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⑤【9作集約】無音な奏曲の囚われ人  作者: 邑 紫貴
堕女神の工程

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女神降臨……行き過ぎ?


日直で、科学室の片づけをしていた俺と秋。

【ビシャッ】水しぶきの大きな音。

まさか……思った通り、秋が水を頭からかぶって呆然と立っている。

「バカ!何やって……」

俺の声に、何が起きたのか理解する。

「やだ……。服、濡れちゃった~~。う゛ぅ……」

近づいて、準備室に常備されているタオルを頭にのせる。

「ほら、ちゃんと……拭いて!!」

慌てて目を逸らす。

制服が透け、下着が俺を誘惑した。

「ね……色っぽい?」と、タオルの隙間から上目で見つめる。

「……ふざけんな!!絶対、お前なんかに手は出さない!」

「ちぇっ……」

気が抜けない。今のこいつに、恋?ありえない……

悪魔に洗脳されて、俺の好きな秋から遠くかけ離れた存在になってしまった。

だから、今は絶対に……無い!!

秋は、いきなり服を脱ぐ。

「ぎゃぁ!!なっ……何……やって!!」

俺は、慌てて制服を着せる。

「H!」

「はぁ?意味が分からん……。服を脱ぐお前のほうが、異常だろ?」

「チラリリズムが駄目なら、脱いでみろって……」

「誰がだ?!」

やっぱり、あの悪魔の入れ知恵か!!

「い……ひゃ……いふぁ~~」

両方のほっぺたを引っ張る。

「……恵理夏だな?」

「ち、違う……もん」

目を逸らし、吹けもしない口笛を吹くまねをする。

……ちょっと、可愛い。いや、騙されないぞ?

いらない知恵を植え付け、俺たちの様子を楽しんでいるに違いない!

くそ~~あの女!悪魔の尻尾が見える。

「ひどいよう~。ね、浩君……」

「何だよ?」

「えと……ね。抱いてもいいよ?」

意味の分かっていないのが、丸分かりの台詞。

頭に、怒りマークが増える。

~~っ!!苛立ち、つい……【バシッ】頭を軽く叩く。そう、軽く……。

小さい頃のくせだ。……幼い時の嫉妬や苛立ち……言葉に出来なくて、出てしまう……愛情のしるし。

「……S?」

「……はぁ。」

ため息。話を逸らそう。

「秋、これ……貸してやる。ちゃんと夜、返せよ?」

俺の制服を被せる。

「お誘い?」

どこまで洗脳??

はぁ……昔は、こんなじゃなかったのに。

……友達か。(正確には、悪友?悪魔の生贄??)

恵理夏と出逢って、純粋な初恋の君は消えたんだ。

ただでさえ、中学のとき必死で我慢していたのに……。

積極的なのは……ちょっと……いい。いや、他の奴に見せたくない。

……いや、違う……好きじゃない!!

はぁ……どんどん……消える俺の女神様……

確かに……堕女神……。

どうして、秋から友達になった?何か、理由がある……か。

でも、「秋は……」俺のこと……

「何?」

タオルで、髪を拭く姿は……女神。

……クラクラする。

「いや、黙って……拭いてろ。」

片付けに戻り、一人作業を進める。

好きでもない男を、誘惑したり……する……?

いや、秋は……知らない。自分の言葉が、何を意味するのか……。あの悪魔……

「浩君……」

「何だ?」

「……今の私は嫌い?」

……え?……

秋の方を見ると、真剣な顔で……机の上に三角座り。

スカートの中が、見えそうだ……

【ガシャッ】手に持っていたビーカーが、床に落ちる。

「ばっ……何を急に。」

視線を慌てて逸らし、割れたガラスを集める。

「ね……嫌い?」

【ツキッ……ン】

「痛っ……つ~~」

焦り、ガラスの破片で指を切った。

「バカ……」

血のにじむ人差し指を、秋が口に含み……舐める。

「秋……ちょ、汚いか……ら……」

目を閉じ、俺の指に……

「~~っ!!」

やばい……何かが、やばい!!これは、天然だ……

「いいよ、もう……大丈……っ」

目を上目に、口から出された指を……ペロッ……

頭が、ぼ~っとする。

「……水……」

「……へ?」

「水で洗って、バンドエイド貼るから。」

水で流しながら、少し……残念なような……

絆創膏を貼る前に、舐めたい……。いや、何を……変態か!!

小学生の笛を舐めるみたいな……俺の頭も、おかしい!

きっと、悪魔に……知らない間に洗脳されているんだ!!

「浩君、返事……聞いてないよ?」

【ドキッ!!】

心臓が跳ねる。ドキドキ……

「き……嫌いじゃない……ぞ?」

泣きそうな顔に、つい……

そして、俺の返事に最高の……女神の笑顔。

「……嬉しい!じゃあ、このまま良い女になるね!!」

「ちょっ……」

無邪気な笑顔で「ん?」と、首を傾げ……俺を見つめる。

何も……言えなくなってしまった。

良い……女??

秋、嫌いじゃないけど……前のほうが……と、言いたいのに。言葉を飲み込む。

ガラスの破片をホウキで集める秋は、背中を向けた。

「浩君、好きよ……」

小さい声で、今……確かに……

「え?何……聴こえない……もう一度言って……」

空耳じゃないよな?

「ん~?別にぃ?……何も、言ってないよ?」

しゃがんで、ガラスを塵取に入れながら答える。

怖くて訊けない……

「そう……か。ごめん……」

「……変な浩君。」

塵取の中のガラスは、燃えないゴミの中に……音を立てながら……落ちる……。




時期外れに、転校生。

親が亡くなり、親類の家に引き取られ……転校してきた。女の子……

葉山はやま 奇利きり好きなものは、金!好きなことは、商売!!」

……俺は、何故か悪魔……恵理夏を見る。

ニヤニヤと、獲物を見つけたような……仲間を見つけたような顔。

秋は、目を輝かせ……「……いい女……勉強……くふふ……」と、嬉しそうだ。

秋……お前の、良い女って……何だ??基準はどこだ?!

前に立っていた奇利は、悪魔を見つけ親指を立て……合図する。

悪魔も、それに答える。何だ……?知合いなのか??


「「バカだな、同類は匂いで分かるんだよ」」と、二人同時。

HLが終わったあと、疑問をぶつけた俺に……常識を知らない奴だと、バカにした顔で答える。

それをメモる……秋……

頭が痛い……。悪魔の仲間が増えた。

「おい、恵理夏……。本当は、奇利を召喚したんだろ?」

頭を押さえる俺に、恵理夏は怪しく微笑んだ……だけ。

【ゾゾッ】……まるで、本当に召喚したと思わせる。悪魔……。


「ね、ちょっ……恵理夏!あの、かっこいい人!誰?ダレ?」

奇利……恋愛回路があったんだ。ちょっと、意外だった……。

「あぁ、私の彼氏よ!」

彼氏?いたの?!

「何、意外な顔して……面白い顔ね。」と、恵理夏が俺の顔をバカにする。

いや、今はそれどころじゃない。

「ちぇ~。お手つきかぁ……」

「お手つき?!」

奇利の台詞を、必死でメモル秋。

そのノートを奪いながら、秋に訊いた。

「秋、知ってたの?」

「うぅん!知らないけど、どうでもいいことでしょ?」と、睨まれた?

確かに、どうでもいいが……。

不機嫌な秋が、必死でノートを奪おうと……高く上げたノートに、可愛くジャンプを繰り返す。

それを微笑みながら、楽しむ。

奇利は、好奇心いっぱいで、質問を悪魔に浴びせる。

「で、名前は?」

「ふふっ。まだ集会に参加してないから知らないか。彼、生徒会長の……」

「会長?!!」

俺の叫び声に、悪魔は微笑む。

「くすっ」

……この悪魔、まさか学校をのっとるつもりか??

「やぁだ。浩、私のこと……好きだったのぉ?」と、上機嫌な笑み。

本気じゃなく、からかう笑い。この野郎……。

「浩君、私というものがありながら!」と、奇利。

「~~っ!!黙れ、この悪魔ども!全く、そいつも……頭いかれてるのか……?こんな女を彼女にするなんて。」

「やったぁ!!」と、秋。

手を下ろした俺から、ノートを取り戻し……くふくふと、笑っている。

……あぁ……何て、堕女神……。

「恵理夏。お前……」

ん……?奇利が、クラスの女からお金を受け取った。

「……奇利?何、その……お金?」

怖いが、訊いた……。

「え?噂の真相の代金!」と。千円札3枚を何度も数える。

「……真相?」

「あぁ、私と彼が付き合ってるって?」

……金?!

「くすくすくす……面白いわね。奇利、あんた……好いわ!」

「……ふふふっ。私は、高いわよ?くくっ……恵理夏なら、サービスしちゃうけど?」と、二人が抱き合う。

「止めろ!公衆の面前で!!」

クラス中が、二人を見つめる。……赤い顔をして。

それを、近くで座り……秋がメモリながらうなずく。

何が?!

「秋、いい加減にしろ!!」

「いや~~ん。」

「ま、お子ちゃまには分からないのね?」と、恵理夏は俺の唇を指でなぞる。

「ふふっ。教えてやろうか?そうだな、浩なら……クスッ」と、奇利が後ろから抱きつく。

~~っ!!こいつ等、調子に乗りやがって!!

「離れろ!俺に、触るな!!」と、振り払う。

「…………。」

そんな俺を、冷静に……秋が見つめていた。

「……秋?」

俺の視線に、作り笑顔……?




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