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⑪無音な奏曲の囚われ人  作者: 邑 紫貴
ある勇者の鎮魂歌

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水属性の町ガイザー


世界の週課募集で、カプリチオと再会した。

彼の属性は水。そして背後にはモフモフのキツネ。

同じモフモフなのにタヌキとは違ってスリム。可愛い上にどこか上品で。うらやましい。

そして苦戦のボス戦。

カブリチオの足元に魔法陣が拡がり。

数多の水泡がらせん状に立ち上って集結し、矢の形になって降り注ぐ。無数の範囲攻撃。

一期一会のパーティーメンバー内で、歓喜の声が上がる。

「すげー」「つえぇー」「かっけー」

短文の賞賛と共に。私も思わず「すごい」と発言してしまった。


普段ゲーム内で言葉を発する事など無いので、オンオフ切り替えが面倒なのもあり触っていなかった。

オンラインゲームだからか、常に初期設定はマイクがオンになっている。

慌ててパーティーを抜けたけれど。

個人あてのメッセージが届く。中身が女だとバレてしまった。

独身かと聞かれ、思わず子供のいる主婦だと嘘を吐いた。咄嗟にしては良い判断だったと思う。

他に漏れることもなく、過剰な誘いや発言もなかった。ただ。

「不注意だったね」

何故か、文字なのに怒っているような気がするカブリチオ君。

まるで、ギルドに入っていたら守れるのに。とでも言いたいのだろうか。被害妄想。

迷惑はかけていないので、謝るのもおかしい気がする。

「次は気をつける。忘れてください」

「いいよ。忘れるからゲームを一緒に楽しまない?」

彼にも、主婦で子どもがいると告げ、ついでに年齢詐称までしたけれど。

ギルドの勧誘とは違う。噓がばれているような気もする。だからと言って何かが変わるわけでもない。


カプリチオに何度か誘われて、一緒に行動する事が増えた。

「冒険者成長記録、見たことなかった?」

「なんか画面に案内?みたいな表示が出て適当にエンター押してた」

パーティーを組み、個人的なボイスチャットを繰り返す。

もう中身がバレているし。文字を打ち込むより楽でいい。

様々な操作や隠しクエストを教えてもらい、面白さが増えていく。

「ギルドもね、冒険者の実績要素なんだ。他のゲームだとサブアカ作って個人ギルド作ったりするんだけどね。」

「へー。他のゲームしたことないからなぁ。」

年齢詐称も忘れ、警戒心もなく。

そんなふうにタイミングが合えば一緒に遊んでいたけれど。


週末、彼の属性の町に遊びに行くことになった。

『水の属性ガイザーへの招待状』

それを受け取り、開封すると。

足元に広がる魔法陣。水属性の青色。

流れる水の音が大きくなり、画面が切り替わるとそこは。

水属性の町ガイザー。

町中を川が流れ。風の町とは違う水音。晴れているのに霧雨のような場所。

待ち合わせの広場には大きな池。ドーナツ型で中央がくりぬかれている。

「それ、時間が来たら吹き出すんだ。ガイザーは間欠泉だからね。」

待ち合わせの時間ピッタリ。

ここでログアウトしたのだろうか。ゲームとはいえ急に現れるとビックリする。

「ど?水属性の町は。」

「綺麗ね。そうだカプリチオ、今度は風属性の町に招待しようか?」

「いや、ギルメンに他の全属性連れて行ってもらったよ。」

その返事に、胸がモヤモヤした。

「そっか、そうだよね。」

最近、一緒に行動していたから勘違いした。

彼はギルドに所属して、沢山の仲間がいる。仲間ではない私はフレンド。

この物足りないような気持ちはなんだろうか。

「カプリチオって、名前にしたのは何故?」

「俺は“きまぐれ”なんだ、帰国子女のスカした友達がいてね。そいつの命名。ふふ……俺の事、初めて聞いてくれた。ねぇ、アジュール。君の事を教えて。」

アジュールの事。

「装備やステータスとかは、フレンドだから見えると思うんだけど。」

「違うよ、君自身の事が知りたい。俺は自分のリアルについて話して、気づいたんだ。君の事を知らない。俺の事をもっと知って欲しい。」

私自身。リアル。

そうこれはゲーム。ゲームの向こう側に、カプリチオを操作している人がいる。

顔も名前も知らない人。

「言ったよね、中身は女。主婦。子どもがいて、年齢は40代後半。」

「ふーん。子どものいる主婦は、この時間にゲームしないよ。」

「え?」

「ぷふ。嘘、してる人もいるけどさ。こんな休日の子どもが活動している時間に、ゲームしている主婦はダメな部類ですけど?」

顔が見えないのに、意地悪な口調なのがはっきり分かる。

「そうよ、私は悪い主婦なんだからね。ゲームするのよ。さ、案内して。この属性ごとのクエストを消化するんだから!」

明らかに私たちの関係が変わったのはこの時からだった。


私はゲームと恋に夢中になっていった。

それが長く続かないのを知っていたのに。






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