第三章4〜幸せの光〜
「…とりあえず、凉さんを置いてきたけど…。」
部屋に戻り、ベッドに腰掛ける。
「まぁ、鏈さんが来るかもしれないから…仕方ないよ。」
「うん……。」
凉さんは“大丈夫”と笑っていた。
今まで闇の中に閉じ込められていたが、明日やっと……光の中へ戻れる。きっと、希望で一杯だろう。
「で、明日はどうするの?」
湊麻が尋ねた。
「えっとねぇ……、…うーん……。」
「…まさか…架羅…。」
「あ、あは☆考えてないの。」
苦笑いを見せると、湊麻はやっぱりと言わんばかりに肩を落とした。
「だったら何で…。」
「やっぱり、こんなのはダメだよ。本当に好きな人と一緒にならなきゃ…。」
どうしても、悲しい終わりは見たくない……昔に聞いた、親の終焉が頭に浮かんだ。
簡単な事しか出来ないだろうけど、後悔をさせない自信はある。
「絶対に、二人を幸せにさせよう?」
「…わかった。明日、頑張ろうね。」
翌日、遂に式の日がやってきた。
「…じゃぁ、支度があるから……先に行くね。」
「はい、気を付けて…。」
薄らと微笑んで、无稀は鏈と共に式場へと向かった。
「やっぱり、元気無いね。」
後ろ姿を眺めながら、湊麻が隣で呟いた。
「…うん。」
まだ何も知らない无稀さんは、少し肩を落として歩いて行く。見てる方も悲しい。
そんな私の肩を叩いて、優しく湊麻は微笑んで言った。
「さぁ、一肌脱ぎますか?」
つられて、頬が緩む。
「よし!頑張るぞ!!」
ガッツポーズを決め、玄関を後にした。
「おはようございます、凉さん。」
暗い牢の中凉は、式場がある方向の壁を眺めていた。
「あぁ、架羅ちゃんに湊麻くん。」
堅い表情を少し和らげるが、緊張の雰囲気が漂っている。
「さ、これに着替えて下さい。あまり時間が無いんで……。」
湊麻が白いスーツを差し出す。
「…わかった。」
それを受け取る凉は、どことなくぎこちなかった。
「不安、ですか?」
それに気付いた湊麻が尋ねると、凉の口元が堅くなった。
「大丈夫!无稀さんも、凉さんを待ってるから。」
そう元気づけると、少しだけ凉の表情に安堵の色が戻った。
場所は打って変わって、街の式場。
「夫、鏈は―――……」
神父がお馴染みの台詞を口にして、
「―…い、誓います。」
花婿が堂々と誓う。
「妻、无稀は――…」
次に神父は花嫁に。
「誓いますか?」
「―…私は…」
「ちょぉっと待ったぁ!!」
威勢の良い声と共に、教会の扉が勢い良く開け放たれた。
「架羅ちゃん、湊麻くん!?」
突然の乱入者に、式場は騒めく。
「无紀さん、隣の相手…間違えてますよね?」
「…え?」
湊麻の問いに、花嫁は表情を変える。
「まさか、お前ら!?」
花婿の表情が引きつった。
「无稀さんの相手は、この人ですよね?」
後ろに隠していた凉を、さっと前に出す。
「无稀!」
「……凉!?」
それから式がやり直されたのは、言うまでもない。
「くそっ!もう少しだったのに……!!」
華やかな式が、表で行なわれている教会。
その裏側で、鏈は右の拳をレンガ造りの紅い壁に叩きつけ、嘆いていた。
「「あははははっっ!!」」
突然、二人の女性が目の前に現れた。
「!?誰だ!?」
黒髪の女に、金髪の女。
二人とも同じようなオッドアイだ。
「何てことないわよ。」
黒髪の女が言った。
「…何?」
眉間に皺を寄せ、鏈が聞き返す。
「そんなに落ち込むことはないですよ。」
金髪の女が笑った。
「お前ら…、何が言いたい?」
「貴方が可哀想だから…、」
「…助言、してあげるわ。」
「「…教会ごと、何もかも壊せばいい…」」
二人の女性は、黒い笑みを浮かべて言った。
ずいぶん遅い更新となりました、夕凪です。今回で、第三章湊麻編が終了です。どうでしたか?(苦笑。)話の流れ的には、これから歯車が狂ってきます。なるべく早く完結させたいなぁ…。ってな訳で、頑張ります☆★