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ごわんこ

今日の更新はここまで。また来週?


前話に出てきましたが、戦争でなく大喧嘩です。もちろん人間側から見ると戦争ですが、そんな物騒な物、わんこすとーりーには必要ありません。

【sideセン】


 夜である。野宿である。

 ジョンとカルラの柴犬もふもふソファーと、シロとモコのぬくぬく掛け布団に囲まれ、センは絶賛野宿中であった。天国である。


 あの夕食の大騒ぎは全員の満腹と共に無事終了し、巨大ウサギは翌朝用の焼き肉を残して全て平らげられた。そう、骨も脳も内蔵もである。

 食後、さあデザートだ! と巨大ウサギの骨をバリバリかじるジョンとカルラ。その隣でリスのようにカリカリ骨を囓っているシロとモコ。その、明らかに硬すぎて食えない物を平然と食べる姿を見ながらセンは物思う。彼らはやはり、食物連鎖の上位に食い込む存在なのだ。アゴ力が違う。あごぢからが。

 ちなみに、骨に手を付けないセンに気付いたのか、モコが腕骨をくわえてトテトテ持ってきてくれた。

 はい、もってきたよー。これおいしいんだよ!いっしょにたべよ? そう訴えかけてくるつぶらな瞳に、勝てる者など存在するだろうかいやいない。センは腕骨をモコから受け取ると、モコを膝の上に乗せ、生臭さに耐えながらいっしょに囓ったという。

 その後、すでに夕方だったので、日が暮れるまでシロとモコの子守をずっとやり、就寝の時間になり、柴犬一家に囲まれながら横になり、今に至る。生物独特のあったかい体温に囲まれているためか、不安もない。しかし考える時間が出来たからか、改めて思うのだ。どうしてこうなった。



 センは、少し息を吐く。そして思考を巡らす。そうだ、とりあえず、今後の方針を決めよう。


 この世界で生き、元の世界に戻る手段を探す。これを基本方針にして行動する事に否はない。

 ないが、正直に言うと、センは元の世界に執着はないのだ。親はセンが大学に入ってすぐ、交通事故で亡くなった。その保険金で大学を卒業するまでは金銭的に不自由しなかったが、家族は誰もいない。天涯孤独の身なのだ。

 元の世界に帰る理由も、「友人に生存報告をしたい」「この世界よりは元の世界の方が便利に生きれそう」、この程度である。

 だから、急いで元の世界に戻る気はなかった。それよりは、せっかく来たこの世界を見て回ろうと思う。元の世界と何もかもが違っているし、意外と面白そうだ。


 センは、懐でスヤスヤと寝ているモコとシロを見やる。次に、ソファー代わりになってくれているカルラとジョンを眺める。何故ここまで懐かれたのかサッパリ判らないが、親切にしてくれたのだ。少しは恩を返したい。

 とりあえずジョンに頼んで人間の村を探す。そして、そこで生活の基盤を作りながらジョン一家への恩返しと、元の世界に戻る方法を探す。こんなものだろう。


 (とりあえずは、明日に疲れを残さないよう、寝るとしますか・・・。)


 柴犬布団はとても快適だったので、センはすぐに夢の中へ旅立っていった。










 (こ、これは・・・予想外だった・・・。)

 

 大量の小型中型大型巨大わんこに囲まれながら、センは呆然と、村らしきものを眺める。

 あれから約半日が経過していた。朝起きたセン一行は、昨日残しておいたウサギ焼き肉を朝食として食べ、ジョンの案内で移動を開始したのだ。

 途中、現代人であるセンが足にできた豆を潰してしまい歩けなくなる事もあったが、カルラにパクッとくわえられ(ビックリした。正直死んだかと思った。)、ジョンの背中にひょいっ、と乗せられたため、まったく問題なく移動することができ、その日の昼過ぎに、この村らしき物にたどり着いたのだ。

 そして、話を聞きつけたのだろう、大量に沸きに沸いた、小は豆柴サイズ~大は全長7m越えまでの犬達に囲まれて現在に至る、というわけだ。

 村といっても家や小屋があるわけでなく、岩壁に天然の洞窟が数十個空いているものだ。おそらくはジョンのような強力な犬が、岩を掘って作った巣なのだろう。少なくとも、自然に出来た物では無さそうだ。

 また、この辺りは、オーストラリアの某巨大一枚岩が森の中に複数個点在しているような地形で、近くに川も流れているようだ。もしかしなくても、ここはこの犬たちの集落だろう。しかし、なんというか・・・。


 (人間がwwwwww いねえwwwwwwwwwww)


 そう、柴犬からプードル・ハスキー・ゴールデンレトリバーと、犬は相当の種類が居るのだが、その中に人間が一人も居ないのだ。全てわんこである。あ、コラそこ、じゃれつくな。

 

 (人間の集落じゃなくて、犬の集落に来ちゃった・・・。)


 当然ながら、犬の言葉は理解できない。あ、こら巨大ゴールデンレトリバー、俺をくわえて運ぶな。どうするつもりだ。 いや、高い高い。やめてやめて降ろしてちょっと怖いっ・・・

 ・・・あ、普通に降ろしてくれるのね。 え? ごめんって? ああ、うんわかった。悪気はなかったんだよね良い子良い子。 っていうか、もしかしたら言葉理解できる? あ、うん、そうなの。できるの。そうかー。 ・・・じゃあ、少ししたら、村の代表者に挨拶したいな。 あ、え? 偉い人ジョンなの? あー、そう。 ふーん。 あ、コラちび犬集団、体をのぼるな、ぶら下がるなーっ わんわんきゃんきゃんばうばうわふわふ・・・。




 そんなこんなで、夕方である。えらい目にあった。

 村の住人(住犬?)も各家に帰って、センは村長らしいであるジョンの家におじゃましていた。

 座って待っていると、カルラが、お茶らしき物を持ってきた(皿を口で押してきた)。ただし、そこは犬。コップでなく石の平皿である。飲みにくい事限りなし。

 どうやって作ったのかと聞くと、乾燥したお茶っ葉を石皿の水に入れ、口から火を噴いて加熱したらしい。がおーっと、目の前で実演してくれたので間違いない。これなら手が無くても良いとか何とか。なるほどである。

 ちなみに、カルラが火を噴いたのを真似したのか、シロが隣で きゅいー! とライターサイズの火を出していた。ミニマムでよろしい。とりあえず頭を撫でておく。


 ジョンと身振り手振りで会話をするに、どうやらここに住んでも良いようだ。

 ここは犬神族の集落の一つで、近くに同じような集落がいくつかあるらしい。だが、近くに人間の集落は無いようで、山を数個挟んだ場所にあるのが最も近い村だそうだ。人間の足だと数日はかかるし危険らしい。

 とりあえず何か仕事ができないかと聞くと、どうやら手を使った作業、特にヒモで縛るとか組み立てるとかそういった細かい作業を手伝ってほしい、あと何か便利な物を思いついたら作って欲しい、と言われた。報酬は、とりあえずは衣食住。十分である。

 なお、ここまでは柴犬のボディーランゲージを交えた会話である。YesNoはともかく、一生懸命伝えようとピョンピョンころころ奮闘する柴犬一家が、ひじょうにキュートであったのは言うまでもない。ごちそうさまである。


 (わんこぼでぃーでは難しい事を補助して欲しい、かぁ・・・)

 一通り話が終わり、仰向けに寝転がったモコのお腹をくすぐりながら考える。ジョンが逆側で巨体を仰向けにしてこっちを見ているが、これは撫でろということだろうか。いや撫でないけどさ。村長だろあんた。


 とりあえず、求められた事を行うのは当然として、実利もかねて、犬ぼでぃーでも可能な保存食作成を提案してみようかな、と考える。今のところ焼いて保存しているようだが、薫製とか漬け物とか、長期保存を目指したい。

 あと、料理とか作ったりするのも良さそうだ。食材や調味料確保のために、犬でも出来る農業、も考えてみよう。ひとまずは、こんな感じかな。うん、面白くなりそうだ。



 そんなこんなで、日は暮れていく。

 いつまで経っても撫でてくれない事にちょっとふてくされたジョンの遠吠えが、村に響き渡った。


(8/1 表現を修正。)


以降、犬と主人公で言葉が通じないため、今回のような主人公の一人掛け合いが増えると思います。もし読みにくいようであれば、違う方法も考えます。(考えるだけで変えないかもしれません)


犬文化コミュニケーション。この辺りが本作のメインテーマです。

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