天然……?
その日は、何故か……目が冴え、寝付けなかった。
深夜、物音がする。
あれ?……まさか、蒼??あいつ、いつもこの時間に入ってきてたの?
しかも、窓……屋根を伝って??
危ない奴だな~。けど、鍵はどうするんだろ……?
寝たふりで、様子を見てみるかな。
【トントン……トン……トン……】
窓を何度か、リズミカルに叩く音。
【カチャ……カラカラ……】
マジで?!
「嘘でしょ!!」
思わず飛び起き、聞いた音が本当か確かめる。
窓は開いていて、蒼がビックリした顔で窓に腰を落とした。
「……なんて、簡単に開くのよ。蒼……今後、禁止!全く、この音に起きない私もどうかと思うけど……」
「ねぇ。今の状況は、分かってる?今日あったこと、覚えてる?」
今日、結局……晩御飯には来なかった。
あぁ!!
「晩御飯なら、下にとってある。温めようか?お腹……むぐっ?」
無言で私の腕を掴み、唇を塞ぐ。
……大きい声出したから?
でも、いちいち口で塞がなくても……あれ?これ、キスだよね??
あぁ~~今更だけど、私のファーストキスは……こいつ??
これ、二回目……いや、何回目?
「ふゃ……ふぁに……??」
生暖かい……舌?……絡まる……
これは無理!
【ガブッ……】
「っ!!」
噛みついてやったわ!
「はぁ……。……んで……」
「何、聞こえな……」
「何で、平気な顔してんだよ!」
大きい声を、お前が出すな。
「平気な顔?」
少し、考えてみる。
普通、キスは……好きな人とします。でも、蒼は?
好きな人ではありません。ちなみに、綺麗な彼女がいます。
ここは、私の部屋……寝ている時間……
「あぁ!」
状況把握したものの、出て行ってとは言える雰囲気じゃない。
どうして?ここは、私の部屋なのに……。
「蒼……?」
「俺、朱理のことが好きだ。……朱理は、俺のこと好きなのか?」
…………。
え?彼女いる蒼が、私のこと……好き?貧乳の私を……?
ないないない……あぁ、いつの間にか寝ていたんだ。
「……おやすみ……蒼……」
そこから、記憶がない……
朝。いつもと同じ時間に、目覚ましが鳴る。
しかし、布団には私だけ。
当然だ……。私の部屋なんだから。
窓は閉まっていたが、鍵は開いていた。
……あれ?夢……じゃない??
台所にも、蒼はいなかった。
「蒼は?」
「生徒会、忙しいみたいよ?」
……だよね。
何だか、寂しい……ような、物足りないような??
不思議な気持ちだった。
……ま、いいか……
学校への道。静かな時間……。
蒼と出逢うまでは、この繰り返しだった。
蒼は、何かを話すわけではないから……同じような静かな時間。
いるのといないのって、違うんだな~~。
ふと、空を見る。
青い空で、いい天気。
……視界が覆われ……耳元で囁かれる。
「だぁ~れだ?……ふぅ~~」
息が耳にかかる。
【ゾク~ッ】
「恵理夏……」
「当ったりぃ~~」
「…………。」
つい、何を思ったか……恵理夏の胸に両手を当てた。
「……大きい。」
「ふふっ。朱理ったら、大胆ねぇ。いいわよ?どこでスル?」
「何を??」
「くすくす……教えてあげるから、いらっしゃい。」
差し伸べられた手を、取ろうとした。
「だぁ~~!!恵理夏、毒牙にかけるのは止めなさい!!」と、浩に止められる。
毒牙??
「牙が、あるの??」
「ね?私より、女神でしょ?」
「あぁ。恵理夏は、近寄ってはいけません!!てか、二人とも……恵理夏に近づいてはいけません。」
私は秋の横に並べられ……怒られている?
恵理夏は、綺麗で……胸も……大きい。
出来たら、自分にないものを……知りたい……教えて欲しい。
そうか、だから……秋は彼女と友達になったのか。
そして、私を誘った……
「「生徒会長……」」「蒼……」「「「のこと、好きなの?」」」
3人の声が重なる。
……?
「嫌い。」
私の言葉に、それぞれがため息。
この答えではない?
「好きじゃない。」と、言ってみるが……反応は同じ。
浩は、苦笑いで訊く。
「どうして、嫌いで……好きじゃないの?」
どうしてか?
「私の胸、貧乳って言うから?」
うぅ~~ん?
ちょっと違う気がするけど……一番近いかな??
「……貧乳は、いいと思うけど?」
ボソッと、小さい浩の声。
恵理夏が聞き逃さなかった。
「え?何、何て言ったの?聴いたぁ~~?秋、お前の胸は良くないってさ!」と、秋の胸を両手で包む。
「くすぐったぁい……やぁ~~」
浩は恵理夏の頭を軽くはたいて「それは俺の!こほっ……秋のは、これでいいの!」
「やぁら~~しい~~」
ヤラシイ?貧乳が??何で!?
理解できない私に、恵理夏が囁いた。
「蒼に教えてもらいなさい。くすくすくす……優しく、分かりやすく教えてくれるわよ?」
……そっか、教えてくれるのか。
浩は、私から視線を逸らし……何かを、言おうとして止めた。
??
変な浩……。
「いい?貧乳の良さは何?分かるように、丁寧にお・し・え・て!……って言うのよ?」
「……恵理夏、そうやって……秋に吹き込んでいたのか?!この、悪魔!!」
……悪魔?訊き方まで教えてくれて、優しい……のに??
「くすくすくす……生徒会室に、盗撮機しかけなきゃ。くくっ……奇利なら、協力してくれるかしら。ふふふ……」
楽しそうな、恵理夏と……浩の叫び声。
こんな毎日も悪くはない。
「秋、ありがとう……」
朝、食べてないだろうと……母からお弁当を預かった。
生徒会室をノックする。【コンコン……】
……返事はない。
ドアノブを回すと開いていた。
「……蒼……?」
そっと、中をのぞいて見る。
大きい机には、たくさんの書類と寝ている蒼……。
毎日、あんな時間に忍び込んでたら……寝不足になるわよね~?バカだ。
近づいて、お弁当を机に置く。
綺麗な顔……。男の人……か。
さらさらの柔らかい髪……どんな手入れしてるのか、つるつるの肌。
何だか、憎い……。
「……ん……」
【ビクッ】
起きたのかと、何故か焦る。
……逃げなきゃ……でも、どうして?
ここには、いられない……。どうして?
怖い……何が?
「……朱理……」
「……え……?」
【ドキ……ン……】心音がうるさい。
呼ばれただけ……そう、いつものように名前を呼ばれた。
ただ、それだけなのに……。
何故、こんなにドキドキしてるの?
……あぁ、きっと病気だ!!
保健室、いや……病院に!!
「……朱理?……な……何をしに来たんですか?」
ムカッ……まただ。
学校の、クールな他所の顔……。
「嫌い!嫌い!!大ッ嫌いっ!!」
涙が、出そうだ。悔しい……
「朱理!!」
逃げようとする私を、後ろから抱きしめ……囁く。
「好き……俺は、朱理が好きなんだ……。恵理夏と付き合えば、嫉妬してくれるかと……思ったのに。俺が一緒に寝ていても、意識してくれない……。どうしたらいい?どうしたら俺のこと、好きになってくれる?」
首元に、蒼の唇が触れる。
「……や……くすぐったい……っ……」
手が、小さい胸に触れた。
【ビクッ!!】
「やっ!!……ふ……ぅ……ううっ……」
恵理夏の嘘つき……小さい胸に、いい事なんかない。
「ごめん……」
手と、体が私から離れ……温かい体温が逃げていく。
「……好きになる……だから、教えて欲しいの」
「……何を教えたらいい……?」
優しい声……心地いい……瞳に、私が映る……。
好きかも……
「ね、恵理夏が言ってたの……」
「うん……?」
「貧乳に良さがあるって……」
「……え、……うん?」
「……何?どこがいい?私にも、分かるようにお・し・え・て?……ね、丁寧に……だよ?」
【ブッ……】
蒼が、顔を真っ赤に……
「鼻血?!大丈夫、蒼……疲れてるの?どうしよう……えと、ティッシュ!」
「……堕、堕女神……降臨……」
……?何故、今それ??
end
オマケ『悪魔のシッポ』
Side:浩大
登場人物:秋桜・恵理夏
秋桜が天使の様だった頃を、今でも思い出す。
それは、基本的に毒されても染まっていない部分が見えるから。
うん、堕ちても女神♪可愛い事には、変わりない!
「あら、浩じゃない。ちょっと、そこで遊んでいく?」
秋桜を堕女神に作り上げた恵理夏のフェロモン攻撃。
周囲を知りつつ、空いた教室へのアブナイお誘い。
「いい加減にしろよ。そんな事を、これ以上アイツに吹き込んだら、許さないからな?」
睨んだ俺に、意味深な笑み。
「あらぁ?何か、不都合があるの?考えてみて。可愛い秋桜が、上目づかいでオネダリしてるところを。」
想像……
可愛い秋桜が、上目で……
「浩君、ちょっと……ね?そこで、遊んでホシイなぁ。」
目の前に現れた堕女神に、クラクラ。
「……うん、遊んで……行きたいのは、行きたいけどね?秋桜、いつからいたの。それに、こんな周りに人が居る時に誘っちゃダメでしょ?」
ツッコミどころ、満載なんですけど!?
「最初から♪」
俺に、最高の笑顔で首を傾げた。
可愛い笑顔だな、こんちくしょう!
「あ、浩君?私、先生に呼ばれてるの。また、後でね!」
手が宙を漂う。
逃げられた……俺の獲物……
「ふふ、残念ねぇ~。私が、代わりに相手をしましょうか?」
こいつだけは、本当に……
「そんな冗談ばかりだと、相手を逃すぞ?本気になれるのかよ。」
あ、ちょっと言い過ぎた?
真剣な視線の恵理夏。
謝ろうと、口を開けようとした俺の耳に、とんでもない言葉が聞こえる。
「えぇ~?だって、人間で初めて好きになったのが浩大だったから、わかんないぃ~♪そうね。失恋を慰めてくれるなら、無理じゃない程度に……魂を頂戴?」
……思考停止……
「魂をあげたら、どうなるの?」
ツッコミが追い付かず、最後の言葉に質問をぶつけてみた。
「やだ、そんなの。死んじゃうに決まってるじゃない。バカねぇ♪」
ニッコリ笑顔で、何を言うわけ?
「ちなみに、初恋は誰ですか?」
頬を染め、乙女な表情で……
「人間じゃないから、分からないわよ~。知りたい?」
……堕女神を作ったのは、やっぱり……
end




