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⑤【9作集約】無音な奏曲の囚われ人  作者: 邑 紫貴
堕女神の工程

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天然……?


その日は、何故か……目が冴え、寝付けなかった。

深夜、物音がする。

あれ?……まさか、蒼??あいつ、いつもこの時間に入ってきてたの?

しかも、窓……屋根を伝って??

危ない奴だな~。けど、鍵はどうするんだろ……?

寝たふりで、様子を見てみるかな。

【トントン……トン……トン……】

窓を何度か、リズミカルに叩く音。

【カチャ……カラカラ……】

マジで?!

「嘘でしょ!!」

思わず飛び起き、聞いた音が本当か確かめる。

窓は開いていて、蒼がビックリした顔で窓に腰を落とした。

「……なんて、簡単に開くのよ。蒼……今後、禁止!全く、この音に起きない私もどうかと思うけど……」

「ねぇ。今の状況は、分かってる?今日あったこと、覚えてる?」

今日、結局……晩御飯には来なかった。

あぁ!!

「晩御飯なら、下にとってある。温めようか?お腹……むぐっ?」

無言で私の腕を掴み、唇を塞ぐ。

……大きい声出したから?

でも、いちいち口で塞がなくても……あれ?これ、キスだよね??

あぁ~~今更だけど、私のファーストキスは……こいつ??

これ、二回目……いや、何回目?

「ふゃ……ふぁに……??」

生暖かい……舌?……絡まる……

これは無理!

【ガブッ……】

「っ!!」

噛みついてやったわ!

「はぁ……。……んで……」

「何、聞こえな……」

「何で、平気な顔してんだよ!」

大きい声を、お前が出すな。

「平気な顔?」

少し、考えてみる。

普通、キスは……好きな人とします。でも、蒼は?

好きな人ではありません。ちなみに、綺麗な彼女がいます。

ここは、私の部屋……寝ている時間……

「あぁ!」

状況把握したものの、出て行ってとは言える雰囲気じゃない。

どうして?ここは、私の部屋なのに……。

「蒼……?」

「俺、朱理のことが好きだ。……朱理は、俺のこと好きなのか?」

…………。

え?彼女いる蒼が、私のこと……好き?貧乳の私を……?

ないないない……あぁ、いつの間にか寝ていたんだ。

「……おやすみ……蒼……」

そこから、記憶がない……



朝。いつもと同じ時間に、目覚ましが鳴る。

しかし、布団には私だけ。

当然だ……。私の部屋なんだから。

窓は閉まっていたが、鍵は開いていた。

……あれ?夢……じゃない??

台所にも、蒼はいなかった。

「蒼は?」

「生徒会、忙しいみたいよ?」

……だよね。

何だか、寂しい……ような、物足りないような??

不思議な気持ちだった。

……ま、いいか……



学校への道。静かな時間……。

蒼と出逢うまでは、この繰り返しだった。

蒼は、何かを話すわけではないから……同じような静かな時間。

いるのといないのって、違うんだな~~。

ふと、空を見る。

青い空で、いい天気。

……視界が覆われ……耳元で囁かれる。

「だぁ~れだ?……ふぅ~~」

息が耳にかかる。

【ゾク~ッ】

「恵理夏……」

「当ったりぃ~~」

「…………。」

つい、何を思ったか……恵理夏の胸に両手を当てた。

「……大きい。」

「ふふっ。朱理ったら、大胆ねぇ。いいわよ?どこでスル?」

「何を??」

「くすくす……教えてあげるから、いらっしゃい。」

差し伸べられた手を、取ろうとした。

「だぁ~~!!恵理夏、毒牙にかけるのは止めなさい!!」と、浩に止められる。

毒牙??

「牙が、あるの??」

「ね?私より、女神でしょ?」

「あぁ。恵理夏は、近寄ってはいけません!!てか、二人とも……恵理夏に近づいてはいけません。」

私は秋の横に並べられ……怒られている?

恵理夏は、綺麗で……胸も……大きい。

出来たら、自分にないものを……知りたい……教えて欲しい。

そうか、だから……秋は彼女と友達になったのか。

そして、私を誘った……



「「生徒会長……」」「蒼……」「「「のこと、好きなの?」」」

3人の声が重なる。

……?

「嫌い。」

私の言葉に、それぞれがため息。

この答えではない?

「好きじゃない。」と、言ってみるが……反応は同じ。

浩は、苦笑いで訊く。

「どうして、嫌いで……好きじゃないの?」

どうしてか?

「私の胸、貧乳って言うから?」

うぅ~~ん?

ちょっと違う気がするけど……一番近いかな??

「……貧乳は、いいと思うけど?」

ボソッと、小さい浩の声。

恵理夏が聞き逃さなかった。

「え?何、何て言ったの?聴いたぁ~~?秋、お前の胸は良くないってさ!」と、秋の胸を両手で包む。

「くすぐったぁい……やぁ~~」

浩は恵理夏の頭を軽くはたいて「それは俺の!こほっ……秋のは、これでいいの!」

「やぁら~~しい~~」

ヤラシイ?貧乳が??何で!?

理解できない私に、恵理夏が囁いた。

「蒼に教えてもらいなさい。くすくすくす……優しく、分かりやすく教えてくれるわよ?」

……そっか、教えてくれるのか。

浩は、私から視線を逸らし……何かを、言おうとして止めた。

??

変な浩……。

「いい?貧乳の良さは何?分かるように、丁寧にお・し・え・て!……って言うのよ?」

「……恵理夏、そうやって……秋に吹き込んでいたのか?!この、悪魔!!」

……悪魔?訊き方まで教えてくれて、優しい……のに??

「くすくすくす……生徒会室に、盗撮機しかけなきゃ。くくっ……奇利なら、協力してくれるかしら。ふふふ……」

楽しそうな、恵理夏と……浩の叫び声。

こんな毎日も悪くはない。

「秋、ありがとう……」



朝、食べてないだろうと……母からお弁当を預かった。

生徒会室をノックする。【コンコン……】

……返事はない。

ドアノブを回すと開いていた。

「……蒼……?」

そっと、中をのぞいて見る。

大きい机には、たくさんの書類と寝ている蒼……。

毎日、あんな時間に忍び込んでたら……寝不足になるわよね~?バカだ。

近づいて、お弁当を机に置く。

綺麗な顔……。男の人……か。

さらさらの柔らかい髪……どんな手入れしてるのか、つるつるの肌。

何だか、憎い……。

「……ん……」

【ビクッ】

起きたのかと、何故か焦る。

……逃げなきゃ……でも、どうして?

ここには、いられない……。どうして?

怖い……何が?

「……朱理……」

「……え……?」

【ドキ……ン……】心音がうるさい。

呼ばれただけ……そう、いつものように名前を呼ばれた。

ただ、それだけなのに……。

何故、こんなにドキドキしてるの?

……あぁ、きっと病気だ!!

保健室、いや……病院に!!

「……朱理?……な……何をしに来たんですか?」

ムカッ……まただ。

学校の、クールな他所の顔……。

「嫌い!嫌い!!大ッ嫌いっ!!」

涙が、出そうだ。悔しい……

「朱理!!」

逃げようとする私を、後ろから抱きしめ……囁く。

「好き……俺は、朱理が好きなんだ……。恵理夏と付き合えば、嫉妬してくれるかと……思ったのに。俺が一緒に寝ていても、意識してくれない……。どうしたらいい?どうしたら俺のこと、好きになってくれる?」

首元に、蒼の唇が触れる。

「……や……くすぐったい……っ……」

手が、小さい胸に触れた。

【ビクッ!!】

「やっ!!……ふ……ぅ……ううっ……」

恵理夏の嘘つき……小さい胸に、いい事なんかない。

「ごめん……」

手と、体が私から離れ……温かい体温が逃げていく。

「……好きになる……だから、教えて欲しいの」

「……何を教えたらいい……?」

優しい声……心地いい……瞳に、私が映る……。

好きかも……

「ね、恵理夏が言ってたの……」

「うん……?」

「貧乳に良さがあるって……」

「……え、……うん?」

「……何?どこがいい?私にも、分かるようにお・し・え・て?……ね、丁寧に……だよ?」

【ブッ……】

蒼が、顔を真っ赤に……

「鼻血?!大丈夫、蒼……疲れてるの?どうしよう……えと、ティッシュ!」

「……堕、堕女神……降臨……」

……?何故、今それ??




end

オマケ『悪魔のシッポ』

Side:浩大こうだい

登場人物:秋桜あきお恵理夏えりか



秋桜が天使の様だった頃を、今でも思い出す。

それは、基本的に毒されても染まっていない部分が見えるから。

うん、堕ちても女神♪可愛い事には、変わりない!

「あら、浩じゃない。ちょっと、そこで遊んでいく?」

秋桜を堕女神に作り上げた恵理夏のフェロモン攻撃。

周囲を知りつつ、空いた教室へのアブナイお誘い。

「いい加減にしろよ。そんな事を、これ以上アイツに吹き込んだら、許さないからな?」

睨んだ俺に、意味深な笑み。

「あらぁ?何か、不都合があるの?考えてみて。可愛い秋桜が、上目づかいでオネダリしてるところを。」

想像……

可愛い秋桜が、上目で……

「浩君、ちょっと……ね?そこで、遊んでホシイなぁ。」

目の前に現れた堕女神に、クラクラ。

「……うん、遊んで……行きたいのは、行きたいけどね?秋桜、いつからいたの。それに、こんな周りに人が居る時に誘っちゃダメでしょ?」

ツッコミどころ、満載なんですけど!?

「最初から♪」

俺に、最高の笑顔で首を傾げた。

可愛い笑顔だな、こんちくしょう!

「あ、浩君?私、先生に呼ばれてるの。また、後でね!」

手が宙を漂う。

逃げられた……俺の獲物……

「ふふ、残念ねぇ~。私が、代わりに相手をしましょうか?」

こいつだけは、本当に……

「そんな冗談ばかりだと、相手を逃すぞ?本気になれるのかよ。」

あ、ちょっと言い過ぎた?

真剣な視線の恵理夏。

謝ろうと、口を開けようとした俺の耳に、とんでもない言葉が聞こえる。

「えぇ~?だって、人間で初めて好きになったのが浩大だったから、わかんないぃ~♪そうね。失恋を慰めてくれるなら、無理じゃない程度に……魂を頂戴?」

……思考停止……

「魂をあげたら、どうなるの?」

ツッコミが追い付かず、最後の言葉に質問をぶつけてみた。

「やだ、そんなの。死んじゃうに決まってるじゃない。バカねぇ♪」

ニッコリ笑顔で、何を言うわけ?

「ちなみに、初恋は誰ですか?」

頬を染め、乙女な表情で……

「人間じゃないから、分からないわよ~。知りたい?」

……堕女神を作ったのは、やっぱり……



end

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