表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自由の翼  作者: 夕凪
8/14

第三章〜転がりし偶然、消え入る夕陽〜

「なんで、君が兄さんの名前を知ってるの?」

青年が見開いた水色の目で聞いた。

「私、さっきまで一緒だったのよ。」

「それで…か。」



乗ってきた馬車は、来た道を折り返していった。


次に来た街はビズ。

マカティカから西にある、少し小さめの街だ。



「あ、自己紹介がまだだね。僕は湊麻ソウマ。兄さんから聞いてると思うけど、僕も混血児だよ。」

「私は架羅。堂々と言うのも何だけど、私も混血児です。」


湊麻の第一印象は、柔らかい感じ。蛍麻はどことなく角があった。

それでも優しく包んでくれるような雰囲気は、二人に共通している。


―……双子だなぁ。


そう考えながらしばらく歩くと、この街のシンボルの大きな坂が現れた。

その緩やかな坂に、二人で歩みを進めた時だった。

「誰かぁ!それを拾ってぇ!!」

坂の上から声が降りてきた。

「「は?」」

坂を仰ぎ見ると、上の方から勢い良く……真っ赤な林檎が真っ逆さま。それを慌てて追い掛けてくる、一人の女性。

「湊麻っ!」

一つの林檎を止めながら、後はお願いという意味を込めて名前を呼ぶ。

「了解!」

返答とほぼ同時に湊麻は素早く動き、見事に林檎を止めてみせた。

「お見事!湊麻って、意外に運動神経良いんだねぇ。」

感嘆を込めて言うと、苦笑いを浮かべ、湊麻がそれに答えた。

「兄さんには劣るけどね。…それより、これ返さなきゃ。」

「そうだった!あのー、大丈夫ですかぁ!?」

だんだん近づいてくる女性に問い掛ける。

「有難うございます!良かった、全部無事だわ。」

女性は軽く息を切らせ、私達の所まで来て頭を下げた。

「困ったときはお互い様ですよ。」

湊麻は軽く微笑んだ。

「林檎、本当に無事で良かったですね。」

掌で包み込む様にして手にしていた林檎を、女性に渡した。女性は、深々と頭を下げた。

「有難う。…貴方達、見かけない顔ですね。旅行者ですか?」

「はい。ついさっき、此処に着いたばかりなんです。」

女性が投げた問いに、普通に答える湊麻。

私は討伐軍から逃げている。でも湊麻は…湊麻も、逃げているのだろか。


何にせよこの女性は、事情を知らない人間。あくまでも、私達は人間を装わなければならない。


「じゃぁ、私に接待をさせて下さい。家柄は小さな宿なんです。宜しかったら、うちでお休み下さい。」

お礼に…と女性が申し出た。

「ありがとうございます。良かったね、湊麻。」

この女性は信用できそうだ。

「そうだね。じゃ、お言葉に甘えます。」

そうして私達は、女性の後を着いていった。









「ここが家です。」

そう言って女性が振り返った。

目の前にたたずむ建物は、他の家とは違い少し大きく広い。かといって、他の宿と比べると小さい。要は、普通の家と普通の宿を足して、二で割った感じ。

「可愛い宿ですね。私、アットホームっぽい家、好きなんですよ。」

「良かった、気に入ってもらえて。」

女性は満面の笑みを浮かべた。

「でゎ、改めまして。私は无稀ナキです。」

无稀は右手を差し出す。その手はふわっと暖かかった。

「架羅です。」

「湊麻です。」

无稀と軽い握手を交わし、玄関の引き戸の向こうへと歩みを進めた。









「こちらがお部屋になります。…すみません…私の手違いで、あいにく今日はどのお部屋も満室なんです。…相部屋でも、宜しいですか?」

左隣の无稀が苦笑いを浮かべ、念の為…といって確認する。

「私は別に……湊麻がいいなら問題ないよ。」

右隣の湊麻に微笑みかける。相部屋なんて、特に気にする事でもない。

「ぅえ!?……いいよって…。」

肝心の権利を握った湊麻は、さっき拾った林檎の様に頬を染めている。

「ね、どうする?」

湊麻の顔を覗き込んで、やや上目遣いで返事をせがむ。

「……構わないです。」

そっぽを向き、降参した湊麻。无稀はそれを見て吹き出した。そして一つ咳払いして、窓の外を見ながら言った。

「この部屋は夕陽が綺麗なの。もちろん、夜空もよ。」


「それに、もうすぐ“ワルツ”だし。」


背後で聞こえた男性の声。もちろん、湊麻の声ではない。振り返るとそこに、一人の男性が立っていた。

「…レン…」

「无稀さん?この人は……?」

「俺は鏈。无稀の婚約者だ。」

そう言って、鏈は不気味に笑った。




窓の向こう、太陽はゆっくりと下降していき、鮮やかな橙に色を変えた。


ここからは見ることが出来ない地平線へと、ゆっくり消え入っていくのだろう……。


やっと、私の好きな章です♪初期設定と少し名前を変えてみました。で、この章は湊麻がサブキャラ。蛍麻と真逆の性格ですが…どうでしょう?私は書いてて楽しいです☆★いじりまくります!でゎ、また次話で!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ