第四章3〜最悪の知らせ〜
張り詰めた空気。
「……で、いつ殺るんだ?」
始めに沈黙を破ったのは、蛍麻だった。
「兄さん!?」
湊麻が顔色を変えて、蛍麻を見た。
「何で!?さっきは反論してたのに…兄さん!?」
「うるせぇ!」
蛍麻の肩を掴んで問う湊麻。その手を蛍麻が罵声と共に払った。
「蛍麻!湊麻!…喧嘩はやめて下さい!!」
「………。」
「いつか…近いうちに必ずそうなるんだ。―…今より執着してしまう前に、殺った方がアイツの為だし、何より俺らの為だろう?」
「………。」
少し間があって、傴尓が軽く溜息を吐いた。
「―…デザバランで。」
「デザバラン!?」
聞いた瞬間、湊麻が叫んだ。
「荒れ果てた地だから、人があまり居ない……つまり、被害を最小限に押さえられる…ってことか。」
デザバランは、架羅が今居るクスーラの隣街だ。
土地自体が荒れ果て、作物が育ちにくい環境なので、街というにはおかしい気もする。
「ちょっと待てよ、今アイツはクスーラに居るんだぜ?“早く殺せ”って言う割りに、被害を気にするんだな。」
蛍麻が冷静に尋ねる。
「ええ。討伐とはいえやはり、無関係な人を…人間を巻き込むことは避けたいはずです。」
深傴が蛍麻の問いに、真直ぐ答える。それに、湊麻が納得する。
「なるほどね。」
「私達ってのは、人間から見れば未知なる存在だから…。本当なら、私達に関わった人間は消さなければならない。もちろん、禁忌に関わった人物も…。」
傴尓がいつになく真剣に話した。
「もう―…これ以上犠牲者を出したくありません。そう願うのは、“あの方々”も同じですから。」
それに、深傴が続いて言う。
「……そうだな…。」
溜息混じりに、蛍麻が同意する。
「準備もあるだろうし、“あの方々”との合流もあるし…。とりあえず、私と深傴であの娘を監視するわ。―…デザバランに入り次第、連絡する…いい?」
傴尓が話をまとめる。
三人は傴尓を見つめ、静かに頷いた。
―…ビー、ビー、ビー
突然、傴尓の無線が鳴り始めた。
「こちら傴尓。何かあったの?」
『―……です。……が……―に……中………て……い…!!』
電波が悪いせいか、はっきりとは聞こえない。
「何!?よく聞こえない!」
傴尓が聞き返す。しばらくして、電波の調子が良くなった。
『…急です―!!先程、処刑確…中の禁忌、祈抽が脱獄し…した!クスーラへ向かった様子です!』
ノイズ音と共に無線から漏れた音は、傴尓と深傴の顔色を蒼白にさせ、驚愕の声を二人にあげさせた。
「「何ですって!?」」
『至急、討伐を要請します!』
最後に一言残して、無線は途切れた。
「不味い事になった…」
傴尓が舌打ちをする。
「一体何だっていうんだ!?第一、祈抽って…?」
蛍麻が詰め寄る。
「祈抽さんは、禁忌の第一子…。そして、架羅さんのお兄さんでもあります。」
深傴が静かに言った。
「「!?」」
終わりの時間が近い。
なのに。
運命は、悪戯を繰り返す。
最悪の知らせは、
最悪の結末の始まり。
久々投稿です。ぶっちゃけ、この続きはまだ未定です。……ってか、新キャラが出ちゃったよ!?初期設定が大幅に変わっちゃいました。かなりの駄文ですが、もう少しで終わりです。我慢して読んで下さい!(泣。