苺と北風
これまでのあらすじ
2023年3月某日
栃木県足利市の、ある竹藪で一人の男が逮捕された。
男はタケノコを取ろうとして足を滑らせ気絶したのだが、
その時、竹が光って見えたと警察に言ったが
取り合えってもらえず無罪放免。
1週間後、足利小学校に小6の女の子が転校してきた。
名前は、調宮神楽耶
謎の転校生の来た翌日、熊が人を襲った。
しかしけが人は消えていた。
そのけが人があの男なのか?
いまだ不明である。
そんな中、黒繁香、調宮神楽耶、渡部千晶の3人が
土曜日に遊ぼうという事になった。
場所は香の親の家業である、苺農園だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
軽トラックが苺農園に戻ってきた。
香の父が肥料など載せて戻ってきたのである。
「お、香たちはもう来てるな」
ふと後ろから何やら目線を感じた。
振り返ると、足を引きづった男が遠めからハウスを見ていた。
「お客さんかな?なんか怪しいぞ」
ハウスに入ると、妻が声をかける。
「香たち、いるよ~。ほらもう奥まで行っちゃったけど。挨拶してきなよ」
「おう!」
父が駆け寄り、挨拶をした。
「いあぁ、どうも。香の父です。初めまして。今日は沢山、いちご食べてってね!」
「初めまして!調宮神楽耶と申します。今日はご招待ありがとうございます!ここの苺はとっても美味しいです!こんなに甘い苺は初めてです!」
「ほんと、ほっぺが落ちそうです!あ、渡部千晶です!」
「そうでしょう!そうでしょう!この苺の甘さの秘密はね・・・・」
「パパ!もうそこまで!あっち行ってていいよ!」
香が制した。
「わかった。わかった!もう思春期は難しいな~」
「怒るよ!パパ!」
「退散、退散と」
「もう、恥ずかしい」怒る香に、
千晶がふともらした。
「いいなぁ、こんなに苺沢山毎日食べられて」
「そんな毎日だとあきるわよ!」と香。
神楽耶がぼそっと言う。
「お父さんとお母さんと3人でこの苺ハウス守ってるのよね。偉いね。私は父がいないので、うらやましい」
「え?どうなの。ごめん、かぐや」
「いいの、慣れてるから。お父さんのことはほとんど記憶にないから」
少ししんみりしてしまう3人。
「よし、気分を変えて、これからサッカー見に行こう!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
潮田英樹はこの日、渡良瀬川の河川敷でサッカーをやってるのを香は知っていた。昨日、今日は大事な試合だと聞いていた。
行く気はなかったが、いちごを食べすぎて、体を動かさないとと思った。
「遠い?ここから?」
千晶が心配そうに聞いた。
「ううん、近いよ。歩いて3分」
「え~!そんに近いの?」
千晶も実は昨年埼玉から引っ越してきた子で、家も学校も両毛線の北側だったので、南側は今回初めて来たのだった。
「じゃぁ、行こう!かぐや、ちあき!もう苺のお腹がパンパンだよ!」
「そうね、少し動かさないとね!」
神楽耶も千晶もそう言って、ハウスを後にした。
「じゃぁ、パパ!ママ!ちょっと川に行ってくる!」
「お~!気をつけろよ!暗くなる前に帰ってくるんだぞ!・
父は大きく手を振った後、心配そうに妻の顔を見た。
「おい、なんかさ、ハウスの外に、目つきの悪い男がいたんだけど・・」
「そうなの?香に携帯渡しておこうかしら。念のため。まだその辺にいるわわね。あなた、ちょっと行ってくる!」
そういって香の母は3人を追いかけて行った。
その様子を遠くから見ていた例のあの男は、その後ろ姿を追っていた。
「河川敷に行くのだな。あの娘も。」
なにやら不敵な顔をして男は踵を返し、河川敷に向かった。
河川敷には、もう3人が来ていた。
広大な河川敷にはやや弱い北風が吹いていた。
「寒いね、ちょっと」
千晶が寒そうに体を縮める。
「赤城おろしだな~。2年前の山火事もこの風にあおられて大火事になったんだ」
神楽耶も千晶も2年前に山火事の時、まだ足利市にいなかった。
「農作物にも影響を与えるから、うちの親はいつも心配してる。でも今日の北風は冷たいけど弱いよ。あ、あそこにいた!」
香が指さす方向には、大勢のサッカー少年がプレイしていた。
その中に潮田英樹がいた。
続く




