ファクトのギルマスぽこぽん
宿屋に泊まった戦士ぽこぽん。
未来を占うと。
その結果は『中継者 と なり 言葉 技 を 伝えよ』
前回の占いと同様、画面に表示された文字が音読されて、薄れて消えた。
アバターの目覚め。
そして俺は異変に気付く。組んでいたパーティーにアジュールがいない。
ギルメン一覧、フレンド情報からも消えた。アカウントが存在しない。
それは宴に参加して占いをしていたギルメンも気づき、騒然とする。
「落ち着け、状況の分るものはいるか。重要だと思う事だけチャットを使って残せ。ボイスは控えろ。」
「アカウントが消えてる」
「垢バン?」
「占いをした他のメンバーは全員いる」
「消えたのはアジュールだけだ」
「退会?」
「いや、占いが終わるタイミングはそう変わらない」
「同じ名前の女アバターがいる」
「検索か。確かにいるけどレベル0」
「属性が空欄」
そこで書き込みが止まり。
「まさか二週目」
俺のボイスの一言が静かに響く。
そう、俺達は今まで噂を聞いて憶測を語ってきた。目の当たりにした事実。
占いという短時間で消えたアジュール。どう考えても退会などではない。
闘技場中継の案内や記録もない。
「一旦、解散だ。状況からわかるように、この件は他言無用。下手に動いてアカウントが消えるのを望まない。以上。」
その発言の後、察した数名が無言でログアウトする。
「サブマスはいるか、俺はカプリチオと話す。こんな時だが、すまない。」
「了解。」
発言は控えめに。
ここ『ラピスラズリ』のゲーム内での会話はまずい。外部のチャット機能を使う暗黙の了解。
フレンド登録にはないカプリチオをアバター検索し、個人あてのチャットを送る。
ログインがない。届くだろうか。運営の妨害がないとも言い切れない。
届かなかったとしても、アジュールのアカウントが消えたのは分かるはず。
向こうからも接触はあるだろう。
それより会話をどうするか。アジュールが狙われたのなら。
今後、モフモフ所持者に同様の事があるとすれば。このゲーム、続ける価値があるのか?
それならギルドで討伐を掛けるか。
そうだ。ファンタジアにギルド移籍した奴が、俺の外部のアカウントを知っている。
対抗大手なら、ギルド内で同じように外部のチャットは使っているだろうから連絡はつくかもしれない。
外部チャットを開き。
個人あてに何件かメッセージの来ているのが目に入る。ギルメンからの呼び出しと報告。
それと噂を聞いたのか、ファンタジアのギルマスからも。
そこからカプリチオに連絡を取れるようにしてもらえた。
外部チャットでグループを作り、複数ギルドで情報を共有する。
それとは別で、カブリチオに個人的なメッセージを送り。少し待つけど返事はない。
幾つかのギルドの主要メンバーと会話しつつ。
その中にカプリチオを見つけたけれど発言はない。きっと混乱しているのだろうな。
ゲームじゃない、現実で。あいつは何を思っただろうか。
くそ!俺たちの会話を聞いて。アジュールを狙ったんだ。
「これからどうする?」
そう。これはゲーム。
【難攻不落の城】を攻略できるのか。明らかに消された者がいるのを目の当たりに。
全員が言葉を失った。
「アジュールは二周目をするだろうか?」
誰かの発言がきっかけだった。
運営の確立を引き当てたアジュール。アバターが女に変わった時点で、俺には意図的に思えた。
もう長くないと言っていた。
このゲームで育てた期間を無駄にし、残された時間を育成に使うかと聞かれたら。
俺ならゲームをやめる。それでも。
アジュールがカプリチオとの時間を望むなら、ログインはあるはず。
「現状、初期から地道に育成してきた者ならモフモフ所持が常態化している。かといって、今回のアジュールに起こった事が全員に望むとも考えられない。」
「【難攻不落】を楽しんでいる運営なら、むしろ闘技場の開放をして観覧を増やすはずだ。」
他のギルド主要メンバーも、ほぼ同じような考え。
アジュールは二周目、レベル0。
そうだ。敗れた者のアバターが消えたことで、吸収されたのではと噂があった。
挑んだ数だけ積み重ねたデータを吸収して、強さを増し。それに酔いしれているなら。
今回の事がイレギュラー。
俺には断言できる。アジュールのアカウントを奪った動機。悪趣味な。
「突然の出来事に、緊急の招集。これ以上の情報もなく、憶測で意見もまとまらない現状。ここは一旦、解散しよう。各々のギルド、注意が必要なのは外部チャットで統制を取ることだ。全く会話しないのも不自然。ある程度のかく乱も必要になってくる。次の招集も追って連絡する。」
招集した側。当事者ギルド。最低限の情報共有。
カプリチオから連絡はない。あいつはファンタジアのサブマス。そのギルド内でも混乱があるだろう。
アジュールと仲が良かった。ギルメンからの追及があるかもしれない。
俺はファクトのギルマス。
お前がギルドを優先したように、俺もギルドを優先する。




