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⑪無音な奏曲の囚われ人  作者: 邑 紫貴
中継者

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27/35

言葉の中継者


「どうも」

お、カプリチオから返事が来た。

ボイスに切り替え。

「少し、時間いいか?」

「あぁ。」

カプリチオもボイス。

どこか不機嫌な声。これ、まさか俺に嫉妬してるのか?

どうしようもないな。分からないこともないが。

「俺に連絡がきたってことは、お前もアジュールのリアル連絡先を知らないって事か?」

「しらん。」

あからさまな反応。

これから伝えることを聞いたら、さすがに変わるんだろうけど。

どの順で話すか。こんな機嫌が悪いなら、会話を途中で切られる可能性もある。

まずはこれだよな。

「アジュールが消える前、リアルの命が長くないと言っていた。」

「は?」

情報処理能力は高そうだな。頭は良いんだろうけど。

「二周目に戻ってくるかは分からない。戻ってくるとしたら、お前に会いにくるんだと思え。アジュールは、お前が好きなんだよ。」

なのに、お前はギルドを優先した。

責めるつもりはない。俺はギルマスだから、サブマスのお前の立場が理解できる。けれど。


「アジュールが俺に話したのは、お前の態度で傷ついたからだ。俺にも誰にも言うつもりがなかったのに。だからギルドもずっと入らなかった。言わないで欲しいと頼まれたけど。この会話を聞いた運営が、アジュールを消した。二周目に戻ったとして、お前にあいつの気持ちは伝わらないだろう。俺が伝えられるのはここまでだ。」


「待て……違う。反応が可愛くて。意地悪したくなった。俺はギルドを優先したりしない。ずっと先約があると断って、アジュールと……俺は。」


こいつの気持ちは理解できる。

俺だって、こいつのために泣いているアジュールに惹かれた。護ってやりたいと。

いや、もう俺が出来るのは。


「お前がギルドに誘わなければ。」


頭にカッと血が上る。

「は?今、何て言った?」

「お前がギルドに誘わなければ、あいつは俺と」

「黙れ、お前がアジュールを追い詰めたんだ。可愛い反応見たさに意地悪をして。楽しんだ結果が、あいつを追い詰めて。入るはずのなかったギルドに加入するほどだぞ。本当なら。残りの時間、お前と一緒にゲームする事を望んだのに。それが!お前はどうした?無視しただろ。」

感情的に言葉を吐き出した俺に。

応酬するのかと思えば。

「何も聞きたくなくて、ブラリに入れた。」

返って来たのは小さな声で。

ブラリ。ブラックリスト。

アジュールからの言葉は、ブラックリストの設定に従い運営によって遮断される。

きっとアジュールの本音や願いも含まれていただろう。それが伝わらずに消えた。


「バカなのか……。」

思わず声に出たけれど。あきれて言葉が続かない。

「俺は、リアルで会いたいって言った。」

それがカプリチオの言い訳なのか。だとしても。

いちいち腹が立つ。

「だからなんだ?気持ちが伝わったとでも?相手は女の子だぞ。リアルで会えるような安心できる情報を与えたのか?ふん。アジュールを信用してないのはお前だ。俺は断言できるぞ。お前の連絡先をアジュールが知っていれば、俺に連絡も返さず、彼女からの接触を待っただろうからな。」

何がリアルで会いたいだ。ふざけんな。

病院でゲームをしていると言っていた。

断られて、いじけて八つ当たりでもしたんだろ。

「拒絶したのはお前だ。俺は中継者。アジュールの最後の言葉をお前に伝えて役目は終わった。後は勝手にしろ。」

俺は会話を強制的に終わらせた。

分かる。理解できる。痛いほどに。

だけど、俺に言うな。言ったところで何も変わらない。顔も名前も、住んでいる場所も知らない。

これはゲーム。オンラインなんだ。オフラインになれば絶たれる。

リアルじゃない。顔が見えないから、言葉を増やす。なのに。

何故、カプリチオは簡単に自分から断つことができた?

それだけ、アジュールの気持ちを知った上で、甘えたんだ。

試したんだ。どれだけ自分を許してくれるのか。どれだけ好きなのか。

会いたいと願い。自分の願望だけを優先して。

リアルじゃないからこそ。これがゲームだから。

共にゲームをして過ごす時間。リアルで感じるストレスもなく。ただ純粋にゲームを楽しみ。

積み重なる想い。

顔も名前も知らない相手。表情が見えないからすれ違う。

まして。ブラックリストなど。


カプリチオ、俺はお前を許さないからな。






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