると「お前達こそたった二十人程度の頭数で
オークキングの単独討伐者をなめているのか特別に全力で相手してやるよ」というが早いか一番近い男に
近づき男が獲物を取り出す間も与えずにパンチ一発相手を失神させると「ひとーつ」とほかの男達にわざ
と聞こえるように声を掛けると瞬時にその場を離れる見失った男たちの外側から文字どうり狩って行く仁
を見失うたびに一人また一人と確実に人数が減っていくしまいには状況に恐怖した男がその場から逃れよ
うとするが離れたところから男の悲鳴が聞こえるまさに一方的な暴力そして恐怖だったあれだけいた男達
も気づけば残るはノリカラ弁当とハンバーガーの二人のみ後はみな地面に倒れているそんな二人の前に息
も乱さず汗ひとつ掻いていない仁が現れると「さてあとはお前ら二人だけだどうする降伏するか?」と尋
ねるがにやりと笑うと「俺の仲間がここにいるだけだと思ったかばーか今頃はお前同様俺たちに恥を掻か
せた連中がどうなっているかな」とハンバーガーが言うのだが「それはこいつ等の事か?」とリンダたち
がロープで縛り上げた男たちを連れて現れる男達はみな抵抗したらしく体のあちこちに怪我をしている
「この程度の連中では相手にもならんよ、この町の冒険者をなめてもらっては困る」とリンダは肩をすく
める
唖然とするハンバーガーだったが思いついたようににやりと笑うと「俺達の師匠がだれか知っているのか
お前ら」と尋ねるので「知らんな誰だ知り合いだったら躾けてもらいたいところだ」と仁が答えると「俺
達の師匠は現、騎師団長ザイクノス様だ」
そう言ってにやりと笑うハンバーガーの前で仁はため息をつく予想と違う反応に戸惑うハンバーガーに仁
は「本当にあのおっさんの弟子なんだな嘘じゃないんだな」と問い返すが「現騎士団長の師匠に失礼だぞ
お前」と返答する再びため息をつく仁「おっさんだそうなんだがどう責任を取るつもりなのかな?」と後
ろから近づく男に声を掛けると鎧を鳴らしながらザイクノスが姿を現すそして開口一番「お前ら何をしと
るかー」と怒鳴り声を上げるといかりで真っ赤な顔を仁に向け頭を下げると「すまん仁殿弟子が迷惑をか
けたきつく躾けるのでどうかこいつらを許してやってくれ頼む」と謝る師匠のその姿に戸惑うハンバー
ガーに「お前も頭を下げるんだ今ここで死にたくはないだろう」とザイクノスの言葉にはっとするハン
バーガー達そうである自分たちがそうであったように勝者である仁には自分たちの生殺与奪の権利が有る
よくても奴隷悪くすればこの場で命を奪われる今までは自分たちが強者だったので忘れていたのだ自分も
強者に負ければ奪われる可能性が在ることを途端に先ほどの恐怖とは違ういわば首元に仁の命令を待つ死
神の鎌が突きつけられているようにまさに死の恐怖耐え切れずにまずノリカラ・ベントールが地面に頭を
つけ命乞いを始める「御願いします死にたくない死にたくないんです」と必死に助けを求めるその姿に固
まってしまうハンベル・バーガー、その彼に仁が「君はどうする死ぬか?」と声を掛けると「死にたくな
いなんでだ俺たちは冒険者として名を上げて師匠の弟子として恥ずかしくない実績を得て騎士団に入隊す
るそれがすぐ目の前まで来ているのにここで死にたくないお願いしますどうかどうか命だけは許してくだ
さい」とそこまで言って泣き出すその姿にザイクノスもさらに頼む「今わ不肖の弟子だが騎士団に入った
らわしじきじきに鍛え直すそれでももし改まらぬ時はわしの手で介錯するのでどうか今しばらくの猶予を
こいつらに与えてやってくれ頼む」この言葉に仁も「わかりました彼ら5人の命は今はまだとらない事に
しますただしこれは猶予ですこの五人が本当に騎士団に入れるかがまず第一の関門そして騎士として町場
に出られるかが第二の関門ですかね民の護民官である、騎士に今の彼らになれると思いますかザイクノス
様」と仁が問いかけると「必ずとはいえん騎士とはあくまで称号であり王の剣であり民の護民官であるか
ら名乗れる称号なのだと彼らには厳しく指導してきたのだがその精神を忘れてこの所業確約はできん」と
ザイクノスは顔を歪める
「ではやはりここで終わらせたほうが彼らのためなのでは?」と仁が再度問うと
「このザイクノス名に懸けて彼らを騎士にするだから頼む君と同じ若い彼らにしばしの猶予をこの決断を
後悔する事態には決してしないさせない」と再び頭を下げるその答えに仁は「わかりましたでも無罪放免
とは行かないのは貴方達もわかりますよね」と仁がワンハンドレッドの面々を見回しながら尋ねる「はい
今の俺達は師匠でさえ信用してもらえない状況です」とハンベルが答えると仁はうなずくと「ではあなた
達に試練を与える事にするというのはどうですか?」とザイクノスに尋ねるとザイクノスは首を傾げると
「試練だと何か手があるのか?」と問い返すので「ええあまり実行したくない方法ではあるのですが一つ
だけね」と仁が答えるとハンベルは「教えてください皆さんの信用を取り戻すためならばこの命を懸ける
ことも厭いません」と答えほかのメンバーもうなずく「わかりましたならば教えましょうそれはその体に
俺が知るある魔法をかけることです」と答えるとザイクノスは「ただの魔法ではないのだなそれは?」と
問うので仁はうなずくと「ええこの魔法は法と正義の神に審判を仰ぎ神に宣誓する魔法なのです、その行
為が誓いにそむく場合には自分のみならずそのとき自分が失って一番つらい相手に命がともに奪われるこ
とそして宣誓者を監督し導く者の宣誓も要求されることそして・・・・」とここで言葉を止めたことに疑
問を感じながらもザイクノスは仁に先を促す「そしてかけた時点にて神の目から見て生きる価値なしと判
定されればその命は激痛の中奪われますそれでもこの試練を受けますか?」と仁は自分の前に跪く五人と
ザイクノスに最後の確認をするザイクノスは「不肖の弟子達の責任は私の責任でもある監督者としての宣
誓受けよう」と力強く答え跪く五人も「我等五人もとはザイクノス様に救われた命、師匠のような騎士に
憧れながらのこの始末不肖の我等弟子のため師匠が命を懸けて下されるというのであれば断る理由などあ
りません」と答えて泣き出すその答えにうなずくと仁も覚悟を決めると「皆さんの覚悟わかりました俺も
覚悟を決めましょう俺の師匠の話が正しければこれを使えるのは俺一人でしょうから」と言って宣誓の手
順を説明する
「まず俺が魔法を発動すると神ご本人が光臨されるか御使いの天使が現れますどちらが現れても一歩も動
いてはいけませんよそして発動者である俺に宣誓内容を尋ねた後あなた方全員に名前を尋ねますそうした
らあんたがたはまずはザイクノス様が自分が監督者として立ち会うことを告げた上で宣誓してくださいそ
の次はあなたたち五人です一人ずつ名前を名乗り宣誓を行ってください」と説明するとザイクノスが「宣
誓の文言できれば決めてやってくれないか俺も含めて頼む緊張でその場じゃ考えること無理だろうから
な」という願いに頭を抱えるが「わかりましたやりましょうザイクノス様であれば正義と法の神に宣誓す
る我ザイクノスは彼等の師として道を示し導くことをここに誓うで良いのではそれであなたたちなのです
が基本なら自らの今までの行いを悔いてきょうこの場より悔い改め師ザイクノスを手本として正義を守り
民の護民官足るべくまい進することを神に誓う後はあなた方自身の名前を続けてください」と答えると
「ありがとうございますこれで安心して臨めそうです」とハンベルが答えるが「あなたたち五人は宣誓で
終わりではないんですあなたたち五人は今まで他人に与えてきた痛みをわずかの間にその罪の重さによっ
ては数倍の強さで体験することになるのですから」と言って気を引き締めさせるハンベルが気づいて「も
しかしてさっき言ってた激痛って」と尋ねると仁はうなずき「ええそれがこの神の試練なのです他人の痛
みを知り正道を歩む人に二度とこの苦痛を味わせないこれに耐えることも宣誓する意思をも神は見極めて
いるそうです」そう言って仁はザイクノスを見ると「では始めます先ほども言いましたがくれぐれも全員
の試練が終わるまで動かないでください」と再度念を押すと詠唱を始める「法と正義を司る神テミスよこ
の場に御身の降臨を願うしばしの間神の時間をお貸しくださること願い奉る」と唱えた時だった、天と地
を光の柱がつなぎあたりを白く染めるそして光が治まるとその場に一人の女神が降臨されている女神は仁
に目を向けると「古の魔法と汝の願いにより我降臨せり人の子よこの法と正義を司る我テミスに何を願
う」と女神テミスは仁に問いかける「女神テミスよ私はあなたに宣誓を望む者の為御呼びいたしました願
わくば彼等の宣誓をお受け下さいます様お願いいたします」とテミスに答えると「ふむ一考の価値がある
願いである聞き届けようしかし我への宣誓は痛みの試練と死と悲しみの罰が伴うこと伝えてあるのか?」
との問いに「はいそれは伝えてありますその上で最初の志しならびに師にふさわしき自分達となる為に今
神のお力をお借りしたいと」と答えると「ならば許そうさあ人の子よ始めるがよい」とテミスは答えザイ
クノス達に視線を向けるザイクノスは緊張しながらも「法と正義の神テミスよ私に憧れ民の護民官である
騎士を目指した若者達が力と名声に溺れ道を踏み外しかけたが行いを悔いて正道へ戻ることを神に誓うと
いうならば私は彼らに師として導きたく思います私ザイクノスの宣誓をお受けいただけますか?」と宣誓
すると「よかろう師ザイクノスよ己が誓いに懸けて彼らを導け」と答えザイクノスの宣誓は了承されるそ
して続く五人もひとまずは宣誓を受けてもらうことはできた、残されるのはそう痛みの試練であるテミス
は宣誓の五人を見渡すと「我に宣誓したる五人よこれよりお前達が他人に与えていた痛みを味わうことに
なる覚悟はよいか?」との問いに五人は「はい協力いただいたあの方より伺っております我々に神の目に
より価値なしとされれば痛みの中で死ぬことも含めてそれでも願います我らに試練をと」と答えるとテミ
スは「よい覚悟であり澄んだ目をしておる褒美として可能性を示そうまずこの試練で人が死ぬのは我が意
図したものではない自分が痛みから逃れようとして死を選んでしまうのじゃ、この試練の目的は痛みを与
えた相手への贖罪なのじゃつまり相手に許しを請うことこれがこの試練をくぐるすべじゃ頭から離す出な
いぞ」と言ってその手をかざすと五人から「ぐううううう」と必死に痛みにこらえる声が漏れ出す思わず
動きそうになるザイクノスをテミスが止める「ザイクノスよ動いてはならんこれは彼らが乗り越えなけれ
ばならぬ最初の痛みなのじゃ道をたがえたものがやすやすと戻っては正道を行くもの達に失礼であろうこ
れは彼らが得られたはずの失った時間の痛みも含まれておるのじゃこれを乗り越えて始めて正道を再び行
く資格を取り戻せるのだ今は耐えるのだおぬしの役目はこの後にある」
次回は冒険者の日常3