極上の朝食と料理人の病
見た目は普通食べれば極上の朝食でもあれ?
9
王の言葉に市民がざわつきだすそれはそうだろう自分達のよき隣人オーク人が非道な実験によって魔獣化
し復讐するため町に向かったとなれば何らかの形でこの国の人間がその実験行為に係わっていることにな
るその事実に人々は騒然とする
それを押しとどめるよう王は静める「市民の皆よ落ち着いて聞いてほしいのだが英雄が訪れてくれたこと
で相手の一人が判明し拘束することができたこれから尋問をおこなうところなのだが残念なことにわが重
臣の一人だっただがうやむやにする気はもうとうない必ず組織を明らかにし諸君に知らせることを王であ
る我が名にかけて誓おう」
そう言って国王は胸を張るそれに答えるように市民から国王に向かって声が上がる王はうなずくと「さあ
今日は王都を挙げての祭りとする皆の者大いに楽しむがよい」
その言葉に市民が一番喜んでいるように感じたのは俺だけかなと仁が辺りを見回すとジェイコルは苦笑い
をしていた、そして仁の視線に気がつくといつものことだとため息をはく
そして祭りの日が終わり王都に朝日が昇る王宮の中国王に与えられた貴賓室のベットで仁は二日酔いの頭
を抱えながら目を覚ますベットから体を起こし身なりを整えるとドアをノックする音が響く「どうぞ」仁
が声をかけるとドアが開きメイドが姿を現す、仁に一礼したメイドは「仁様朝食の用意が整っております
昨夜の会食場までお連れせよと国王様におうせつかりましたのでまいりましたご用意は大丈夫でしょう
か?」と声をかけてくるそれに仁は「あの朝食は分相応なところでとろう思っていたので国王陛下にお暇
すると伝えてもらえるかな」と答えるとメイドはあせりだす「あの何かお気に触ることでもございました
でしょうか?」
その様子に首をかしげながら仁が「イやそんなことはないよいままで味わったことのない持て成しには感
謝しているしなんで?」と尋ねるとメイドは「だって王宮の朝食を断ってまでお暇するなんて我々に不手
際が会ったとしか考えられません」
そう言って泣き出すその様子に驚いた仁は「君は責任感が強いんだね安心して君達が悪い訳じゃないから
俺は自分が慣れるのが怖いんだ英雄ってみんなは言ってくれるけど俺の本質は一般庶民なんだだからあん
まりご褒美だ何だって今日のようにこんな豪華な部屋に泊めてもらっちゃうとそれに慣れて自分の本質ま
で変わっちゃうだからご褒美はここまでにさせてくれるかいお嬢さん」と声をかけると外から「ほほ遅い
から迎えに来てみれば随分謙虚ですがすがしい返答じゃの英雄殿」と言う声とともに国王が王妃とともに
姿を現す仁とメイドがあわてて跪くが王がよいと言って立たせる、そんな国王に王妃が「あなた言ったで
しょだから英雄殿の気性なら朝食を断って日常に戻られるって私の言ったとうりじゃないですか」と国王
に文句を言うその姿をうらやましく思いながらも仁は頭を下げ「国王陛下失礼とは思いますがこのたびの
褒美はここまででお暇させていただきたく」と言葉をつなげると「そういかんせめてコック長が君のため
に作った料理を食べてやってくれそうしないとやつは職を退きかねん」と言って国王はにこりと笑うそし
て「君は自分が英雄だからと傲慢になりたくないというのだろう安心したまえその自覚がある者が功績を
得たとはいえ傲慢になることなどないこのわしが保障しよう」
そう言って胸をたたくと隣の王妃が「あなたが保障しても彼の安心にはつながらないってわかって言って
るのかしら」
そう言って国王の隣でため息を吐くそれからメイドに「そこのあなたコック長のところに行って朝食のメ
ニューと場所を変更してもらえるか聞いてきてもらえるかしらそうね場所はそうだ中庭にテーブルを出し
てそこでみんなで食べましょ勿論使用人であるあなたもよ今集まれるもの全員でとる事にしましょう今日
は特別にねこれなら朝食を食べていってくれるかしら」
そう言って王妃は微笑んだ。
仁がうなずくとメイドは喜び勇んで部屋から飛び出して行く仁が「でもいいんですかそんなことをして明
日以降」と聞くと王妃は手を振って「かまわないわ客であるあなたに気を使わせてしまったそっちのほう
が王としてそして招いた者として恥ずかしいのよものには加減があるうちの人はちょっと加減を間違えた
その埋め合わせそれとうちの使用人達に対しての埋め合わせそうしないと気に病む子がでそうだしね」と
言って微笑むと国王と一緒に中庭へと仁を伴って出るそこには同じく王宮に宿泊したジェイコルが待って
いた
ジェイコルは三人に気づくと「やっぱり王宮をでようとしていたか王妃が正しかったようじゃな」
そう言って支度をするメイドたちの間を抜け三人に近づいてくるそして「英雄様は自分は傲慢になりたく
ないと贅沢すぎた昨日の晩餐と一泊で帰ろうとなさっていました、ジェイコル殿に私が気になって尋ねた
とうりでしたわ」と王妃が言うとジェイコルは「お前も気にせんでいいと思うのじゃが国王の奢りなの
じゃから」そう言って頭を掻くそれから国王に向き直ると「王妃が言ったじゃろ国王の招きとはいえ度が
過ぎればこいつは帰りかねないってワシのように気楽な性格じゃないんだから」
「そうは言うがジェイコル」
「ま、そのおかげで孫たちの支度がまにあったがの」
そう言って指差す先を仁が見ると身なりを整えたリンダとコルアが現れるいつもの相手を緊張させない落
ち着いた服装ではあったのだが仁の視線に気がつくと二人はあわてだす
あたふたする二人にジェイコルが「あわてなくても二人ともちゃんとしておるからおいで」と声をかける
とようやく落ち着いて挨拶をする
そしてテーブルが並び食事が並ぶと国王が「使用人の皆に一つだけ言わせてもらおう見事な仕事だったこ
れだけだでは皆で仕事中の者には悪いが朝食を食べよう」そう言って並べられたパンに手をつけるとそれ
ぞれ自分の好きなものから食べ始めた、国王の使用人達は普段とは違う作りたての料理を主である国王と
一緒に食べることに緊張していたが「皆さん安心なさい騒いでうちの人が何か言い出したら私が止めます
からいつものように和気藹々とおしゃべりしながらいただきましょ」と言う王妃の一言で場が和む
「はーおいしかったメニュー自体は普段と変わりない朝食なのに調理した人間の差でここまで変わるんだ
ね」と普段は口数の少ないコルアが食後のお茶に舌鼓を打ちながら満足げにつぶやく
「確かになうちの料理人も腕はいいほうだと思っていたのだがさすが国王の料理人腕が桁外れだ」とリン
ダもコルアに同意する
だが隣にいた仁は違っていた確かにおいしかったのだがごくごく微妙に焦点がぶれている気がしていた自
分の舌がおかしいのかなと首をかしげていると王妃がやってくるそして「ねえあなたたち今日の朝食の味
おかしくなかったかしら?」と仁たち三人に聞いてくるりんだとコルアは「いえとってもおいしかったで
すけどさすが国王様の料理人だって今もはなしてたんです」と答えるので王妃はうなずくが仁の顔を見る
なり「あなたは異論がありそうね」と仁が返答する前に言い出す
「ええ自分の舌がおかしいのかと思ってましたが王妃様もきづいたとなるとやはり」
「そうねこの王宮の料理人がいつもどうり腕を振るえば私が場を和ませなくとも皆がおいしくいただけた
はずそれだけの腕が家の料理人にはありますから」
「となると考えられるのは疲労・病気でしょうかね」
「あらそんな知識もあるの?」
「最低限知っておくと便利ですからねさすがに本職の方ほどではないですけど」と仁は言ったのだが免疫
学がこの世界に存在していない可能性に気づいていないこれが後でさらに仁の名声を高めることになるの
だが今は本人すら気づいていない。
次回は王宮料理人が気づいていない病