第一章〜一日の始まりに〜
―……ジリリリリリ……
部屋中に鳴り響く、薄い金属同士がぶつかり合う甲高い音。
東の空から顔を出し、強烈な眩しさを放つ太陽が、二階の部屋を明るく照らしだす。
「………ん……。」
朝だと思って目を開けて、窓の外を見ると……太陽を直視してしまった。
「…………ぅあっ。」
これが私の一日の始まり。毎日優しい夢を見て、太陽に起こされる、当たり前の毎日。
この生活が始まったのは、5年前。
「架羅、早く逃げなさい!アナタは生きるのよ。」燃え上がる私の家。空まで紅く染め上げて……。
「お父さんとお母さんは!?一人はヤだよっ!!」
「……もう、時間なんだ。架羅、お前だけは生きてほしい。俺たちの分まで、できるだけ長く…」
「時間って!?……ぁっ!!」
紅い空に、無数の物体が舞っている。右の方は白くて、左の方は黒い。すぐに、天使の軍と悪魔の軍だってわかった。
「わかったでしょ?私達には時間がないのよ。だから、せめて架羅、アナタだけでも……」
そういって、お母さんは自分のペンダントを私にかけてくれた。
「これはお守り。アナタがいつか、自由を掴むための。あとは―……、」
その続きを言う前に、お父さんとお母さんは目で合図しあい、翼を出してくれた。そして、羽を一枚ずつ取って、私に差し出した。
「これと同じ羽が、アナタの背中にもあるの。天使と悪魔の両方の翼。いずれ、アナタも狙われる時がくるわ。でも―……、」
「俺たちがお前を守から。どこにいても、必ず。」
私の目には涙が溢れていた。早く…と背中を押してくれた二人の手が暖かくて、優しくて、………今振り返ったら、きっと先に進めない。
私は走りだした。
「「元気で……」」
あの優しい声が、今も私を支えてくれている……。
「架羅?もう朝だよ!」
下から声がして、我に返る。そうだ、起きなきゃ。
「はぁい!!」
布団をはねのけて、急いで着替える。次に鏡の前に座って、軽く髪をとかす。
鏡に映るのは、禁忌の自分。背中まで伸びた灰色の髪―……白い天使と黒い悪魔の子供……禁忌の証……永遠に続く、呪い……。
アメジストの瞳。透き通るような青空の瞳を持っていたお母さんと、燃えるような深い紅の瞳を持ったお父さんから産まれた、私だけの色。
私が、ここにいる証。
最後の仕上げはお母さんからもらったロケットペンダントを付けること。後から私が、二人の羽を取り付けたペンダント。持ち上げると、白と黒の羽が揺れた。小さな丸いロケットを手に取り、蓋をそっと開ける。中にはもちろん写真が入っている。この日は、お父さんとお母さんとのお別れの日で、私の誕生日だった。あったかい太陽の下、笑顔の三人が懐かしい。
「今日も元気に一日を始めるよ。だから、見守っててね。……泣かないよ。一杯笑うから。」
そして、部屋を飛びだして一気に階段を駈け下りた。
第一章がスタートしました!あえて書いてませんが、世希と鷸は、もういません。この回は序章から5年後の世界です。これから、ストーリーの展開が激しくなってきますが、ついてきてください。(えっ!?)それでゎ、また次の回の後書きにてお会いしましょう!