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鏡のプロムナード  作者: 猫屋ナオト
第五章.暴かれた秘密の"プロムナード"
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12.罠、あるいは

「それってさ、つまりこの魔物たちは普通の魔物たちよりも脆いってことでしょ? むしろこっちにとって有利なんじゃ?」


 核を取り除く必要が無くなるということは、こちらとしても攻めやすいはず。と雪乃は考えた。


「単純に考えりゃあそうだ。だが……俺にはこいつらがなんで"核なし"で動いているのか、分からねェ。俺達が活動するにはあれが必要なんだ」


「ということは、やはり原因は生み出しているメテオラの方にある……ということですか」とイリアが言った。


「そういうことだな。ちゃっちゃとこの小粒共を蹴散らして、親玉を叩くぞ」


 そういうと、ミンドラは再びエーテルの槍を構えた――。




***




「(核のない魔物――だと?)」


 その頃、コメトラに囲まれていたアルフレドは、それらを一掃し終え、メテオラの方向へと向かっていた。

 リノンの特殊性によって雪乃達の会話を聞いていたアルフレドは、疑問を抱えていた。


「(先ほど戦闘した魔物には確かに核があった。複数のメテオラが同時に送り込まれた戦力だというのに、何故"違い"があるんだ? ただのユキノ達のところにいる個体がたまたま核のない欠陥生物だった……ということなのか?)」


 アルフレドには分からない。

 ただ彼は当初の目的通り、メテオラの元へと駆ける。


「(この一件……どうも嫌な感じがする――)」


 そして彼はメテオラの元へと辿り着いた。どうやらまだ活動状態ではないようだ。


「遅いわよ! アルフレド!」


 と、そこへ既に到着していたアイリスが駆け寄る。


「コメトラの相手をしていた遅れた。アイリス、あいつらの会話は――」


「ええ、聞いていたわ。核のない魔物がいるって言ってたわね。あんたと交戦した魔物はどうだった?」


「いつも通り、核はあった。少なくとも全固体に核がない、というわけではないらしい」


「一部だけ違う……ってのが逆に怪しく感じられるわね……。あなたはどう思う? アルフレド」


 未だに動きを見せないメテオラを見ながら、アイリスが言った。


「単純に考えれば、倒しやすくなっているはずだ。だが、俺はそれが不気味に感じられて仕方が無い。根拠はないんだが……」


「私も同意見ね……。そういえば、リノンはまだなのかしら? ねえ、リノン聞こえる? 今どこにいるの?」


 ふとリノンのことを思い出したアイリスが、語りかけた。


「き、聞こえてるよ! さっき見つけたって言った女の子なんだけど、言葉が通じてないみたいなの! この子がなに言ってるのかもわかんないし……」


 若干慌てた様子のリノンの声が聞こえた。


「言葉が通じない? リノン、その少女はどれくらいの年なんだ?」とアルフレドが言った。


「多分、十五、六くらいだと思う。言葉を話せない年ではないはずだよ。無理やり引っ張っていこうとしても拒否されちゃうの、どうしよう」


「……リノンはその少女の護衛を頼む。こちらのメテオラは俺とアイリスで何とかしてみせる」


「わ、分かったよ! 気をつけてね二人とも!」


「ええ! 任せておいて!」


 アイリスは笑顔で答えた。もちろんリノンには見えなかったが、声色から表情が何となく伝わったようだった。




「……異界人、か?」


 アルフレドは一人、ぽつりと呟いた。




***




「ねえミンドラ! なんか、ここにいる魔物が全部核がないってわけじゃないらしいよ!」


 辺り一帯に出現した全てのコメトラを殲滅し、メテオラの元へと向かう最中、アルフレドたちの会話を聞いていた雪乃が言った。


「あァ? なんだよ急に」


「今ね、仲間の力で遠くに居る人の会話が聞こえるようになってるの。それによると、他の仲間が戦った魔物にはちゃんと核はあったって!」


「個体差があるってわけか……偶然にしちゃなんか気持ち悪い感じがするが。それにしても人間は変な魔術を使うんだなァ。どういう原理で聞こえてんだ?」


「原理は……えっと……はは、わかんない」


 雪乃は笑ってごまかした。思えば、元の世界にいたときもどうして電話が遠距離でも会話できるのか、それをあまり不思議に思ったことはない。


「よくもまぁ得体の知れないモンを使えるよなァ――っと、そろそろお喋りはおしまいだ。ヤツの射程距離に入るぜ」


 ミンドラの視線の先にはメテオラが、かなり近くまで近づいていた。

 もう間もなく、メテオラが手足を振り回せば、こちらに命中するくらいの距離まで近づいていたのだ。


「作戦はどうするんですか?」


 雪乃に手を引かれながら走るイリアが尋ねた。


「まずは俺があいつの"目"を潰す。あとは脆そうな部分を串刺しよ」


「作戦も何もあったものじゃないよねそれ……」ミンドラの言葉の内容を想像してしまったのか、引きつった表情のまま雪乃が言った。


「もっとも効果的なのには違いねェ。お嬢の護衛はお前らに任せた。腕が動かねェって言っても、さっきの雑魚共相手ならやれるだろ?」とミンドラが言った。


「分かった。頼らせてもらうね、ミンドラ。ルリちゃんの守りは任せて」と雪乃は答えた。


「ねぇミーちゃん。あの魔物に勝てるの……? ミーちゃん死なないよね……?」


 イリアの手を握ったまま、怯えた様子のルルリノが言った。


「あァ? あァ……そうだなァ」


 ミンドラはルルリノに背中を向けたままエーテルの槍を地面に突き刺し、振り向いた。


「俺はお嬢が死ぬまで死んでやらねェよ」


 そう言うと、ミンドラは強化魔法(アペンド)を自らの足に掛け、メテオラへと向かっていった――。



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