表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自由の翼  作者: 夕凪
5/14

第一章2〜決意の誕生日〜

「遅いよ、架羅。いつもより30分位。」

階段を下りると、すぐにキッチン。そこに立っている女性は、朝食の後片付けをしている。

「ぅ……。おはよぉ、カガリ姉さん。」


「悪い夢でも見たのか?おばけとか、篝とか……」

食卓のいつもの席に座っている男性が新聞を広げながら、からかうように言った。

「ちょっと雅樹マサキ?今何て言った??」


「…二人ともおはよ。」

これが、いつもの朝食の風景。



「そういえば、明日は架羅の誕生日よね?」

指を鳴らしながら、篝姉さんが言った。

「うん。16歳になるよ。忘れてないよね?」

私の台詞に、二人は苦笑いを浮かべた。

「そっか。早いな…。」

雅樹兄さんがぽそりと呟いた。

確かにこの5年という月日は、文字通りあっという間に過ぎ去ってしまった。






独りぼっちになってしまったあの日、私は夢中で走り回った。


そして、此処に辿り着いた。


突然転がり込んだ私に驚きもせず、冷静に対処した雅樹兄さん。傷ついた私を暖かく迎えてくれた篝姉さん。

だから今こうして、私はいる。






ふとテーブルの端に目を向けると、黒い羽と白い羽が2枚ずつ置いてあった。

「それ……

「!?な…、なんでもないわよ。ただの鳥の羽。玄関先に落ちてたのよ。」

私の言葉を遮りながら、篝姉さんが慌てて羽を隠す。雅樹兄さんは苦虫を噛んだような複雑そうな顔をしている。

「……そう?」

「そうそう。あっ、架羅。今日は部屋の片付けをするんでしょ?早く済ませちゃいなさい。」


「……はぁい。」

私は席を外すことにした。もちろん、フリだけ。


食器を流し台に置いて、キッチンを後にする。階段に脚を掛け、あたかも登るような音を立てその場に残る。

聞き耳を立てると、二人の安堵の溜息が聞こえた。




「……危なかったぁ。」

篝姉さんがテーブルに突っ伏した。

「……もう、奴らがそこまで来ているんだな。」

雅樹兄さんは新聞を畳み、篝姉さんを見つめる。

「えぇ。気付かれたみたい。」

「なんとかならないのか?引っ越すとか……」

「いきなり出来るわけないでしょう?架羅になんて説明するのよ。」

頭を抱える篝姉さん。しばらく沈黙が続いた。

「どうして、あの子は普通に暮らせないの?」

ゆっくり重い口を開いた篝姉さんの瞳には、涙が流れていた。


「………っ!」



その姿を見た瞬間、私の足は階段を静かに素早く登っていた。


奴らって何?


あの羽は誰の物?


普通に暮らすって?




私は、今まで二人に……


迷惑をかけていたの?




部屋に閉じこもって、少し前に叩き込まれたことについて、冷静に考えた。



もう、迷惑をかけたくない。



そんな私が辿り着いた答えは……


この家を出ること。




節目の、

私の誕生日に……。







夜、

月がとても綺麗で見とれてしまった。


自分も輝かしい人生を送ることが出来るだろうか…




私の夜は、果てしなく続いていく……

そんな気がした。

今回で第一章が終わりです。長いなぁ……。    今回出てきた黒と白の羽は、形見の羽ではないのであしからず。                   ややこしい作者でスミマセン。m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ