表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
⑤【9作集約】無音な奏曲の囚われ人  作者: 邑 紫貴
吉凶は夢に萌す

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/108

オマケ:配下は甘い・・


朝日を浴びて目覚め、目に入るのは広いベッドと見た事のない部屋。


体を起こして布団が肌蹴、自分の裸が露わ。慌てて布団を胸元に当てながら、部屋を見渡した。

一翔の配下になったということは、ここは彼の家。


昨日の夜の事は……

嘘だ。そんな急展開。



「告美、起きたのか?」


ドアが開いて、笑顔の爽やかな一翔。

夢じゃなかった!


「……おはよう、ございます。」


私の曖昧な挨拶に、口もとを緩ませる。

そんな表情を可愛いと思うなんて。


「今日は休むか、学校。」


制服姿で、学校の支度を済ませた状態の彼に、私は戸惑いながら視線を逸らす。

裸で身動きも取れず、昨日の事も恥ずかしくて、どうしていいのか分からない。


あの場で、配下にする宣言をしたから皆には知られているわけで。


「何、そんなに無理をさせたかな。何なら、もっと俺の力を喰う?」


何故か制服のボタンを外しながら、色気を増して迫ってくる。


「ヤダ!」


拒絶とは違う、照れ隠しに近いハズだったのに。


「おかしいなぁ。配下に、拒否権はないよ?」


眼が真剣で、伝わるのは凍えるような緊迫。


「違う、から。その。恥ずかしいから、少し部屋から出てよ。服を着たいんだけど。」


視線をさ迷わせ、脱いだ服を探すけど見つからない。


「あぁ、洗ったから無いよ。白狐の神域って消えたけど、服とかどうなったのかな。」


私の恥じる姿を楽しむように、体を隠した布団を捲り、ベッドに上がる。


「何してるの?学校に行くんだよね?あ、生徒会の時間じゃない?遅れるよ?」


今までにないくらい舌が回る。


「ん?くすくすくす……時間の操作は無理だけどね、学校を支配するくらいには力があるんだ。」


それは笑えない冗談ですか?

私に被さり、甘えるように頬をすり寄せる。


「好きだよ、告美。……覚えてないだろ、昨日の夜の事。」


所々、意識が飛んだ気がするけど。

何を指して言っているのかな。


「仲間を見つけて、それが自分好みの同類だったなんて。ふふ。そりゃ喰うっきゃないよね。」


予告通り、食べられてしまったわけですか。


「あれ?告美、寝る時にノーブラ派だから抵抗はないだろ。」


あの時は、上着を着ていたはずですよ。

そうよ、あなたは寝ている私の胸に触れても平気だった。


「……寝ていた私に、何もしてないよね?」


「寝る前にしたから、その後はいろいろ我慢したよ。……ん?それは起きている今、して欲しいって事?」


しまった。我慢するとか、そんな言葉も気になるけど。

裸の今、こんな朝日を受けた明るい場所で身を晒すなんて無理!


「冗談だよ、告美。ねぇ、告美……こっち見て。」


視線を向けると、銀色の髪に白い翼を広げた姿の別人。


「俺は神馬ジンマ。獏の能力も共に引継いだアヤカシ。鵺、告美を配下に置いた。」


「私は鵺、吉凶の萌しを視て不吉を告げるアヤカシ。今後、神馬の配下に身を置く。」



…………


出逢った記憶。彼の想い。それが流れ込んでくるような感覚。

目を閉じ、睡魔に誘われて落ちていく。


一翔は獏として私の悪夢、一翔のお母さんがははに託した悪夢に引き寄せられて来た夜。

私の夢に現れたのが獏、現実で私が殴ったのはジンマ。

本来、獏は仮の姿で感覚などない。夜明けに本体に引き戻されると、言っていたけれど。

そこに居たのは神馬じんまで、本体だったのね。


減退などしてこなかったし、あなたは強い能力に目覚めたばかりで、痛みを感じた事にも無頓着。

私はあなたに萌しを邪魔され、現実の体にまで触れたから、夢魔の類だと思ったけれど。

あの時から、少しずつ未来は動いていたのかもしれない。


別人のように振る舞う一翔に違和感を抱き、女生徒に囲まれている時のあなたに近づく事を恐れて。

悲しみの表情で夢を返せないと告げられ、読み取れない表情で突き放されて。

苦笑に混じる感情が何かを知りたくて、目が離せなくなった。


彼の抱える闇の心奥深くに触れたようで、何かが埋まる。

惹かれて心乱された。

あなたに覚悟を見せろと言われ、私が夢で口づけたのは、萌しより望んだものがあったから。

それなのに、夢で体温を感じるなんて。


確かに、私が視た悪夢が未来を変えた。

あなたが必死になったから、私の心が素直に反応しただけなのよ。


『あいつには近づくな。頼むから。もう、俺と係わりたくなどないだろう?』


そうね。私が姫鏡くんに近づいて好意を抱くなら、萌しの通り命を落としていただろうから。

そうならないで欲しいと、あなたは願ってくれた。


『もう、後戻りは出来ないからね』


追いかけるのを止めなくて良かった。


『君には感覚があるんだね。残念ながら俺にはないんだ。これは仮の姿だって言っただろ』


嘘つき。

羽が黒く染まっても、あなたは臆病。


『バレちゃったか。それならしょうがない。計算が狂ったから少しの間、身を引こうかな』


自分から背にある真っ黒な翼を見せておいて、私に何を伝えたかったのか。

自分の事を知って欲しいのに、近づく私を突き放すような矛盾した言葉と行動。

愛しさが増していく。


『恐れは未来に対して生じるもの。そうだ、先を視るお前が怖い』


私の萌しを知って、あなたは恐れた。

どんなに強い力を持っていたとしても、不安は消えない。


『俺の気持ちしたごころを本当に知っているのかな』


『知らないわ。だから、教えて欲しい。嘘じゃない。感覚も言葉もすれ違うけれど、間違ってはいないと思える。幸せと、満たされるような心は一翔が教えてくれたから。信頼は変わらない。私の全てを見透かすような視線に、気恥ずかしさが抜けないとしても』


あなたの配下に留まって、私の全てを捧げるわ。




アヤカシは減退してまで、この人間社会に溶け込むことを願って来た。

役目を担い、夜な夜な活動を粛然と繰り返す。

減退に相応しいアヤカシを見つけて……減退を選んだ“この国”。

残った数少ないアヤカシ。古来より人間の心が思い描き、恐怖が生み出してきたのに。

現代では、いともたやすく消していく。不安定な理でアヤカシは生きているのだから。

未来だって覆せるなら。


悪を善に塗り替え、理に反しても甘い配下で幸せに・・






(オマケ:猫塚先生と)



「もう、あいつら消えればいいのに。言い加減、あんなアヤカシ共を知っている人間もそろそろ寿命で……そうよね、私が幾ら減退したからって死神の人気はあるわけだし。逆に利用してやろうかしら。」


人間に左右されるような理では駄目だと、最近の猫塚先生は過激派になりつつある。


減退を選んだ古の理に反するのは、簡単じゃないよね。

父と一翔の件でお世話になったし、母は配下に置いてもらっているのに。


「気にしなくてもいいわ。神域にいるだけで存続できるのだから。」


「先生、大鷹くんを配下にしたのは寿命が関係しているんですか?」


先生は遠くを見るような視線で微笑む。


「確かに私が配下に出来るのは、命に関する弱者だけど。寿命に係わらず紋葉に好意を抱いたのだと、そう思ってよ。」


アヤカシの存在意義や理に反しても、猫塚先生と大鷹くんの関係は変わらない。

想いは同じ。純粋なのだと、少し切なくなった…






(オマケ:光莉&屈狸くん+白狐)



「まぁ、需要と供給じゃ。しゃあないわ。私等は頼られてナンボやけんな。」


かと言って毎回、屈狸くんを噛むのもどうなのかな。


「僕は、光莉さんの気持ちが本当なら良いですよ。」


毒されてきたのかな。

彼も前は、なぜ噛むのかと言っていたのに。


「配下に置けるいうんは、気持ちが無いと無理やけん。他は神域に留めるとか……。そう言えば白狐、あんたの栄養は人間と同じなん?稲荷寿司やっけ。」


父は獣姿で伸びをしてから、本棚に駆け上って座る。


「見下ろすとか、立場がちゃうやろ。」


不機嫌な光莉に、満足そうな笑みを見せた。


「稲荷寿司が狐の主食とか、冗談だよね。肉食だよ、僕は。くくくっ……ネズミを喰らうからね、狸でも案外。」


光莉の怒りが、こっちにまで伝わるようなピリピリした空気。

お母さんと離れているのが、少し不満なのかもしれない。


「ふん。はがいたらしい。化け猫のところにでも行きなだ。」


了承を得たと思ったのか、父は青白い火の玉になってから消えた。


「告美、白狐が言うんも一理ある。『神仕えは、数が減るけれど能力の減退はない。寧ろ、力を蓄えた宝庫』。それでも配下に置けるんは、限られとる。空馬先輩と、仲良うしぃなぁ。」



『“彼”も告美を配下に置けんのだけは覚えておいて欲しいんよ』


そうだね、私は一翔の配下で生きていく。

出来るならアヤカシの未来を、不吉を覆すため……


吉凶は夢に萌す…………






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ