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⑪無音な奏曲の囚われ人  作者: 邑 紫貴
中継者

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見守るもの


ギルドの統制を見守りつつ。討伐メンバーの相談にも応じる。

そして数人の同じ属性の戦士が俺に、奥義の寄託を依頼した。

いつかは俺も【難攻不落】に挑むだろう。

しかし、今回のような大規模な上位者による攻略など今後はないと思う。

成功しても失敗しても。ゲームクリアか、絶望か。

奥義は誰でも引き継げるものではない。それでも、今回の戦力になるのであるなら。

希望者すべてに、申し出の順番で。寄託の呪文を試すことにした。

しかし、どの炎の戦士も奥義を受け継げる者が現れず。そもそも寄託自体ができるのかを疑われた。

俺にとって寄託は。誰かに出来る自信があった。

失敗すると適応の範囲から離れるにしたがい反発ダメージが膨大で、ひん死状態になるから。

そうこうするうちに。協力を申し出た別の属性で、数名の成功報告があり。

運営の妨害でないことも確認された。確率の問題。


討伐メンバーの焦りか、挑む期日に備え、希少な回復職の強引な勧誘。回復アイテムの買い占め。

外部チャットで画策していたのが表に出始める。

協力はするが、俺に出来る事は限られている。

カプリチオも討伐メンバーには入っていなかった。あの後、何を考えたのかも知らない。

俺は、カプリチオも参加するのだと思っていた。いや、もしかするとアジュールを待っているのか。

俺もどこかで期待していた。

ゲーム上でログインの確認は出来ないけれど。

二周目の始まりの町が同じなら。姿くらいは見ることが出来るだろうと。

属性が違っても、誰かは気づくはず。アジュールを覚えている者がどれほど残るのか。

チャット機能も使えず、検索にもかからない二周目。

今、明らかにゲームに夢中になっている者たちの関心は、【難攻不落】の城に挑む事。

挑む者たちを見守る事。不遇職・アイテム枯渇の不満。

新しいギルドが創設され、討伐のメンバーが移籍する。対抗ギルドも同じ。

いよいよ本格的に挑む日時が迫ってきた空気。


『技を伝えよ』


占いに則したつもりで。ギリギリまで炎の奥義を寄託できないかと、依頼に応じるけれど。

適応できるものは現れなかった。


挑む日時が公になり。ゲーム内は更に盛り上がって、お祭り騒ぎ。

討伐の当日。その開始数分前に、闘技場の観覧席が公示され。

総勢80名。戦士4・補助1の5人パーティー。風属性2・水属性4・火属性6・雷属性4。

良く集めたものだ。補助職を16人。不遇の中、それが多いのか少ないのか。

不遇だから素人でもそう変わらない。即席でリアルに声をかけたとも聞いた。

育成も含んだ準備期間を終え。


闘技場は満員。各属性の町に人が集まり。空の画面を見上げ。

俺も画面を見つめる。


数で押し切れるかと、優勢からのスタート。速攻勝負を仕掛け、奥義の連続。

青白い炎の柱。疾風に葉が混じった切断攻撃。雷鳴の轟。水の矢が降り注ぐ。

あぁ、見覚えのある、参加していないカプリチオの技。あいつも寄託したのか。

何故だ。アジュールの復讐をするのかと思っていたのに。

参加しない俺に、周りの反応は厳しかった。カプリチオも同じだっただろう。

参加するか。奥義を手放してまで、アジュールを待つか。きっと選んだのは後者。

理解できる。痛いほど。

俺の想像以上の苦しみや悲しみを抱えているに違いない。俺より多くの時間を共にしたのだから。

それでも、自分が出来ないから望んでしまう。

お前が復讐を遂げてくれるのを。


占いは俺に『挑め』とは言わなかった。

たかが占い。それでも。俺はファクトのギルマス。アジュールが二周目に戻る事に期待して。

よく作られたゲーム。画像は綺麗で、効果音もリアル。

ラスボスの強さ。倒すたびに攻撃力や防御力が上がり。それは。【難攻不落】に相応しい。

徐々に劣勢になるのが見て取れる。

防御は完璧。不遇職だからこそ。どんなラスボスの攻撃にも耐えられる。それは魔力が続く限り。

回復アイテムの乱用。それも追い付かず。護りに重点が置かれ。

隙を突かれれば。一瞬で崩壊する陣営。

振るわれるドラゴンの腕。鋭い爪で広範囲に地面まで切り裂き。

口から黒煙の混じる炎を吐き出し。大きな翼は暴風を巻き起こす。尻尾が上下左右に舞い。

大ダメージを与える物理攻撃を繰り返す。圧倒的な強さ。

そこに切り込んで大きな傷をつけ、盛り上がる瞬間も度々。それでも。力の差は歴然。

傷の回復は早く。

攻撃する人数が減り続け。最後の一人。

ドラゴンの腕が迫って、戦士を捕らえ。

響くのは。握りしめる力に鎧の耐えられきれない歪の音。そして呻くような叫び声。滴る鮮血。

ドラゴンは口を広げ。手にしていたそれに喰らいつく。咀嚼音。


悪趣味な光景を目の当たりに。

攻略メンバー全滅。






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