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⑤【9作集約】無音な奏曲の囚われ人  作者: 邑 紫貴
殺人輪舞の夢を観る

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第三章:輪舞。参

君は、確かに。ここにいたのに。

人の命は尊くて、儚いモノだから。

消えてしまうロウソクのように、一瞬で。燃える炎がある時は、輝いて見えるのに。

消えた灯火が、闇を呼ぶように。周りの世界を一変させる。

闇が怖くなりましたか?

でも闇は、美しい。でしょう?

惹きつけて捕らえ、離さない。

アナタハ、ソレヲ。観。続ける。




神隠村の入り口に来た。

来てみたものの、エンの家が分からない。途方にくれる中、林藤さんとの会話が頭を巡る。異質な村。

『村から遺体が見つかり葬儀をしたと。村人以外は遺体を見ていない。』

「夢幻君?」

男の声に驚き。血の気が引いた。

「あぁ、ごめん。林藤と同僚の刑事で、川口だ。」

警察手帳を見せてくれた。

「あの。」

言いにくそうにする俺に、微笑んで。

「おいで。案内するよ?」と。

案内について歩く。

エンの家。刑事さんは、話を聞いている。多分。お母さんなんだろう。

中には入らなかったし、俺のことは黙っていてもらった。会うのが怖かった。

俺が、あの日。一緒に出かけなければ。付き合ったりしなければ。後悔する。

落ち着いたら、心の整理ができたら。遠まわしに。逃げて。ここにいる。

エンの生まれ育った場所。静かな村、小さな集落。

話の終わった刑事さんは、また歩き出す。何も言わない。俺も、何も話さずについて行く。

薄暗いけど、空気が澄んで。綺麗な場所に墓地があった。

川口さんの足は、新しい沢山の花束が添えられた墓で止まる。

「君は、信じるだろうか。」

小さい声で、墓をじっと見つめ。川口さんは言った。

エンの死を?

ただ見つめる墓は。俺に何も伝えなかった。何かを信じられるような答えはない。

「エン。」

どれくらいの時間が過ぎただろう?

「日が暮れる。村を出よう。」

川口さんに導かれ、そこを後にした。

君は、本当に。死んだの?


学校。普通の日々が続く。

ただエンがそばにいないだけ。それ以外は変わらない。変らないはずなのに。俺にとっては異状だ。

エン。君と過ごした時間が忘れられない。

「夢幻、次。移動だぞ?」

英に声をかけられ、現実に戻される。ここは。ホントウニ現実?夢をミテイル?

心配そうな目で、英が様子をうかがう。

分かっている。この事実を受け止めないといけない。現実を。君が死んだと。

俺は、林藤さんが言うように。エンを殺すことになる。

現実から、逃げては駄目だ。

エンは、殺された?誰に?村の人間?ストーカー?変質者?通りすがりの気まぐれな、殺人?

見つけたい。自分に力があれば!!畜生。殺してやりたい!!許さない。

林藤さんは、知りたいのは真実だと言った。

本当は、林藤さんだって知ってる。死んで、この世にいないんだと。

ただ殺した奴を見つけない限り。捜し続けるんだ。自分の力の限り、自分が納得できるまで。

俺も、将来。警察の仕事をしたい。エンのことだけじゃない。他に、誰も同じ想いをしないように。誰か一人でも護りたい。


家。

「夢幻、少しいいか?」

各地を転々と出張し、久々に父が帰った夜。食事の後、重い口を開いた。

多分、エンのこと。

「あぁ、何?」

言いにくそうに、母さんの入れたお茶を飲み。

「辛いことは、ためず。話してみるのがいいかもしれん。父さんでは、役に立てないか?あまり家にいてやれない。こんな父に、話すことは。」

「いや、父さん。」

いつも仕事でいないのは淋しかった。

でも父さんを尊敬している。そんな父から自信のなさそうな言葉を少しでも聴きたくなくて。止めた。

「ありがとう。聴いてほしい。母さんも。」

俺はエンと付き合い。亡くし。将来、どう考えているかを伝えた。

林藤さんのことは、出来るだけ情報を少なく。彼は、慎重に行動している。

「そうか。母さん、夢幻は成長したね。」

「はい。」

二人が自分の親で良かったと、心からそう思った。

「夢幻、憎しみは募らせるな。すぐに忘れられる感情じゃないし、調整も難しい。ただ、囚われるな。お前は、まだ若い。」

父さんは、悲しそうに微笑んだ。

憎しみを持つこと。これは普通。でも囚われるなら?彼のように。

話が途切れ、父さんはテレビのスイッチを押した。野球の中継。

仕事の忙しい父さんだったけど、少しでも時間があればキャッチボールをしてくれた。懐かしい。


携帯が鳴る。表示は『委員長』。

何かの連絡網だろうか?電話に出ながら、自分の部屋に移動する。

「はい?え、明日?あぁ、わかった。連絡、サンキュ。」

職場体験に、近くの工場へ3人グループで行動する予定だったが、この不景気に倒産。

3ヶ月前の計画なので、うすうすは工場の人も感じていたようだが。快く了承してくれていた。

倒産で、急に行く場所が見つからず。英が父親に頼んでくれたらしい。行き先は、駅前の大きなオフィスビルに変わった。

俺と英と委員長。くじの結果だ。



駅前。待ち合わせ時間9時。英の父親が、その場にいた。

「はじめまして。」

秘書の女の人に説明を受け。会社の中に案内される。

事務の人の緊張が伝わった。多分、英の父。社長も一緒にいるからだろう。

「いや、こんな機会でないと。会社に目を向けられないのでは、改善しなくては。」と、難しい話を大人達がしている。

大人の世界。俺も、いつかは社会に出る。その時が、何故か怖い。未知の世界。

この体験に、どれほどの効果があるか。でも知らないより良い。見ているだけいい。感じただけでも良かった。

「夢幻くん、真剣ね。」

委員長は、そう言いながらも。俺より真剣な表情に見える。

「委員長は、将来。何の仕事するの?」

「映画とかのスタント。」

「意外だな。OLとか、言うのかと思った。でさ、そんな特殊な仕事って、どこで情報を集めるんだ?」

興味深いよな。と、言おうと思ったが口を閉ざした。委員長が、驚いた顔で俺を見るから。

「どうした?何で、驚いてるの?」

委員長は顔を赤らめ。

「そんな反応、初めてだった。」と、つぶやいた。

何だか可愛い一面だ。ま、顔は可愛い。

「そうだよな。委員長なら、女優でもいいんじゃない?」

俺の台詞に、いちいち顔を赤くし。微笑んだ。

「楽しそうだね。俺も、入れてよ。」

会社はお昼休みに入っていた。秘書の人が、お昼に連れて行ってくれる。

「へぇ、すごいね!俺は、会社を継ぐのかな?」と、英は秘書の人に訊いた。

「社長は、そう望んでいますよ。ただ、英様の希望なら。と。」

英は何も答えず。ただ移動する車の外の景色を見ていた。英は、他に何かしたいものがあるんだろうか?

「夢幻くんは、何がしたいの?」

会話を変えたかったのか、重い空気を気遣ったのか。委員長が俺に訊いた。

「内緒。」

まだ林藤さんの言葉が頭にあった。誰にも言うなと。ただ、親にだけは言った。それでも最低限の情報。

「まだ、どの道を行けるか知らないんだ」

これは本当。ただ漠然と。林藤さんのように、真実を捜せる。そんな仕事がいい。

その道が、どれほどあり。自分が通れるのか。

「ふぅ~~ん。私は。なれたらいい。このままいけば。なれる……」

委員長も車の外の景色を、遠い目で見ている。

未来が続くなら。エン、君は……


英の父親が経営するファミレスに着く。

「ごめんなさい。社長から、ここを視察するように言われていますので」

秘書の人は、申し訳なさそうだ。

「いいよ、ここのほうが落ちつくし。食べたら、中を見学したい。」

英の言葉に、安心した顔。俺たちの方も確認する。

俺と委員長は、微笑んだ。

「じゃ、遠慮なく食べて!何でも、好きなもの頼んでね!」


「いらっしゃいませ!……夢幻くん!?」

入り口で出迎えたのは、短いスカートの岸谷さん。

制服なのか、つい目が。

「あぁ、同じ学校の!そういえば、同じような内容で体験の子達が。」

秘書の人も忘れていたみたいだ。

「すみません。お席のほうに、案内いたします!」

体験に、バイトしている4人の姿。へぇ。こんな形で体験もいいな。

秘書の人が、店の人と話をしている。

岸谷さんたちのグループ4人も食事に加わり、話が弾む。将来の話、仕事の話。そう、未来について。

この時間も、過ぎれば過去。もう二度と戻ってはこない。

エン。君の時間は、あの日から止まったまま。俺の中の、君との思い出も。

でも、いつかは過去のことにしてしまうのだろうか。過去の事。

「夢幻くん、食べないの?」

斜め前に座った岸谷さんが、心配そうに見ている。

「あぁ、俺。猫舌なの。」

くすっ。と、微笑む彼女は本当に太陽のような笑顔。

心に刻まれ。癒されるように感じる。君の光は、俺をどこに導く?何を照らしてくれるだろう?

俺は、注文したカツカレーを口に運んだ。

「あっつ!!」

意外に冷めないものだ。

昼食の時間も遅かったし、その時間が楽しくて。体験完了時間15時になる。

ファミレスチームは、挨拶をしに事務所に戻る。俺たちは、外に出て秘書の人の会計待ち。

「英、俺は寄るところがあるんだ」

林藤さんに会いに行こうと思った。

あの事件ではなく、仕事のことを知りたいと言えば。不自然じゃないよな?

「あぁ、じゃあ。ここで解散?」

丁度、秘書の人が来たのでお礼を述べた。

ワクワクしている?なんと言うか、気持ちが高揚する感じ。

足の速度が上がり、走り出す。警察へ。


玄関口に入り、異様な緊張を感じたが。

「林藤さん、いますか?」

俺の目的を告げた。

応対してくれた女の人が、複雑な顔。奥に入ると、近くにいた警察の人が口を開く。

「あいつ、死んだんだ。」

死。んだ?

「夢幻くん、どうしたんだ?聞いて……。そうか、こっちにおいで。」

涙が止まらなかった。

ただ川口さんに促され。個室に移動した。

「林藤。気持ち的に、追い詰められていたんだ。」

自殺。まさか信じられない。林藤さんは強い目をしていた。

真実を求めていたのは、彼女の死を受け止めているからだ。違う、絶対に!

いつ、どこで?

「教えてください。」

もっと、本当は訊きたいことが沢山ある。けど、林藤さんの死は。他殺だ。

『誰にも言うなよ』。

今は、訊かないほうがおかしい!

「近くの海だ。アイツの思い出の場所。何度か、相談にのったのもそこだった。数日前、追い詰められたみたいに何かを調べていた。訊いたが、答えなかった。」


次の日。俺は、林藤さんと話をした海に行った。砂浜に立ち、海を見つめる。

新聞に小さな記事。『自殺。過去の事故を、追いかけるあまり。憎しみに囚われた。』

憎しみには、囚われるな。募らせてはいけない?

畜生!違う、絶対に自殺じゃない!!

林藤さんは、真実を見つけたんだ。多分、それで殺された?

ゾクッ。背筋に寒気。

誰が。犯人。どの?林藤さんの彼女?それともエン?

そういえば、林藤さんとここで会ったとき。次に会う約束をしていた。来年の話だったから、忘れそうになっていた。

事件から落ち着く頃、場所は。この海で。

この海に何か隠している?警察も調べただろう。犯人だってきっと。まだ、あるとすれば?捜すのは今じゃない!





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