第二章2〜ほつれた糸が絡まり始める〜
「一口に“混血児”にはいろんなタイプがあるんだ。」
再び時間を取り戻した街。その中を二人で歩きながら、蛍麻が言う。
「例えば、俺みたいな片翼しかないヤツ。見た目は悪魔なんだけど。」
「つまり、翼を出さなければわからない……ってこと?」
「そーゆーこと。アイツも同じタイプだし。」
「アイツ?」
「ん?あぁ、俺の双子の弟のこと。アイツは見た目が天使なんだけど、左翼しかないんだ。」
気付くと、街の外れの方に来ていた。目の前には、大きな河が横たわっている。
河川敷へと下りていき、並んで座った。
「あとは、瞳だけがオッドアイとか…」
ゆったりと流れる河を眺め、蛍麻は続ける。
「オッドアイ?」
聞き慣れない言葉を聞き返しながら、蛍麻の顔へと視線を移す。
「左右違う色の目のこと。この間見かけた奴は、右が赤で左が青だったっけかなぁ。」
「へぇ……。ってことは、私達と同じ人がたくさんいるの?」
「いや。俺が数えられた限りで4人……いや、架羅を入れて5人か。今のところは、だけどな。」
太陽の光が反射して輝く水面。それを蛍麻の瞳が捕らえてるはずなのに、彼の瞳は虚ろそのものだ。
「今のところは?」
不安になって聞き返す。少し空気が重くなる。
「みんな消された。そのうち、俺も消される。」
「……え?」
“殺される”じゃなくて“消される”。この違いは何だろう。
ビービー…ビービー…
突然電子音が響く。発信先は、蛍麻から。
「な、何?この音…」
蛍麻は後方の空を見上げて、舌打ちを打った。
「………きやがった。」
「何が!?」
「混血児討伐軍。天使と悪魔の連合軍だ。」
「えっ……!?」
恐怖と焦りが、討伐軍と一緒に迫ってくる。
「蛍麻!どうするの!?」
「俺はここで奴らを引き付けとくから、架羅、お前はあの馬車に乗って逃げろ!」
「でもっ、蛍麻!」
「いいから逃げろ!」
蛍麻が怒鳴る。自分に出来る事をしろと。
あの頃の記憶が甦る。
私、また何も出来ないで逃げるの?
「無理だよ!!」
自然に瞳に涙が溜まる。もう、あんな思いはしたくない。
「架羅!!後で必ず追い付くから!早くっ!!」
蛍麻は必死で私を説き伏せる。信じろ、と強く言った。
「…わかった。……絶対、後で……会おうね?」
そう一言蛍麻に言って、河原を駆け上がり、近くの馬車の停留所に転がり込んだ。
馬車はゆっくりと動きだす。私はただ、蛍麻が無事で、後から追い掛けてきますようにと祈るしかなかった。
馬車に揺られているうちに、瞼が重たくなっていき…次第に意識に霞がかかっていった。
誰かに起こされた感覚に陥り、ふと目を開けると…目の前に金髪の青年がいた。
「君、大丈夫?この馬車は、ここで折り返しなんだけど?」
ぼんやりとした視界に写る青年を
「……蛍…麻?」
と、とっさに呼んでいた。
「え?君……何で兄さんの名前を知ってるの?」
「どうやら、蛍麻が架羅と接触したみたいね。」
女性が言った。
「今は違うけど、な。」
それに答えるように、男性が言う。ただし無関心に、新聞を読みながら。
「ふぅん。次はあの子が接触……。じゃぁ、続けて監視をお願い。」
女性は二つの影に言う。
「「分かりました。」」
そう言って、影は静かに消えた。
どぅもっ!夕凪です。やっと、ストーリーが動きだしたって感じです。やたらと会話が多かった回ですが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました☆