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⑪無音な奏曲の囚われ人  作者: 邑 紫貴
無音の世界へ

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チート(アズライト)


アジュール二周目。今度は挑戦状を受け取り、【難攻不落】に挑む。

その映像は公開され、話題になるだろう。

タクマはパソコンを操作しながら。俺と楽水にアジュールのステータスを見せている最中だった。

運営からの案内が届く。

「悪趣味だね、本当に。カプリチオの奥義発動で、話題を呼んだからか。中身が女だと思っているからか。どちらにしても。アジュールに雷の奥義クエストまでプレゼントとは。」

挑む日時の催促にもとれる。なんとも不愉快な。

「勝てないと分かっているからな。」

「兄さん、このモフも頂戴ね。」

「あぁ、だけど。いや、お前の考えは纏まってから聞こう。楽水、お前はこれでいいのか?」

アジュールの二度目の死。それは。

「なにがだ。」

お前にとって、アジュールは特別ではないのかと。思うのだけど。

感情の読めない無言。

「これからアジュールがまた殺されるのを、お前は見て何も感じないのか?」

「別に。もうミイロは死んだ。それにアジュールは蘇る。だろ?」

そう。このゲームに三週目などない。

吸収されるアジュールのデータを守り、別のアバターとして存在させる。

倒す方法が分かったかもしれないと、タクマは言う。

けれど、それにはヒロインの存在が必要なのだと。ゲームに慣れていない存在。

カプリチオの奥義でダメージを与えられたのは、付随する防御があったから。

ソロでも対抗できる時間稼ぎ。防御は必須。

でも二周目のアジュールの戦いには、補助職が不在。そして手に入れた奥義は防御のない単体攻撃。


『アジュールは二度死ぬ』


「カプリチオの時のような隙など出来ないだろ。奥義を発動できたところで勝ち目はない。」

アジュールの二周目に勝ち目はない。

それでも弟の目は真剣で。カプリチオが挑んだ時を思い出す。


「いや、あいつが見せ場は必ず作るよ。奥義をわざわざ与えたのだから。アジュールに勝ち目がないから、なおさら。ふふ。カプリチオと同等の盛り上がりを約束するよ。俺の属性は風と雷、二つあるのだから。楽しみにしてて。」


負けると分かっていても。この工程が、【難攻不落】を覆す道筋。

ヒロインの準備は順調かと聞かれれば。タクマの考えは纏まらず。中身のある話。

ヒロインに選んだのは、タクマの初恋。

アジュールとカプリチオに重ね。このゲームの結末を、よりロマンチックにしたいと語る。

父の猶予に、末っ子の純愛。ミイロの想い。

ゲーム。たかが。

それでも復讐を誓った故。


それぞれの想いを未来に繋ぎ。できるだけ引き延ばした挑戦の日時。

公開なのだけれど。それは限定されたもの。

古株。古参。二周目に至る吸収を知る層。

それはぽこぽんによると、新参に吸収や二周目を教えてはならないと。口止めする制約付き。

今後、アジュールやカプリチオの噂を耳にするものはいないだろう。

秘匿されていく。

運営の奥義配布、奥義クエストが盛り上がり。特別ではなくなった奥義の寄託。

薄れていく。存在が消されてしまう。吸収とは別の方法で。


設定した日時。招待状が届き。

それを開くと。見覚えのある闘技場。そして空から舞い降りる紺碧色のドラゴン。

『ラピスラズリ』。【難攻不落の城】それは。

アジュールは風と雷の魔法を使って、善戦する。それはカプリチオの戦いを模倣したもの。

奥義の見せ場。不自然もなく。少しのダメージに、ラスボスのドラゴンは態勢を崩し。

タクマは雷の奥義を発動する。ミイロは風属性の奥義を持っていなかった。

アジュールは剣を構えて詠唱を唱え、足元に拡がる魔法陣。雷属性の緑色。

剣の切っ先を向ける。そこから闇が生じて、周辺を包む。

魔法陣の外枠から、薄緑色の光が円柱状に上空へと一瞬で。消える。すると空には雷雲が生じ。

光を放った後の魔法陣。中央からは白煙のような光が、剣の切っ先から束まで螺旋状に絡む。

それを振り上げると。雷鳴の轟。閃光。掲げた剣は雷を帯びて。

アジュールは更に魔法を発動させる。

見せ場を作り、油断していたドラゴン『ラピスラズリ』。

人影と閃光の飛び交う画面。ドラゴンは対応できず、全ての攻撃を身に受ける。

腕は貫かれ、尻尾は切断。羽は折れ曲がり。叫び声のような奇声。黒煙の炎を口から吐き出し。

「奥義の火力は微妙だったけれど、画像や効果音は最高品質だね。」

「さっきの追加の魔法はなんだ。」

感情の薄い楽水は前のめりに。

満足そうな笑顔でタクマは答える。

「風のバフ。速度上昇だよ。属性が二つあるのを最大限に生かした電光石火。これは、アジュールだからこそ。そろそろ魔力切れ。記憶に刻んだ。二週目アジュールの役目は終わり。兄さん、アバターの再編をお願い。アバターは男。名前はアズライトで。」







二周目カプリチオは不遇職で、チャット機能の確認で使ったきりログインの形跡がなく。

俺のアバターぽこぽんも、すっかりゲームから遠退いて。

久々に外部チャットで連絡が来たと思えば。

『奥義をよこせ』と短文で。

ほんと、いちいちカプリチオだなぁと。ため息。

ゲーム内の約束した場所に待ち合わせ。そこに現れたアズライトの装備に言葉を失う。

紺碧色。それはこの世界でラスボスのドラゴンだけに許された色。

察する。余計な事は言わない。

外部チャットで、俺はヒントは与えた。

俺の役目は、奥義を通して今日終わる。

炎の奥義。寄託魔法。当然なのか、それは成功する。

しかし。パーティーを組んで行った寄託魔法。ボイスがオンの状態。

「おい!俺が言ったことを忘れたのか。」

「いえ、これでいいんです。」

中身は幼い声の少年。

やはりアジュールは死んだんだな。


『中継者となり言葉( で )技を伝えよ』


奥義の寄託に成功したら、すぐに受諾するな。その受諾の時間が長引くほど威力は増す。

俺は意図的ではなく、偶発的にそうなって理解した。

そう。大規模な攻略前、寄託魔法が失敗の続く中。

必ず寄託できると知っていたのは、俺が受託したから。

増幅された奥義。それを通常の寄託で。『これでいい』とは。

俺の役目を終え。

【難攻不落】は近い将来、寄託魔法で討伐されるのだ。




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