はちわんこ
新キャラ登場です。
Q 中型犬で6mサイズとか、大型犬ってどうなるの?
A ご覧のありさまだよ!
【sideセン】
お昼ご飯は、ゴールデンレトリーバーのユキが、突撃ぼたんの焼き肉を持ってきてくれた。
突撃ぼたんは、死体を見るに体高4m程度で、うりぼうがイノシシにならずそのまま巨大化したような極めて愛くるしい姿をしていた。肉は豚肉に近く、脂の乗った濃厚な味である。センは、「かわいいけど美味しいよぅ・・・」とか、「かわいい!でも食べちゃう!ビクンビクンッ!」とかやりつつも美味しく食べたそうだ。
その肉を持ってきたゴールデンレトリバーのユキは、体高が9m以上と極めて巨大な姿をしており、決して小さくはない突撃ぼたんを簡単に口にくわえ、洞窟にやってきた。
最初センはその巨大さに怯えた。今まで見たハイパーわんこも大きかったが、ユキはそれに比べて一回り以上も大きかったのだ。もはや、間違えて踏まれただけで死ぬレベルである。怖がるなと言う方が無理だ。
しかし、センのその恐怖は長続きしなかった。原因は、ユキの仕草である。
自分の体格でむやみに動くと危険だと自覚しているからだろうか、一つ一つの動作が非常にゆっくりしており慈愛に
満ちているのだ。というか、デフォルトで子犬たちを体に引っ付けており、もはや体が遊び場になっている。そしてユキ本人は、遊び場になってる事を不服に思うどころか、その子犬たちを決して踏まないよう、振り落とさないよう、怪我をさせないよう、気を遣っているのだ。
歩く時も、振動で子犬たちが落ちないよう気を遣いながら、できるだけゆっくりと。
体を伏せる時も、体の下に子犬が潜り込んでないかちゃんと確認をして、そのあとゆっくりと座る。
センをみつめる瞳も、我が子を見つめるようにやわらかい。
しかも、怖がっているセンをそれ以上怖がらせないよう、不必要にセンに近づかず、少し離れた場所に伏せるのだ。
巨大さに慣れてくると、センはもはや、ユキを怖がっているのが申し訳なくなってきた。
センがユキに慣れたのを感じとったのだろう、ゴンゾウがセンに近づいていき、前足でセンの頭を軽く叩いた。そしてゴンゾウは、突然叩かれたため驚いて振り向いたセンに、ユキさんの方を鼻で指し示しながら目で語る。怖くなくなったなら、やることがあるだろうが、と。
センは、ユキさんを見た。
ユキは、穏やかに、センを見ている。
センは、うん、と一人気合いを入れると立ち上がり、伏せの状態とはいえ5m近くあるユキさんの巨体に近づいていき、その大きな前足をさすりながらユキさんの目を見る。ユキの生暖かい息が体に当たった。
「えと、ユキさん。・・・ああ、あなたの事をユキさんと呼ばしてください。はじめまして。最近ここに来た人間族の、水間センです。 ・・・その、ユキさん。初対面でいきなり怖がるとか、失礼な事をして申し訳ありませんでした! もう大丈夫です! 怖くないです!」
センはそう言うと、頭を下げる。非は自分にあるのだ。
顔を起こすと、シロがユキさんの体をよじ登っているのが見えた。子犬であるシロにとって、やはりユキさんは危険でも何でもなく、遊び場的存在なのだろう。センの中に、改めて申し訳ない気持ちが沸く。
センは、続けて言う。巨体のため少し離れているユキの耳に届くよう、声は大きめだ。
「あと、突撃ぼたんの肉、ありがとうございました! お返しと言っては何ですが、俺も瓢箪を作っています! 立派な物を作ってみせるので、是非楽しみに待っていてください!」
それを聞くとユキは、わうっ、と一鳴きし、その巨大な舌でセンの体を下から上までひと舐めした。ザラザラした生暖かい感触が襲いかかる。舌に押され、センは尻餅をついた。
センは突然の感触に驚き、しかも一撃で体の前面全てがベットベトになって、 「うひゃぁ」 と動転したのだが、不思議と恐怖感はなかった。
そしてユキは、そんなセンに、 わんっ! と一鳴きすると、体を登頂中のシロを落とさないようゆっくりと立ち上がり、のっしのっしと洞窟から出て行った。
センは、お肉ありがとー! と言いながら、その後ろ姿に向かって手を振った。凄い生物もいたものだ。・・・うん、今度乗せてもらおう。
昼食後、洞窟内である。
センはモコに正対し、瓢箪の口―――穴を空けるポイント―――を指さしながらハキハキと口を開いた。モコも、おしごとの気配を察しているのだろう、 わたしはいつでもいけますっ!なんでもできますっ! と、いつも以上にきゅーきゅー気合いが入っている。
「いいか、モコ。ここだ。ここに穴を空けたいんだ。」
モコは、 きゅっ! と鳴くとトテトテと瓢箪に近寄り、指さされた場所、瓢箪の口部分に顔を寄せる。そして、真剣な顔で自分のツメで指された場所をカリカリと擦りつけた。目印を付けているのだろう。可愛いが、仕事中のため頭をなでれないのが辛い。
そう、センは、モコのツメで瓢箪に穴を空けてもらう事にしたのだ。あの後、モコとシロの足を調べ、小さな穴を空けれるくらいツメが細いという確認も取れている。いざ、穴開け作業だ。
「よし、場所は判ったな? では、これより瓢箪に穴を空ける作業を始める! 手順は、以下の通りである! 私が手で瓢箪を抑える! そしてモコがツメで穴を空ける! 以上だっ!」
真面目なモコに当てられたのか、センは、教官気取りでノリノリである。モコも、 きゅっ!わかりましたっ! と良い返事を返し、ピシィッ!っと姿勢を正したりして、非常に楽しそうだ。
そしてセンは、瓢箪を地面に置きしっかりと手で抑えると、モコに向かって威勢良く指令を出す。
「よしいくぞ! モコ軍曹! ここだ!ここに向かって穴を空けるんだ! やれっ!」
モコは、 きゅっ! と良い返事をすると、体勢を低くし、構えた。
数秒、静寂が訪れる。集中しているのだろう。かわいい。撫でたい。
そして、キューーーっ! というかわいい気勢と共に、モコが前足を振るった。剣道で言う、「突き」である。
その足は瓢箪に向かって苛烈な勢いを持って伸ばされ、ツメは空間を引き裂いた。
そして刹那の間すら置かずツメは瓢箪に届き・・・・・・・
・・・・・・・センが支えきれずに瓢箪が吹き飛んだ。
そして弾かれた瓢箪は、ズガガガガッガガッガガガッ という瓢箪にあるまじき効果音を伴いながら、洞窟内を弾丸もかくやという速度で弾き回った。重くはないが異常なまでに硬い物質が超高速で飛び回るのだ。もはや危険というレベルではない。
センは、あまりと言えばあまりの事態に一瞬硬直したものの、即座にモコを胸にかき抱き身を伏せる。そして、せめてモコにだけは被害が来ませんようにと祈りながら、瓢箪が当たらない事を願う。モコは突然の大きな音に驚いて硬直しているようだ。センの体の下でぷるぷるしている。絶対に守らねば。
そして瓢箪は、一秒近く洞窟内を飛び回った後、最も大きな標的であるゴンゾウさんのお腹にドスンッという重い音と共にめり込み、静止した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
センも、ゴンゾウさんも、モコも、あまりに驚きすぎたため何も言えない。コトンッ、コロコロコロ・・・という瓢箪が転がる音だけが洞窟に響き渡る。
数秒間の静寂の後、ゴンゾウさんがすっくと立ち上がった。そして、直撃を喰らったお腹部分を後ろ足でカリカリ撫で、転がる瓢箪を一目見て、うつ伏せでセンを見て、そして・・・・・・・・・・・・しかし何事もなかったかのようにもう一度伏せると、煙管をふかしながら目をつぶった。ぷはー、と煙が円を作る。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
数秒の後、正気に戻ったとは言い難いが、センはおそるおそる、ゴンゾウさんに声をかける。
「あ、あの・・・・。だいじょうぶ・・・・・ですか?」
返事は、 バウッ といういつもの重低音だった。こちらを見もしないと言う事は、まったく問題ないのだろう。あれだけの速度で瓢箪がぶつかったにも関わらず、どうやらゴンゾウさんは怪我一つ無いようだ。つえー、ゴンゾウさんマジつえー。
低く、しかしいつも通りなゴンゾウさんの返事にそれが理解できたのか、センは、一気に気が抜けてへたり込む。
(よ・・・・・・よかったぁ~・・・。)
センの乾いた笑いが洞窟内に響き渡った。
【各キャラの武力は以下の通りです】
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瓢箪ハンパナカッター
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