序章3〜君を想う気持ち〜
「それで、どうなったの?お父さんとお母さんは戦ったの?別れ際の約束は何だったの?」
キッチンのカウンターに座り、頬杖をついて話を聞く少女。髪の色は灰色で背中まで垂らし、アメジストの瞳を爛々と輝かしながら続きを急かす。
キッチンに立つ女性は、少女を見て微笑む。
「そうね、あの時私達は―…」
「……鷸っ!?私が分からないの!?…ねぇ………っあぁっ!!」
やっと再会できた…と、感動する暇はない。
仲間に計画を悟られた以上、世希を攻撃するフリをしなければならない。
それが、幸せになる条件ならば……
【G地点】(民家の上空、山のふもと付近)から、【E地点】(山の上空)まで、世希を追い詰めていく。二人の剣と剣がぶつかる音が響く。
「世希!!」
世希の仲間(那海)がサポートしようとやってきた。
―………マズい!!
「待ちな!アンタの相手は私だよ!!」
追いかけてきたのは萸螺。そこで戦闘が開始される。
「鷸!正直止めたい!!けど…自分で決めたことは、自分で責任取りな!!私は止めない!さっさと行きな!!」
相手の隙を見ながら、萸螺が言う。
「………ありがとう、すまない。」
一言呟いて、最後の一撃(軽い衝撃波)を世希に浴びせる。世希は悲鳴を上げながら、木々の間を堕ちていく。
「世希ぃぃっ!!」
遥か頭上で、誰かが叫んだのが聞こえた。自分の今の状況は、下へ真っ逆さま。ゆっくりと堕ちていく。
―……死ぬのかな?
「世希っっ!!」
今度はもっと近くで声が聞こえた。その声は、鷸の声にそっくりだった。
最期にこの声を聞くことができてよかった。
―……たとえこの声が幻聴だとしても、鷸のことを想いながら逝く事が……これほど幸福に思える瞬間は、絶対他にはない。
そっと、目を伏せた。
その後すぐに、誰かに抱き止められた。
信じられない事に、目を開けた先に鷸がいた。
「……し……ぎ……?」
「…っバカ!!何で防がないんだっっ!!あの程度なら……、お前、浄魔軍の一員だろ!?―…心配…させんなっ…。」
鷸は震える手で私を力一杯抱き締める。私の瞳は、涙で一杯になり、頬を伝っていく。
「鷸…ずっと、会いたかった…。」
気が付くと、空には星が出ていた。「世希、あの約束を覚えてるか?」
だいぶ落ち着いてきた世希に、本題をだす。覚えているだろうか……
「…覚えてるわ。」
「一年の間に、覚悟はできたか?」
世希は少し下を向いたが、すぐに顔を上げた。
「……あなたとなら、どんなことも乗り越えていける。」
紅い瞳と、蒼い瞳が交わる。
「「脱界しよう」」
「それから…、私達は人間に成り済まして、ここに住むことにしたのよ。」
キッチンに立っていた女性・世希は、ベランダに移動しながら言った。目的地に着くと、次の仕事・洗濯物の取り込みを始める。
「それで、架羅。あなたが産まれたのよ。」
長かった序章が、やっと完結です。ここで、やっと真の主人公・架羅ちゃんが登場しました!これから彼女を中心に、ストーリーを展開していきます!次話をお楽しみに☆★