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いちご狩り

これまでのあらすじ


2023年3月某日

栃木県足利市の、ある竹藪で一人の男が逮捕された。

男はタケノコを取ろうとして足を滑らせ気絶したのだが、

その時、竹が光って見えたと警察に言ったが

取り合えってもらえず無罪放免。

1週間後、足利小学校に小6の女の子が転校してきた。

名前は、調宮神楽耶つきのみやかぐや

謎の転校生の来た翌日、熊が人を襲った。

しかしけが人は消えていた。

そのけが人があの男なのか?

いまだ不明である。


そんな中、黒繁香、調宮神楽耶、渡部千晶の3人が

土曜日に遊ぼうという事になった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


4月14日(金)夕刻


神楽耶の家


「明日、お友達と遊びにゆくんですね。私は付き添わない方がよろしいでしょうか?」


「母上、さすがに小6の子供の遊びに親が付いてくるのはどうかと。私は私なりに注意するから、母上はこの家の防犯脳能力をあげておいてくれまいか。」


「承知しました。多少のお金と、念のため、防犯用にGPS機能を持った端末を、熊よけの鈴に入れておきます。」


「そうね。念のため。今は大ちゃんがいるから、今夜も大丈夫ね。大ちゃん!こっちに来て!」


部屋の片隅に寝転んでいたボーダーコリーの大ちゃんこと大福が神楽耶のもとに駆け寄り、顔をなめ始めた。


「だ、大ちゃん!よしよし!お前もつれていきたいけど、この家を守ってね!」


ーーーーーーーーーーーーーー


4月15日(土)


朝から快晴


「ではいってらっしゃいませ」

神楽耶の母は大福と一緒に玄関で神楽耶を見送った。


「やっぱり変だ。親子に見えねぇ。だいたい、あの竹やぶを行き来するなんておかしいぜ。道が全くないのに、あの二人はなんなく通っている!」


この光景を遠くで見ていたのは、あの例の男だった。


神楽耶の母は男の存在には気が付いていた。

しかし、あえて気が付かないふりをして家に入った。

犬は玄関わきのポールにつないだ。


「ちぇ、この家にはしばらく近ずけねいや」


男はまだ傷から癒えてないのか、足を引きずりながら、山の中へ消えていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おはよう!かぐや!」

「おはよう、かおり!」


集合場所はJR両毛線のあしかがフラワーパーク駅。

神楽耶を待っていたのは香だった。


まだ千晶の姿はなかった。


「今日はありがとう。私、実はいちご狩り初めてなんだ。」

「そうなの~?うちの苺は絶品だよ!練乳なくても100個はいける!」

「100個!それは食べすぎだよ~!」


そうこうしていると、千晶が現れた。


「ごめ~ん、みんな!ちょっと寝坊した~!」


「これでみんな揃ったわね!じゃぁ、行こう!

苺ハウスはここから歩いて10分くらいだから」


香が言うように、ハウスはここから歩いて10分ほどだという。


線路沿いの道をずっと歩いてゆくと、それらしき建物が見えてきた。


「あれかな!?」

千晶が手を挙げて指を刺す。


「そうよ。お父ちゃんとお母ちゃんもいるから。紹介するね!」


3人がハウスに到着すると、もうすでに家族連れやカップル、はたまた女性グループなどで賑わっていた。


「お母ちゃん、来たよ。新しいお友達の子も連れてきた!」


ハウスを切り盛りしている黒繁香の母、小百合がお辞儀をした。


「今日は遠い所、ありがとうね。千晶ちゃん、おはよう。えっと神楽耶ちゃんだっけ。とても頭がいいですってね。うちの香にも勉強教えてくださいね!」


「ちょっと~。変なこと言わないで!」

顔を赤くして起こる香。


「ま、いいじゃない。本当のことなんだから!」


「あれ?お父ちゃんは?」


「あ、今ね、肥料を取りにJAぇとこ行ってる」


と言いながら、発泡スチロールで出来た容器を3人に渡した。


「もし口の中酸っぱくなってきたら、練乳かけてね。今日は全部サービス!」


「お母ちゃん❕うちの苺は甘いの!練乳いらないよ!」


「そうだった、そうだった。うちの〈とちおとめ〉は絶品だから!そのまま味わって!」


「はーい!」


3人はさっそく、赤い苺をもぎりため、中へ入っていった。


ハウスの中は外より暑かった。


しかし、4月になると高温になりすぎるので、風が通るように2か所、窓が開けてあり、風が通るようになっていた。


神楽耶はいちご狩りは初めてだった。


神楽耶は香に言われた通りに、下から包むように苺を持ち、ひねった。


ぽろりと苺はもげ、へたをとる。


そして、へたの方から口に入れる。


先から食べたくなるのだが、そうすると食べているうちにへた側になる。すると口の中で苺の味がうすまるので、食べるときは必ずへた側から。


「う~ん!おいしい!」


神楽耶も千晶も笑顔で言った。


「でしょう!うちの苺はとびっきり上手いのよ!」


香はよほど自慢したいのだろ。なにしろ小さい時からこのハウスの仕事をしている。どうしたらいい苺ができるか熟知してるのだ。


「ねぇ、さっきから蜂が沢山いるけど・・。」


神楽耶が聞いた。


「あ、これはね。受粉してくれるの。ミツバチさんがね。でも最近は大変なんだ」


「え?何が?」


千晶が聞いてくる。


「うん、ミツバチが世界的にいなくなってるの。だから秋からの受粉作業にミツバチが少ないと大変なの。冬は特にね」


「そうなんだ」


神楽耶は実は知っていた。


ミツバチが少なくなった理由を。


温暖化、農薬、ダニなど、複合的な理由によってミツバチだけでなく環境が急激に変化しているせいで、様々な動植物が影響を受けているのである。


「ミツバチのおかげで、こんなに大きくて甘い苺食べれるんだから、ミツバチさんに感謝だね!」


「そうだね!」


神楽耶たちはそう言うと、次々に苺をもぎ取り、口に入れた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ハウスの外に、あの例の男がいた。


ついてきたのだ。


人が多く、そこにあの男がいても誰も怪しまなかった。


ただ一人を除いて。


神楽耶は気が付いていた。


続く

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