表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
⑤【9作集約】無音な奏曲の囚われ人  作者: 邑 紫貴
花嫁の標本~宇宙人の侵略~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/108

花嫁


森行もりゆき 朱莉沙ありさ

教授の父が在籍する大学に入り2年。単位に必死な人が落ち着き始めた頃。

私の周りに残ったのは、誰もいない。友達を作るチャンスを失った。

こんなところ来るんじゃなかった。

皆の目が違うし。誰も信じられなくなりそうだ。

それでも、やはり自分が選んだ大学。

父に似たんだと、理解する。


そんなある日。

父が講師の依頼をしたのは、どうみても制服姿の高校生。

室内は、異様な空気を醸し出していた。

講義が始まり数分。

心地よい声。語る姿は、誰にも引けを取らない。

眼鏡の奥の切れ長の目は、人を惹きつけ。男の心をも捕らえるかのように、講堂は静か。

私の耳に入るのは、声だけじゃない。目に入るのは、見えるものだけではない。

話す内容に引き込まれ。膨大な知識と、理解しやすい話の構成と展開の速さ。

何て凄いのだろう。

時間は、あっという間に過ぎた。

残った時間は数分。質疑応答……

「はい!恋人はいますか?いないなら、立候補しても良いですか?」

ありきたり。私には興味のない話。

付き合うのが嫌ってわけじゃない。むしろ人並みに恋をして……

「あぁ、ふふ。妻なら、この中にいますよ。」

自分の妄想から、違和感のある言葉で現実に戻され。

幻聴だろうか?これ夢じゃないよね。妻がいるとか、冗談なのかな?

「ね、朱莉沙ありさ?」

……どこの、アリサちゃんでしょう?

周りを見ると全員が私を見ていた。

えぇ~っと、つまり?私……ですか?

「つ、妻ぁ~~?」

父を恨むことは、もう無いと思っていたのに。

絶対に許さない!



頭にきて、父のところに向かう。

「父さん、話が……!?」

いつもサボっている研究室のドアを、勢いよく開けた。

そこには、待っていました。そんな雰囲気の二人。

父と、奴だ……

椅子から立ち、私に微笑む。

【ドキッ】

じゃ、ない!何にときめいているのか。

怒りだった感情を一瞬で塗り替えた何か。私に生じたのは。

【グイッ】

気持ちを整理できず、パニックになった私の手が引かれ。

「は?」

間抜けな声が出た口も。

【ぷにゅ】

塞ぐように……?

何でしょうかね。このフニフニした感触。

目前には、目を閉じた奴の顔がドアップで。

彼の目がそっと開く。

唇が離れたのに、捕らえられるような鋭い視線。

時間が緩やかに流れるようで。私の目は見開いたまま。

顔の距離が離れ、もう感触もなく。記憶の違和感。

感触の記憶が弱まるのに。体に染み込んだように、はっきりと刻まれた何か。

茫然とする私に微笑み、視線を父に向けて。

「……教授。これで、本当に愛情は増えるの?」

今、何て言いましたか。

父は笑顔で、うんうんと何度も頷き。

彼は研究の成果を書き記すように、メモを取る。

『コレデ、ホントウにアイジョウはフエルノ』か?

「なぁあぁ~あぁー!?」

何が自分に起きたのか。

私は、まとまりきらない思考と感情を吐き出すように叫んだ。

一体、何が起きたのか。

唇……さっきのってまさか、キス?……父の前で?

「あぁ、朱莉沙。改めて紹介する。志茂田しもだ 孝彬たかなり君だ。どうだ、孝彬。キスの感想は。地球人の愛情はキスで出来ている。子どもの作り方は、この朱莉沙が教えてくれるからな!あはははは~~……」


……思考停止……


頭が痛い。頭に響くような雑音が私を苦しめる。

地球人?キス?子どもを作る?

デリカシーのない父の声。

キスは、どうだったかの感想を求め。

夢……そうか、これは夢なんだ!

何だぁ~最近、イライラしていたからねぇ。

でなきゃ、勝手に妻とか言われないし。結婚なんて……

【チュウ~】

頭を抱え、現実逃避をしていた私に。

また……今度は吸い付くようなキス。

感触は、きっと枕だ。欲求不満ね。うふふ。早く彼氏でも作らなきゃ♪

脳内はテンション高く。でもどこか冷静で。

奴の顔を押し退け、両手で挟むように叩く。

【バシッ】

「痛い。」

「痛い……」

両頬を押さえる奴は、涙目で私を見つめる。

何故だかわからない。そんな表情で首を傾げた。

仕草や顔は可愛いのだけれど。流されるわけにはいかない。

視線を逸らし、彼を叩いて痛みのある両手を見つめ。

ため息を吐く。

「教授、後どれくらいでメロメロになるの?」

メロメロ?

思わず顔を上げ、何を言っているのか訳が分からず。

「さぁねぇ~?それを研究しながら、子どもを作ればいい。あはははは♪」

この、おやじぃ~~?

これが夢ではなく、残念ながら現実なのだと受け止めて。

「お父さん、話があるの。ちょっと、顔を貸してくれるかな?」

睨んだ私に、静かな声。

笑っていた表情から一変し、授業をしているときのような真剣な視線で。

「朱莉沙、言いたいことは分かる。」

今までと違った雰囲気。

あれ?もしかして。何か、大切な理由が……

「お父さんは、早く孫が見たい!」

…………。

ハヤクマゴガミタイ?そう言いましたか、今。

怒りで体が震える。

「許さない、絶対に許さないからね!」

一瞬でも父を信じようとした私がバカだった。

どうやら夢ではない。結婚も子作りもキスも。

それなら、ここを逃げた方が……

【ガシッ】

肩と手首を掴まれた。逃げ場を失った様です。

恐る恐る視線を向けると。

「くく……ね、標本にしてあげる。俺のキス……君は受ける度に、俺の愛情で変化して。」

年下の彼は、まだ高校生。

標本とか言われて、あやしい研究に捕まった。

しかも、父との会話では宇宙人のような気配。

「嫌ぁあ~~!」

頭はフル回転。

奴から逃げるには、どうすればいいのか。

奴の足を踏みつけ、痛みの隙をついて逃げた。

痛覚が同じなのは、さっきの頬を叩いた時に確認済み。

一時的な解放。逃げ場はないような気がする。

家も危険……しかし家には妹がいる。

妹は、妹だけは私が守らないと!


私は、家に向かって走る。

一刻も早く、妹の元に急がねば。

この時間なら晩御飯の当番で、支度を始めた頃だろう。

のん気に、料理をさせている場合ではない。

母さん……どうして父さんと結婚したの?

私達を置いて死んじゃうなんて。

うわぁ~ん!許さない~~。絶対に、許さないんだから!

私や妹だけで、幸せに暮らしてやるー。



家に着き。息切れを何とか整えつつ。

桐沙きりさ!いる~?……どこに居るの、返事して!今すぐ……?!」

二人を置いて、走ってきたはずなのに。

二人がリビングで寛いで、お茶を飲んでいた。

「……な、なぁ?」

何故なのか理解できないけれど。

今は、それよりも桐沙が優先だ。

台所を見渡し、他の部屋も探すけれど見つからない。

立ち尽くす私に近づいて。

無邪気な微笑み。

「桐沙は、弟と一緒だよ?」

「ぎゃぁあー!弟?桐沙と一緒って何?返して!あの子だけは私が……」

必死で問い詰める。

首を絞めるように、服を掴んで揺らして。

「ふふ……積極的だね♪」

【チュッ】

……また、キス。したのか、コイツゥ~?

怒りで震える。

我慢の限界。

突き放すように服を手から離し。

距離をとって、唇を拭う。

「いい?地球人は、愛情をキスで増やさない!何度もされると、慣れちゃうんだから!へっ!もう、愛情どころか……メ、メロメロどころか。飽きちゃったわよ!」

自分でも何を言っているのか。

ただ言葉を吐き出して。踏ん反り、睨んでやる!

すると。何をどう受け取ったのか。

何かを探し始め、手に取った本を開きながら。

小さな独り言を始める。

「ちょっと待ってね?……てことは、次のステップOKってこと?くふふ……何だ、標本が良いのかな?愛情は案外、簡単か。次のキスは……」

ブツブツと、分厚い本を次々に捲り。

「次のキスは……っと。これかな。」

真面目に読み込んで、私を無視。

その分厚い本は、私の何でしょう?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ